「PMC Twotwo.6」製品レビュー:イギリス伝統ブランドが送り出すDSP搭載アクティブ・ニアフィールド

PMCTwotwo.6
世界中のレコーディング・スタジオやマスタリング、映画や放送関係などのプロからアマチュアまでファンの多い、イギリスのPMC。1990年の設立時に発売されたラージ・モニターBB5は、現在も世界中の第一線で使われています。新登場のニアフィールド・モニターTwotwoシリーズは、ウーファー・サイズが5.5/6.5/8インチの3種。すべて共通のデザインと機能を備えていますが、今回は真ん中のサイズであるTwotwo.6をチェックします。

独自技術のATLで低域をコントロール
最高192kHzのデジタル入力も可能


まず大きさは、縦置きした状態でYAMAHA NS-10Mより若干幅が細く、逆に高さが少し長い細面の顔立ちとなっています。ただし奥行きはほぼ2倍。高級感あるつや消しのダーク・ブルー(かなり黒に近い)で塗装され、いかにもプロ・モニターといった面構えとなっています。後述するように、PMC自慢のATLを採用。そして同社で初めてDSPを搭載したシリーズです。アナログ入力(XLR&RCAピン)に加え、AES/EBUデジタル入力(最高192kHzまで対応)も装備。各種のセットアップはリアのバック・ライト付きLCDパネルで行えます。入力切り替えやL/Rそれぞれのトリム、HF/LFのブースト/カット、ローカットの周波数などが操作可能です。私の記憶が正しければ、PMCでは初めてフィルターやEQを搭載したモデルではないでしょうか。内蔵パワー・アンプはバイアンプ方式を採用。LF/HFそれぞれの帯域に対して個別にアンプがあることで、明確かつ微細なニュアンスの再現を狙っています。PMCのスピーカーには、バスレフとは違う発想のATLが採用されています。エンクロージャーの内部に長いトンネルを作り、専用の吸音材で吸音処理。ドライバーから内部に発生する低域成分をコントロールし、不要な成分を吸収した後、ポートからからピュアな低域を放出しているのです。NS-10Mに比べて2倍ほどの奥行きはこのATLの長さ(トンネル)に必要だったのですね。また、自宅や狭めのワーク・ルームでは縦置き、広めの環境では横置きなど、状況に応じて置き方を変えられるので、ステレオ・イメージや音色の精度が変わることがないとのこと。設置の選択肢と自由度が広がりますね。  

部屋の空気感やノイズまで分かる再現性
DSPで細かなコントロールも可能


では、アナログ・バランス接続で音を聴いてみます。我が家ではもちろん縦型セッティングです(笑)。電源を投入すると、ツィーター横のPMCロゴが白く光り、背面のLCDパネルが点灯。各セッティングはデフォルトのまま、まずはさまざまなジャンルのCDを聴いてみました。自然なレンジ感と、ステレオの広がり&奥行き感まで見事に再現されています。特に低域の再現性は我が家では聴いたことのないほど。驚きです。また、音量差での表現力の変化も少なく、同社のスピーカーでよく言われる“ボリュームを絞ってもバランスの崩れない音響特性”は本当ですね。ATLによる自然な低域の量感、なるほど納得です。次に、96kHzで録音&マスタリングが終了したファイルと、現在ミックス進行形の音源でチェック。CDでは再現できていなかったスムーズな高域の倍音のつながりや奥行き感、マイクと楽器の距離感、さまざまなエフェクト処理の具合まで、本当に見事な再現力です。部屋の空気感まで見えてくる感じがしました。特に現在ミックス中の曲は、ボーカルのリップ・ノイズやテイク切り替えで、つながりがいまひとつなところはリアルに分かってしまいます。また、未処理のトラックやエフェクトがかかり過ぎて不自然な状態、リバーブのかかり具合まで……むむむっ、まさにモニター・スピーカーですね。リアにあるDSPの設定もチェック。入力した信号は24ビット/96kHzに変換後、各種設定の通りコントロールし、DA変換してHF/LFのそれぞれのアンプに出力されます。イーサーネット・ケーブルでつなぐとL/R2台同時に調整が可能です。特に低域特性は部屋やスピーカーの置く場所によって左右されるので、EQやローカットでの補正は有効かと思います。EQは最大±4dBまで、0.125dB単位でかなり細かく微妙な調整が可能です。ローカット(6dB/Oct)の周波数は50/80/120/200Hzが選択でき、サブウーファーとの連携も考えられているようです。ただし、我が家のワーク・ルームはさほど広く無いので、そのたびにスピーカーを裏返して変更するのはやや大変でした。 今回のレビューでは、新時代のPMCを体感することができました。今後登場予定の外付けコントローラーがリリースされると、ステレオ音場はもとより、5.1chをはじめとする各種サラウンドの環境や、スタジオ以外の最小限のスペースで正確なサウンドが求められる現場などでも、素早くさまざまな環境にも対応できるようになると思います。このシリーズの他のスピーカーも含め、本当に興味津々です。さすが実力のPMC、今後の展開には目が離せません。   (サウンド&レコーディング・マガジン 2014年4月号より)
PMC
Twotwo.6
オープン・プライス (市場予想価格: 650,000円前後/ペア)
▪周波数特性/40Hz~25kHz ▪クロスオーバー周波数/1.8kHz ▪ツィーター/27mmソフト・ドーム ▪感度/+4~20dBu ▪最大音圧/113dB@1m ▪パワー・アンプ出力/150W(LF)+50W(HF) ▪ATL長/1.6m ▪外形寸法/194(W)×406(D)×364(D)mm ▪重量/8.4kg(1本)