「XLN AUDIO Addictive Drums 2」製品レビュー:4バンドEQなどを新たに搭載し音作りの幅が広がったドラム音源

XLN AUDIOAddictive Drums 2
XLN AUDIO Addictive Drumsと言えばドラム音源ソフトとして既に幅広い層から支持を集めている印象がありますが、このたび“Addictive Drums 2”として生まれ変わり、さらに使いやすくパワー・アップして帰ってきました。そこで今回は新機能を中心に、使用感も絡めてレビューしていきたいと思います!

ドラム・キットやリズム・パターンの プリセット数を選んで購入可能


Addictive Drums 2はMac/Windows対応のVST/Audio Units/AAXプラグインおよびスタンドアローンで動作するドラム音源ソフト。“ADpak”と呼ばれるドラム・キット、“MIDIpak”と呼ばれるリズム・パターン集、“Kit piece”と呼ばれる単体キット集の中から、ユーザーが自分の音楽スタイルに合わせて選び、インストールする方式が採られています。お得なバンドルも用意されており、最上位のXXL Studio BundleはADpak、MIDIpak、Kit pieceを6つずつ選択可能。ほかに2つずつ選べるArtist Bundle(オープン・プライス:市場予想価格18,000円前後)、3つずつ選べるProducer Bundle(24,000円前後)も用意され、使いたい音色/パターンが最初から明確にある人は、購入しやすいバンドルから始められるのがポイント高いです。もちろん後から音源を買い足して拡張していけます。 ADpakの内容は、ポップ/ロック向けを中心にジャズ、ファンク、ビンテージ系、ラテン・パーカッションなどかなりの数がありますが、個人的なお薦めは“Reel Machines”。これはROLAND TR-808/TR-909をはじめ、LINNやOBERHEIMなどのビンテージ・リズム・マシンのサウンドを集めたもので、音色は実機からアナログ・テープを用いて録音されており、かなり良い雰囲気で鳴ります。ダンス・ミュージックを作る人は、取りあえず必携のADpakではないでしょうか。ラインナップ全体に対する個人的な印象としては、実用的かつ、“いかに本物のドラムに近づけるか”に注力されているように感じました。その点においては非の打ち所がないレベルだと思います。

強化されたエフェクトに加え グルーブの調整も容易


Addictive Drumsが人気を博した理由としては、サウンド・クオリティの割に動作が軽快であることと、シンプルで直感的な操作性が挙げられると思います。“2”になったことで、好評だった“音質と軽さ”をキープしつつ、さらに細部まで単体で音を作り込めるようになりました。では操作法や新しく加わった機能を紹介していきます。 Addictive Drums 2はGallery/Explore/KIT/EDIT/FX/BEATSという6つの画面で構成されています。まずGallery画面はインストールされたADpakの閲覧ページ。Exploreでは呼び出したプリセットによるデモ演奏を聴けます。まだインストールしていない音源のサンプルも試聴できるので、今後音源の拡張を考えている人は参考になりそうです。ドラム・セットのグラフィックが大きく表示され、デモを聴きながらイメージに近い音になりそうか、5つのノブでざっくりとミックスしながら確認できます。 そしてAddictive Drums 2の中心となるKIT画面ですが、今回よりスロットが18個になりました。ここに任意の音色をアサインし自由にドラム・キットを作れます。どこに何がアサインされているかが奇麗なグラフィックで表示され、視認性も良好です。ここでまずアイディアのたたき台として、現在呼び出しているプリセットのキットを一音ずつ自分好みの音色に差し替えていくとよいでしょう。名前から直接呼び出すこともできますし、スロット左側のカーソルで順に送っていくことも可能。演奏を聴きながら差し替えていくと、偶然良い感じにハマる音色に出くわすこともありそうです。もちろん作り上げたお気に入りのキットは保存しておけば他のプロジェクトでもすぐ呼び出せます。また新採用の“Linkモード”を使えば、キック/スネアのスロットと任意のスロットをリンクさせ、同じタイミングで発音するよう指定できます。キックに合わせてTR-808的なサブキックを鳴らしたり、スネアに合わせてクラップ/タンバリンを鳴らすような設定も、チェイン・マークをリンク先のスロットにドラッグするだけと簡単です。 そして“2”になって最も進化した部分であろうEDIT画面(メイン画面)では、細かく音を作り込めます。音色のトーンやピッチ、ボリュームの調整が自由自在で、さらに新採用の4バンドEQ、コンプ、ノイズやディストーション、テープ・シミュレーターなどのエフェクトが用意されており、これらをスロットにアサインした音色ごとに設定可能。文字にすると複雑そうですが、GUIの明解さも相まって、とても使いやすいです。 FX画面では各音色からセンドで送れる新エフェクト=DELERBが設定できます(画面①)。
▲画面① FX画面。DELERBは上下に2基搭載されており、個別に設定が可能。クロス・フェーダーの要領で左のディレイと右のリバーブをスライダーでミックスする。下のミキサーで各センドのオン/オフや送り量も一目りょう然 ▲画面① FX画面。DELERBは上下に2基搭載されており、個別に設定が可能。クロス・フェーダーの要領で左のディレイと右のリバーブをスライダーでミックスする。下のミキサーで各センドのオン/オフや送り量も一目りょう然
これは名前から想像できる通りディレイとリバーブを組み合わせたエフェクトで、波形の下のスライダーでミックス具合を調節します。スライダーをどちらかに振り切れば単体のディレイ/リバーブとして使用可能。これでEDITで作り込んだ音に空間系のエフェクトをかけられます。スライダーやツマミをミキサーのセンドと併せて調節し、微妙に広がるニュアンスを出したり、2基同時に使って激しく音色変化させることも可能です。 続くBEATS画面では、MIDIpak(リズム・パターン)をブラウズできます。プリセット数が多くなると逆に欲しいテイストのパターンを見つけるのが大変だったりしますが、それを回避するためにカテゴリー別や欲しいテイストを選択して振るいにかけたりと、さまざまな検索方法が用意されています。中でも個性的なのは、音の欲しい拍にチェックを入れていくことでパターンが絞り込まれる“Gridサーチ”機能(画面②)。
▲画面② リズム・パターンを閲覧するBEATS画面の上部には“Gridサーチ”セクションがあり、キック/スネア/ハイハットが欲しい拍にチェックを入れていくことで絞り込まれ、適合率が高いものから順に並び替えられていく ▲画面② リズム・パターンを閲覧するBEATS画面の上部には“Gridサーチ”セクションがあり、キック/スネア/ハイハットが欲しい拍にチェックを入れていくことで絞り込まれ、適合率が高いものから順に並び替えられていく
MIDIに慣れ親しんだ人にとっては、こちらの方が話が早いでしょう。また新採用の“Beat Transform”機能でアクセントの位置を変えることで、同じパターンでもグルーブにかなりの変化を加えられます(画面③)。
▲画面③ BEATS画面左上のTRANSFORMタブからBeat Transform機能にアクセスできる。アクセントの位置や強さ、クオンタイズの微妙なズレなどを細かく設定できるほか、リズムを倍速やハーフにしたりすることも可能。また元の状態に対してどれぐらい変化したのかも視覚的に確認できる ▲画面③ BEATS画面左上のTRANSFORMタブからBeat Transform機能にアクセスできる。アクセントの位置や強さ、クオンタイズの微妙なズレなどを細かく設定できるほか、リズムを倍速やハーフにしたりすることも可能。また元の状態に対してどれぐらい変化したのかも視覚的に確認できる
クオンタイズを微妙にズラしてヨレた感じにできるところが今っぽいですね。せっかく音色がリアルでも、グルーブがカッチリし過ぎていると生っぽい雰囲気にならなかったりするので、より自然な雰囲気にしたい人は、ここを調節してリズムを適度に揺らすとよいと思います。 BEATSセクションにはさまざまなパターンが用意されているので、いちからリズムを打ち込んでいく派の人も、収録パターンを一通り聴いてみることをお勧めします。アイディアの種としてはもちろん、ジャンル特有の“らしさ”や“年代感”は、リズム・パターンやちょっとしたフィルの感じで演出できることも多いので、そうした部分を聴いて目で見て学べるという点においても、これらのパターン集は非常に有用だと思います。

ドラッグ&ドロップによる オーディオの書き出しに対応


便利な新機能はまだあります。中でも特に良いと感じたのが、オーディオのドラッグ&ドロップ。これはAddictive Drums 2で作成したリズム・パターンを、DAWのオーディオ・トラックに簡単に張り付けられるもの(画面④)。
▲画面④ Adictive Drums2上で再生したパターンはAUDIO RECO RDER部でレコーディングされ、ウィンドウの一番左下にあるWAVファイルのアイコン(赤枠)をDAWのオーディオ・トラックにドラッグ&ドロップするだけで簡単に張り付けられる ▲画面④ Adictive Drums2上で再生したパターンはAUDIO RECORDER部でレコーディングされ、ウィンドウの一番左下にあるWAVファイルのアイコン(赤枠)をDAWのオーディオ・トラックにドラッグ&ドロップするだけで簡単に張り付けられる
ヒップホップ系のビート・メイカーであれば、自分の好きなパターン/音色をAddictive Drums 2でとことん作り込み、それをいったんオーディオ化してDAWでループさせたり、さらにチョップして単音にバラしてからソフト・サンプラーで打ち込むと、ヒップホップ的なリズム・パターンをMIDIで打ち込むよりも数倍“らしい”雰囲気が出せます。Addictive Drums 2自体はMIDIトラック上でのドラムのリアルさを追求したソフトですが、この機能があることで“ドラム・ブレイク生成装置”的な使い方が可能になり、筆者のようなビート・メイカーにも、かなり“使える”ソフトになっていると思います。 同様にMIDIのドラッグ&ドロップにも対応しており、パターンをDAWに張り付けてすぐ編集に移行できます。逆に“ビート・レコーディング”という、自作したリズム・パターンをMIDIでAddictive Drums 2のライブラリーに加える機能もあります。ほかにも設定を4つまで保存し、呼び出して比較できる“スナップショット”や、自作したプリセットをインターネット経由で保存しておき、ネット環境があれば自分のアカウントにアクセスして呼び出せる“クラウド・シンク”など、使い勝手の良さがブラッシュ・アップされています。     (サウンド&レコーディング・マガジン 2014年8月号より)
XLN AUDIO
Addictive Drums 2
XXL Studio Bundle オープン・プライス (市場予想価格:42,000円前後)
▪Mac:Mac OS X 10.7以上 ▪Windows:Windows 7/8 ▪共通項目:2GB以上のRAM、インターネット接続環境