「ELEKTRON Analog Keys」製品レビュー:Analog Fourに37鍵盤を加えて強化した4ボイス・アナログ・シンセ

オシレーターとフィルターはアナログ回路にこだわり、精度が要求されるコントロール系にデジタルを採用、パターン・シーケンサーも内蔵することで好評を博した卓上型4ボイス・アナログ・シンセ、Analog Four。その登場から約1年、37鍵キーボードを実装したAnalog Keysが誕生しました。

ELEKTRONAnalog Keys
オシレーターとフィルターはアナログ回路にこだわり、精度が要求されるコントロール系にデジタルを採用、パターン・シーケンサーも内蔵することで好評を博した卓上型4ボイス・アナログ・シンセ、Analog Four。その登場から約1年、37鍵キーボードを実装したAnalog Keysが誕生しました。

多様な電子音楽を網羅したプリセット
思わず聴き入ってしまう奥深い音色


まず目を引くのが、同社製品に共通する重厚感のあるボディと思わず手を伸ばしたくなるノブやスイッチ類。基本はAnalog Fourのデザインを引き継ぎつつ、ノブやボタン位置に若干の変更が見受けられます。鍵盤に加えて、ピッチ・ベンドやモジュレーション以外にも自由にパラメーターをアサインできるジョイ・スティック、そして4つのシンセ・トラックごとにインディビジュアル・アウトも新たに装備。またAnalog FourではLevelノブがトラックのレベル調整とメニューのスクロールやパラメーター値の設定を兼ねていましたが、本機では大型のSound Selectionホイールを備えることでレベル調整とは独立してスクロールなどが行え、格段に扱いやすくなりました。内蔵のプリセットなども幾つか変更点がありますが、こうしたOSの部分の機能に関してはAnalog Fourでもアップデート(OS1.1)によってほぼ同じ仕様になります。製品概要もそこそこに、早くいじりたいので音を出してみます。まずはプリセット・パターンを幾つか聴いてみたところ、さまざまなスタイルのエレクトロニック・ミュージックが網羅されており、本機の魅力を雄弁に語るかのような深い音色に聴き入ってしまいました。取っ掛かりにPerfromanceモード(後述)でパラメーターをいじってみましたが、その表情の豊かさに驚かされます。1つのボイス(シンセ・トラック)につき2つ用意されたフィルターは直列接続で、1段目にシンプルなローパスのラダー・フィルター、2段目にはマルチモード・フィルターがあり、その組み合わせで積極的な音作りが行えます。しかも両者の間にはアナログのオーバードライブもあり、これが何とも病みつきになりそう。もちろんエフェクトとしてオーバードライブやディストーションを備えたシンセはたくさんあるでしょうが、本機は2つあるフィルターの中間にオーバードライブを配置することで、よりスマートで使いやすいひずみが得られます。値が0でクリーンな状態、プラス方向でクリッピングしたハイ寄りのアグレッシブなひずみ、マイナス方向にするとよりマイルドで丸みのある中低域寄りのひずみが得られました。その後段のマルチモード・フィルターにはローパス/ハイパス/バンドパス/バンド・ストップ/ピークなど計7種類が用意され、さらなる音作りができるぜいたくな設計。どのフィルター・タイプもアナログならではのエグい効き方をして、グイグイいじるとどんどん凶暴な音になる! これは楽しいです! 

4音ユニゾン/ポリモードを用意
アサイナブル・モジュレーションも便利


あらためてじっくり見ていきましょう。オシレーターは前述の通りアナログなのですが、コントロールはデジタルなので非常に安定しています。1つのシンセ・トラックに対して2つのオシレーターとノイズがあり、ノコギリ/矩形/パルス/三角といった基本波形とともに、外部からのオーディオ入力をソースとして利用することもできます(写真①)。
▲写真① シンセ・トラック設定を呼び出したLCDディスプレイ。波形選択、サブオシレーター、デチューン機能、PWMの深さ/スピードなどを調節できる。また本機から4音ポリモードや4つのシンセ・トラックをユニゾンさせるモードも追加された ▲写真① シンセ・トラック設定を呼び出したLCDディスプレイ。波形選択、サブオシレーター、デチューン機能、PWMの深さ/スピードなどを調節できる。また本機から4音ポリモードや4つのシンセ・トラックをユニゾンさせるモードも追加された
PWMはパルス波だけでなくその他の波形も変調できて、音作りの幅はかなり広いです。さらにサブオシレーターもあり、1もしくは2オクターブ下の音を加えることができます。ちなみにAnalog Fourは4ボイスでしたが、4つのトラックを持ったモノフォニック・シンセという仕様で、コードの演奏はできませんでした。それが本機から4音ポリやユニゾンでのプレイも可能になりました。この点は、Analog Fourでも前述のOSアップデートで対応できます。フィルターは先ほど触れた通りですが、さらにResonance Boostというモードをオンにすると、強烈なレゾナンスによるパワフルなベースや、スペーシーな発振音を得ることもできます。アンプ部ではエンベロープの設定などができますが、これとは別に本機には2つのアサイナブル・エンベロープが用意され、行き先を任意に設定することができます(そのうち一つはあらかじめフィルターにアサインされています)。LFOも2基あり、それぞれの行き先をユーザーが指定できます。こうした4つのシンセ・トラックに加え、高品位なコーラス/ディレイ/リバーブを備えたFXトラックや、外部のアナログ・シンセなどをコントロール可能なCV/Gate信号を出力できるCVトラックも備えています。各操作は、エディットしたい項目をボタンで選択して、LCDディスプレイの横にある10個のロータリー・エンコーダーを使って行うことになります。LCD内のパラメーターの並びがそのままエンコーダー配置に対応しており、エンコーダーに触るとそのパラメーターと設定値がフル表示されます。ロータリー・エンコーダーを押しながら回すと数値を大きく変化させられるのは、同社製品に共通する作りです。また、先ほどのPerformanceモードに入ると、1つのエンコーダーに複数のパラメーターをマッピングしてコントロールが可能。例えばオシレーターのディケイ+フィルターのカットオフ+オーバードライブ+エフェクト・センドを1つのノブでダイナミックにリアルタイム・コントロールできたりするので、ライブ・パフォーマンスにも最適です。ちなみにこうした場合、自分が何を今どのように扱っているか見失わないようにしないといけませんが、本機はエンコーダーとLCDの距離感や大きさが絶妙。LCDから視線を外すことなく自然にパラメーター操作ができるようにノブが配置され、よく考えられているという印象です。 

定評あるパラメーター・ロック機能
ハードならではのダイナミックな操作感


非常に直感的な操作性で高い評価を得ているパターン・シーケンサーも、同社製品の魅力です。本機では1〜16のボタンを使ったステップ打ち込みと鍵盤をリアルタイムに弾いての記録に対応し、最大の特長はパラメーター・ロック機能。1〜16の該当ボタンを押しながらパラメーターを操作することで、ステップごとに設定を変えられるほか、パラメーター・スライド機能ではノート間のパラメーター値がスムーズに変化。こうした操作をシーケンスを一切ストップすることなく行うことが可能です。また本機ではTransposeキーとFunctionキーが近くに並んだことで、シーケンス再生中のリアルタイム・トランスポーズの操作性が格段に飛躍しました。これは個人的に陥りやすい状況なのですが、DAWでマウスを使ってち密なエディットをしていると、どうしてもスムーズな流れを作ってしまい、面白みの少ないものになりがちだったりします。しかし本機のシーケンサーを使うと、目先ではなく感覚が研ぎ澄まされて、結果的にダイナミックでパワフルなものが出来上がりやすいです。アルペジエイターも付いており、その自由度とエディットのしやすさも特筆すべき点です。大画面のDAWでの作業に慣れ過ぎてしまった昨今、本機の小さなLCDディスプレイは物足りなく思えてしまうかもしれませんが、実はここにこそクリエイティビティをわき立たせる本質があるように思えてきました。目で追うのではなく、耳と手先の感覚に集中しやすいのです。 ハードウェア・シンセの担う役割の一番大きなものの一つが、ライブなどにおけるフィジカルな演奏性だと思います。本機では鍵盤の装備やPerformanceモードによってアーティストの持つテクニック、ひらめき、ハードならではの偶発性などを余すところなく発揮できそうです。そして何よりもこの音。最高です! 
リア・パネルの入出力端子は、中央左からUSB(MIDI送受信用)、MIDI THRU/OUT/IN、CV信号の任意アサインができるCV出力×2(TRSフォーン)、外部入力L/R(フォーン)、インディビジュアル・アウト×4(TRSフォーン)、アナログL/R出力(TRSフォーン)、ヘッドフォン(ステレオ・フォーン) リア・パネルの入出力端子は、中央左からUSB(MIDI送受信用)、MIDI THRU/OUT/IN、CV信号の任意アサインができるCV出力×2(TRSフォーン)、外部入力L/R(フォーン)、インディビジュアル・アウト×4(TRSフォーン)、アナログL/R出力(TRSフォーン)、ヘッドフォン(ステレオ・フォーン)
  (サウンド&レコーディング・マガジン 2014年3月号より)
ELEKTRON
Analog Keys
194,900円
▪ボイス数:4 ▪トラック数:シンセ・トラック×4、FXトラック×1、CV/Gateトラック×1 ▪シンセ・トラック構成:アナログ・オシレーター×2、サブオシレーター×2、ノイズ・ジェネレーター、ローパス・ラダー・フィルター、マルチモード・フィルター、アンプ(エンベロープ付き)×1、アサイナブル・エンベロープ×2、LFO×2 ▪最大シーケンス・ステップ数:64(1パターンにつき) ▪鍵盤数:37(セミウェイテッド/アフタータッチ付き) ▪外形寸法:660(W)×93(H)×309(D)mm ▪重量:5.4kg