「RME OctaMic XTC」製品レビュー:多彩なデジタル入出力を装備し幅広い用途に使える8chのマイクプリ

RMEOctaMic XTC
RMEから8chのマイクプリ、OctaMic XTCが登場。多彩な入出力を備えており、同社のさまざまなオーディオI/Oと組み合わせて使うことが想定されています。その実力を見てみましょう。

ADATやMADIのデジタル入出力は
最高24ビット/192kHzに対応


まずは入出力から。アナログ入力の数は全部で8つ。ch1〜4はXLR/TRSフォーン・コンボのマイク/ライン・イン、ch5〜8はハイインピーダンス対応のXLR/フォーン・コンボで、マイクのほか、ギターやベースを直接つなぐこともできます。アナログ出力は、ヘッドフォン端子を2つ装備。マイクプリにはヘッドフォン端子を持たない機種が多く、ライブ録音などの際はモニター用のミキサーを別途用意しなければなりませんが、本機であればその必要はありません。デジタル入出力のフォーマットは豊富で、オプティカルのADATインとADATアウト×2、D-Sub25ピンのAES/EBUイン/アウト、オプティカルのMADIイン/アウトを搭載。デジタルの各入出力は最高24ビット/192kHzに対応し、自由にルーティングさせることができるため、本機をデジタル・フォーマット・コンバーターとして使用することも可能です。さて、ここで“MADI”についておさらいしておきましょう。これはマルチチャンネルのデジタル・オーディオを1本のケーブルで伝送するための規格で、44.1kHzもしくは48kHzの信号なら最大64イン/64アウト、96kHzの信号であれば最大32イン/32アウトの入出力に対応。伝送可能な距離は最長2,000mとなっており、コンサートPAやライブ録音、中継などの用途で普及しています。OctaMic XTCは8台までカスケード接続することができるため、DAWソフトなどを用意すれば、最大64trのマルチ録音が可能です。また、本機のMADIインにはMIDI信号を入力することができ、RMEのMIDI Remoteというソフト(Mac/Windows対応)を使用して、入力ゲインなどのパラメーターをリモート・コントロールすることができます。さらに、これとは別にMIDI IN/OUTも備えており、例えばRMEのオーディオI/OのMIDI OUTと本機のMIDI INを接続すれば、同社のミキシング用ソフトTotalMix FX(Mac/Windows対応)のインプット・チャンネルからゲインやファンタム電源、位相反転、ミュートなど、よく使うパラメーターがリモート・コントロールできるようになります。そのほかUSB2.0端子も用意されており、ファームウェア・アップデートに使える上、MacもしくはAPPLE iPadと接続すれば本機をオーディオI/Oとして機能させることも可能。なお、iPadとつなぐ際はiPad Camera Connection Kit(別売)が必要です。 

繊細なニュアンスまで収めるマイクプリ
音の存在感を損なわないA/D


今回はとあるバンドのライブ録音に使ってみました。編成は男性ボーカル/エレキギター/エレクトリック・ピアノに加え、ライブ・ドローイングのペンやマジックの音をピエゾ・マイクとバウンダリー・マイクで拾い、リズム・トラック代わりにするというものです。マイクは各パートとアンビエンスに立てた計8本で、それらをOctaMic XTCに接続し、ADATでRMEのオーディオI/O、Fireface UCXに出力。APPLE MacBook ProとUSB接続して、STEINBERG Nuendo 5.5に24ビット/48kHzで録音しました。先述の通り、本機はMacまたはiPadと接続することで単体のオーディオI/Oとして機能しますが、ドライバーを経由しないクラス・コンプライアント・モードでの動作となるため、今回はFireface UCXと組み合わせて使用することで、より安定した動作環境を構築しました。セッティングは簡単で、取扱説明書が無くても使い始めることができました。各種パラメーターは、PHONES/GROUPS/CHANNEL/SETUPという4つのスイッチと2つのプッシュ機能付きロータリー・エンコーダーを使って調整します。設定した内容はパネルの液晶画面に映し出すことができるのですが、もう少し大きくて見やすければうれしかったなと思います。とは言えそこまで苦になるものではなく、慣れれば素早いセッティングも可能でしょう。さて肝心の音ですが、ドローイングの繊細な音を再現するのはライブPA時も大変なので、録音するとなると一体どんな音質になるのか心配だったのですが、繊細な部分までうまく収められていました。高域が奇麗に伸びており、低域は引き締まっていて余計な色付けがありません。周波数特性のバランスが非常に良好です。また、A/Dの質もかなり高いと感じました。音が全く奥まらず、前に出てきます。特に歌声とエレピが好印象で、“さすがはRME!”といったところでしょうか。第二弾のチェックは、24ビット/96kHzでのドラム録音です。オーバーヘッドのL/RにAKG C451Bを1本ずつ、スネアにSHURE SM57、キックにSENNHEISER MD421-IIを設置し、合計4chをFireface UCXに送りました。OctaMic XTCのADATアウトはS/MUXに対応しているため、96kHzでも最大4chの信号を出力することができます。レコーディングした音を聴いてみると、特にシンバルの高域の奇麗さに驚きました。正直なところ、これまでC451の高域の鳴りは苦手だったのですが、本機と併用すれば全く気になりません。96kHzというハイレートの恩恵もあると思いますが、高域のギラつきのようなものが無く、ナチュラルに録音されていました。マイクプリだけでなくデジタル・フォーマット・コンバーターやオーディオI/Oとしても使えるOctaMic XTC。マイクプリの音質は優秀で、MADIにも対応しているため、ライブ録音やポストプロダクション用の機材として頼もしい一台です。 
▲背面には、左から電源イン、MIDI IN/OUT、MADIイン/アウト(オプティカル)、USB2.0端子、ワード・クロック・イン/アウト(BNC)、AES/EBUイン/アウト(D-Sub25ピン)、ADATイン、ADATアウト×2(以上オプティカル)、マイク/ライン・イン(XLR/フォーン・コンボ×4、XLR/TRSフォーン・コンボ×4)が並ぶ ▲背面には、左から電源イン、MIDI IN/OUT、MADIイン/アウト(オプティカル)、USB2.0端子、ワード・クロック・イン/アウト(BNC)、AES/EBUイン/アウト(D-Sub25ピン)、ADATイン、ADATアウト×2(以上オプティカル)、マイク/ライン・イン(XLR/フォーン・コンボ×4、XLR/TRSフォーン・コンボ×4)が並ぶ
  (サウンド&レコーディング・マガジン 2013年11月号より)
RME
OctaMic XTC
オープン・プライス (市場予想価格:260,000前後)
▪チャンネル数:8ch(A/D)、4ch(D/A) ▪S/N:113dB(A/D)、115dB(D/A) ▪周波数特性:8Hz~94kHz(A/D)、8Hz~75kHz(D/A/いずれも192kHz時、@-1dB) ▪外形寸法:483(W)×44(H)× 242(D)mm ▪重量:3kg