「SENNHEISER HD6 Mix」製品レビュー:独自のアコースティック・システム搭載のミックス用密閉型ヘッドフォン

SENNHEISERHD6 Mix
ヘッドフォンやマイクなどで世界的に有名なドイツのメーカー、SENNHEISER。今回はスタジオでのミックス作業やモニタリングに特化したプロフェッショナル・シリーズの密閉型ヘッドフォン、HD6 Mixをレビューします。特許を取得したアコースティック・システムによるクリアなサウンドと、ノイズを最小限に抑えられる構造が特徴とのこと。早速その実力をチェックしていきましょう。

遮音性が高く長時間集中できる
2種類のイア・パッドなど付属品も充実


まずHD6 Mixを装着して感じたのは遮音性の高さ。ほかのヘッドフォンでは全く聴き取れないような、レコーディング音源に存在するノイズや不安定なピッチなどの音楽的に好ましくないとされる要素の粗探しが、HD6 Mixを使えばラクになりそうです。重量はサイズの割に軽量な印象にもかかわらずイア・パッドには高級感があり、レザーとベロアの2種類が付属しています。レザーは側圧が強めで遮音性が高く、ベロアはソフトな装着感で長時間の作業や録音時のモニターに向いているでしょう。ケーブルは着脱式で、ヘッドフォンの左右どちらのユニットにも装着することができるため、作業現場に応じてケーブルの取り回しがラクです。また、ステレオ・ミニ・プラグのカール・コードとストレート・コードの2種類にフォーン変換用のアダプターが付いているので、普段使い用のケーブルを新たに購入する必要がありません。ケーブル自体の質感/耐久性も共に高いので、安心して使うことができるでしょう。 

原音の正確な描写を目指す中域と
柔らかくも見通しの良い高域


早速、現在手掛けているプロジェクトのミックス作業で使用してテスト。スタジオのメイン・スピーカーでミックス〜バウンスした後、HD6 Mixを使って確認/修正し、メイン・スピーカーで再び聴いて違いをチェックするという工程で試してみました。HD6 Mixでモニターしたサウンドは、どの帯域もクリアで解像度が高くレンジも広い印象で、サウンドのディテールを追い込むときに役立ちます。ジャンルはオールラウンドですが、強いて言えばジャズよりもクラシック向けでしょう。同社のヘッドフォンはDJに人気のHD25シリーズなどに代表されるようなパンチのあるサウンドが特徴の一つですが、HD6 Mixはインピーダンスが150Ωと高めで飽和感が少なく、正確なモニタリングにフォーカスしているようです。特に、低域は輪郭が見えやすく、40Hz付近の量感がはっきりとらえられる印象で、生ドラムのキックはコンサート・ホールのPAスピーカーで鳴らしたように聴こえました。中域はパンチの強さで押すというよりも、レンジに余裕がある中で正確な描写を目指すことに重点を置いているようです。高域は、長時間のモニターにも耳が耐えられるような、柔らかくも見通しの良い音でした。また、ミックスには付きものであるリバーブやディレイなどの空間系エフェクトをチェックしてみると余韻の広がりがよく分かり、音作りやかけ過ぎ防止に役立ちそうな印象です。パンニングの変化にも敏感なので、スピーカーとの違和感を大きく感じることなくミックスを終えました。そしていよいよHD6 Mixを使ってミックスした音をスタジオのメイン・モニターに切り替えてチェック。すると、HD6 Mixでモニターしたときと大差無いバランスで鳴ってくれました。最後に、メイン・モニターでミックスした元の音とHD6 Mixを使ってミックスした音を聴き比べてみると両者に大きな違いはなく、むしろ低域はHD6 Mixでミックスした方がより良いバランスで仕上がっていたのです。これは、ヘッドフォンしか使えない状況においても、HD6 Mixを使えばスピーカーに近い感覚でミックス作業に十分なモニター環境を構築できるというあかしでしょう。 一通りテストしてみた結果、ミックス用とうたっているだけあって音の繊細な部分を正確に拾い上げているところに感心させられました。ヘッドフォンを選ぶ際、ついつい耳に近いユニットにばかり関心が行きがちですが、HD6 Mixは正確なモニタリングのためにヘッドフォンの構造全体をしっかりと考えて作られた製品のようです。  (サウンド&レコーディング・マガジン 2014年7月号より)撮影/川村容一
SENNHEISER
HD6 Mix
オープン・プライス (市場予想価格:30,000円前後)
▪形式:密閉ダイナミック型 ▪周波数特性:8Hz〜30kHz ▪インピーダンス:150Ω ▪音圧レベル:112dB ▪端子:ステレオ・ミニ(フォーン変換アダプター付属) ▪ケーブル:3mカール・コード/3mストレート・コード、着脱式、片出し ▪重量:264g