「MCDSP 6020 Ultimate EQ」製品レビュー：音源に合わせて10種類のタイプを切り替えて使えるプラグインEQ

MCDSP6020 Ultimate EQ

早乙女正雄

今回紹介するMCDSP 6020 Ultimate EQは、音色に特徴のある10種類のEQの中から最適なものを選び、使い分けられるよう設計されたAAX DSP/AAX Native対応のプラグインEQです。早速チェックしてみましょう。

ボタンでEQタイプを切り替え
INPUT/OUTPUTボリュームも装備

6020 Ultimate EQのデザインは今はやりの縦型モジュール風で、インターフェース左手のボタンでEQを１タイプ選択。中央には共通でINPUT/OUTPUTボリュームとレベル・メーターを備えているあたりは、プラグインならではの設計と言えます。操作上の注意点としては、つまみを回してもパラメーターが数値として表示されません。また、カーブがシェルビング型のものは固定となっており、ベル型は選べないようになっています。ある意味で思い切った使い方を想定してデザインされているようで、あまり細かなことは気にせず、つまみを回しながら耳で音の変化を感じて音作りするタイプの製品かと思われます。

それぞれ音質に特徴があるEQ群
バリエーション豊かな音作りが可能

先述したように、本プラグインは数値が表示されないため、FREQつまみのセンター付近の周波数をスペクトラム・アナライザーでざっくりと見ながら各タイプの特徴を紹介していきます。ちなみにベル型のQは全タイプ広めとなっています。●E670/MOO Qセミパラメトリックの３バンドEQ。ともにFAIRCHILD製EQのシミュレートで、E670がソリッドステート、MOO Qがチューブ・タイプとなっています。HIGH（8kHz）はエキサイターのようにはっきりと効き、MID（3kHz）は太くナチュラル。LOW（100Hz）はE670はソフト、MOO Qはタイトに効く印象です。E670の太い中域とMOO Qの低域のタイトさはかなり好みでした。前者はボーカル、後者はキックに合うでしょう。●IQシェルビングの２バンドEQ。1950〜1960年代のオーディオ・アンプに付いていたトーン・コントロールのような印象。HIGH（12kHz）は自然な感じで緩やか、LOW（120Hz）も量感豊かで、生のストリングスなどに合うでしょう。●E300/E301セミパラメトリックの３バンド仕様、MCDSPオリジナルのEQです。E301はE300のQを狭くしたハイゲイン・タイプで、HIGH（10kHz）はザラザラ、MID（3kHz）はザクザクとよく効きます。LOW（80Hz）ソフトな感じで倍音がよく聴こえる、ビンテージ・ギター・アンプのEQのような効き方で、カットにも向きます。●BRITISH-E/EZ QHIGHとLOWがシェルビングの３バンドEQ＋HPF。こちらもMCDSPのオリジナルEQです。BRITISH-EがNEVE、EZ QがDBXタイプとなっており、HF（10kHz）は奇麗に広がる感じ、P （2kHz）はアタック感がよく出ます。LF（100Hz）も太くぼけない感じで効きは良いです。BRITISH-EのHPFは自然で、一方のEZ Qは鋭い効き味。LFの太い質感とHPFの調整で好みのローエンドを作ることができ、好感が持てました。●EQ ’76セミパラメトリックの４バンド仕様、UREI 545タイプのEQです。HF（12kHz）は嫌味無く奇麗に効き、HMF（5kHz）はアタックが自然に出る感じ。LMF（800Hz）はパッシブEQのようなナチュラルさで、LF（180Hz）も分離感が良いです。効き方はかなり実機に近く、よくできています。打ち込みのドラムに合うでしょう。●FRG EEEHFとLFがシェルビングの４バンド。古いアナログ・ミキサーに付いていたようなEQです。HF（15kHz）は透明感があり奇麗。HMF（6kHz）は奥行き感が出てよく効きます。LMF（900Hz）はアタック感が自然に出て、LF（150Hz）も空気感をよくとらえています。これまで聴いたことがないような透明感があり、よくできたEQと言えます。コーラスやさまざまなアコースティック楽器に使えると思います。●E357HIGHとLOWがシェルビングのセミパラメトリック・３バンド・パッシブEQです。HIGH（18kHz）はスムーズで、MID（3kHz）はチューブっぽい雰囲気で自然。LOW（60Hz）も柔らかに効きます。ビンテージな味を加えるのに有効なEQで、シンセなどに合うでしょう。このプラグインは細かな補正というよりも、大胆な音作りに向いているように感じました。特にMOO QとEZ Q、FRG EEEは特徴的で、これらを個別に立ち上げて組み合わせるだけでも、多彩なサウンドが作れると思います。