「MACKIE. MR8 MK3」製品レビュー:多様な入力端子とEQ補正スイッチを搭載したパワード・モニター

MACKIE.MR8 MK3
今回レビューするMACKIE. MR8 MK3は、オーソドックスなパワード・モニターの新製品なのですが、正直驚きました。筆者がレビューする際、いつも予備知識ナシで取りあえず使ってみるのですが、まず音が良くてビックリ。次に値段を調べて“マジで!?”と思わず口から出てしまいました。本当に驚くと声に出してしまいますよね。この製品で筆者のMACKIE.へのイメージが完全に塗り替わったのです。

5.25〜8インチまでのラインナップで
環境に合わせ選択可能


MR8 MK3は8インチのパワード・モニター・スピーカーです。シリーズとしては、5.25インチ・ウーファーのMR5 MK3(27,300円/1本)、6.5インチ・ウーファーのMR6 MK3(36,225円/1本)、さらに10インチのサブウーファーMR10S MK3(65,100円)から成り、そのリーズナブルな価格と環境に合わせて選べるラインナップで、宅録環境からスタジオ・リファレンスまで幅広く使用できる製品群です(上位はHRシリーズ)。MR8 MK3の基本スペックは、前面に8インチ・ウーファーと1インチ・ツィーター。背面にはXLR、TRSフォーン、RCAピンの3種類という多様なインプットを備え、100Hz以下を3段階のシェルビング(0/+2dB/+4dB)で切り替えできる“低域フィルター”、3kHz以上を±2dBでシェルビング調節できる“高域フィルター”、そしてインプット・レベル調節のツマミがあります。背面上部にはバスレフ・ポートが配置されています。前面はロゴ以外シンメトリーな配置なので、設置の自由度は高そうです。 

低域から高域まで自然なバランスで
特に中域のハリやツヤが明確


基本事項をざっと追ったところで少々余談なのですが、筆者は数年前にサンレコ別冊の企画で、小型のニアフィールド・パワード・モニターの比較レビューをやらせていただき、実はそのときに初めてMACKIE.のスピーカーを聴いたのです。MACKIE.と言えばミキサーの印象が強かったのですが、実際にスピーカーの音を聴いてかなり好印象だった記憶があります。さて、そんなことを思い出しながらセッティングをしてみたのですが、今回の機種MR8 MK3のサイズはやや大きめで、GENELEC 1031Aと同じくらいの割に、持ち上げると拍子抜けするくらい軽いです。8インチ・ウーファーの見た目のインパクトに反してパッシブ・スピーカーのような軽さ。しかし設置するとしっかり安定感があるので問題はありません。そして音を聴いて驚きました。素晴らしい! 一聴してすぐ分かるのは“とにかくバランスが良い”ということです。鳴っている音、低域から高域に至るまでのつながりや配分がすごく自然で、“こう鳴ってほしい”という理想的なバランスです。特に中域のハリやツヤが明確で、音楽で一番大事なのは中域であることを出音が物語っています。例えるならきらびやかでアメリカン・サウンドという派手さがありますが、不自然さは全くありません。もちろん8インチ・ウーファー搭載なので低域も申し分なく、ローエンドまでしっかり伸びています。位相に関してもかなりタイトでセンターがビシっと決まっており、中高域のレスポンスの良さと相まってボーカルの後ろのリバーブまでしっかりと見えます。全体的に派手めに鳴るのかと思いきや、いろいろな音源を聴いていくと、割と素直なことが分かりました。良いものは良く、ダメなものはダメなまま鳴ります。しかし、とにかく中高域の存在感とバランスが抜群です!ここまでなんの予備知識も得ずに聴いていたので、てっきりそこそこお値段のするものだと思っていたのですが、価格帯を調べてみてさらに驚きました。まさかこんなにリーズナブルだとは……。このコスト・パフォーマンスは尋常ではないです。筆者がこれまでさまざまなスピーカーをレビューしてきて感じるのは、各パーツの性能うんぬんよりも、それを含めた全体のバランスが大事だということです。極端なことを言うと、いくら超高級/高性能なツィーターを搭載していても、それを含めた全体のバランスが良くなければ、そこで音の相関図である“音楽”は作れないのです。MR8 MK3はそのことを再確認させてくれるスピーカーです。逆に“安いからあまり期待はできないのでは?”といった偏見をとっぱらってぜひ聴いてみてほしいです。この音を嫌いだと言う人はほとんどいないのではないでしょうか。私、本当に気に入ってしまいました。欲しい! 
▲リア・パネルにはバスレフ・ポートと3種類のインプット(XLR、TRSフォーン、RCAピン)、低域レベル・コントロール(0dB/+2dB/+4dB)、高域レベル・コントロール(−2dB/0dB/+2dB)、ボリューム・ツマミを搭載する ▲リア・パネルにはバスレフ・ポートと3種類のインプット(XLR、TRSフォーン、RCAピン)、低域レベル・コントロール(0dB/+2dB/+4dB)、高域レベル・コントロール(−2dB/0dB/+2dB)、ボリューム・ツマミを搭載する
   (サウンド&レコーディング・マガジン 2014年3月号より)
MACKIE.
MR8 MK3
45,150円/1本
▪構成:高域=1インチ・シルクドーム・ツィーター、低域=8インチ・ポリプロピレン・ウーファー ▪最大出力:113dB SPL(ペア) ▪周波数特性:38Hz〜20kHz ▪入力インピーダンス:20kΩ(バランス)/10kΩ(アンバランス) ▪外形寸法:277(W)×400(H)×336(D)mm ▪重量:10.8kg(1本)