映画/テレビ/ゲームに即戦力で使える大容量シネマティック音源「PROJECT SAM Lumina」

PROJECT SAMLumina
オーケストラ音源で有名なPROJECT SAMから新作のLuminaが発売された。これまでに同社から発表されたSymphobiaやTrue Strikeなどの音源がとても優秀だっただけに、ファンタジーやミステリー、アニメーションに最適というLuminaのうたい文句にはぐっと引かれるものがある。早速レビューしていこう。

24ビット/44.1kHzのサンプルを
約40GBもの大容量で収録


Luminaを制作したPROJECT SAMは、2001年に作編曲家3人がオランダで設立した会社で、オーケストラ音源のライブラリーを専門としている。映画/テレビ/ゲーム用の即戦力となる音源として、音のクオリティはもちろん、オーケストラで最初から弦と金管が組み合わされた状態でプログラムされていたり、典型的なパッセージがフレーズ・サンプリングされていたりしていて、オーケストラの楽器を個々に組み上げていく手間が省かれていることが最大の特徴である。Luminaは国内ではUSBメモリー版で用意されており、オーソライズまで作業は非常にスムーズ。24ビット/44.1kHzのサンプルが40GB近い大容量で収録されているが、3時間程度の作業で音出し可能となった。なお、プレイバック用ソフトとしてはスタンド・アローン/VST/Audio Units/RTASで動作するNATIVE INSTRUMENTS Kontakt 5 Playerも使用可能。筆者のパソコン環境は、USB2.0接続の5,400回転ハード・ディスクで、APPLE MacBook Air/1.6GHz Core i5/Memory4GB/バッファー・サイズ64サンプルで、Lumina単体であれば音切れを起こすこともなく快適だった。 

さまざまな状況やイメージに合わせた
パッチを6カテゴリー用意


Luminaの音色プリセットには、フル・オーケストラ、クワイアなどのほかさまざまなソロ楽器があり、さらに、それらをいろいろな状況やイメージに合わせてプログラミングしたパッチが、6カテゴリー分用意されている。順番に紹介していこう。●Stories“ファンタジー”や“ミステリー”などの状況設定に適した音色が組み合わされ、1つのプログラムで演奏できるようなパッチ集。ただし使うMIDIチャンネルは1つだけでマルチ音源ではない。例えば、“A Fantasy-Majestic”というパッチは、オーケストラとコーラスを組み合わせた音で、モジュレーション・ホイールを上げると音色が派手になり、金管が前面にくる。また最高域の鍵盤には11種類のパーカッションがアサインされており、さらに、最低音のキー・スイッチで、オーケストラ、低音、パーカッションなどを個別にオン/オフできる。実際にMIDI鍵盤を使って演奏してみると雰囲気は抜群で、大太鼓でゆったりとしたリズムを出しながらオーケストラのフレーズを即興演奏していると、あっという間に印象的な曲が出来上がってしまった。Storiesには、こうした音色の組み合わせが8種類プログラムされている。●Textures and Gesturesいろいろな場面を想定したオーケストラ+コーラスのフレーズ・サンプリング(長いループやワンショット)のパッチ集で、1つのパッチの中にはいくつかのフレーズとそのキー違いが鍵盤に割り当てられている。順番に聴いていくと、いかにも使えるフレーズばかりで、場面に応じてアタックに使ったり、背景で長くのばしたり、DJ感覚であっという間に完パケのサウンドが出来上がる。●Individual Instrumentsハープのいろいろな演奏パターンや、さまざまな楽器のスタッカート演奏を組み合わせたものなど、演奏フレーズをメインにしたパッチ。●Legato Soloists単音楽器(主に管楽器)を単体で収録したもので、ベロシティによる音の長さの調整や、レガートで演奏したときの音の続き具合など、とてもリアルにプログラムされている。●Dystopia効果音/アンビエント・サウンド集で、“Vintage Orchestra”にはMellotron的なサウンドが収録されている。●Time-strech EnabledKontakt Playerのタイム・ストレッチ・エンジンを使用し、フレーズの速さをコントロールするプログラム。駆け上がりなどのフレーズをテンポに合わせてピッチを変えずにコントロール可能。
 Luminaの音色のクオリティは高く、映画/テレビ/ゲームなどの仕事においては全く問題はないだろう。特筆されるのは、ダイレクト(楽器の近く)、アンビエント(指揮者の位置)、ワイド(オーケストラの左右の端)の3つのマイク・ポジションで録音されていて、これをミックスできるようになっていることだ。音源からの距離感をリバーブに頼ることなく自然にコントロールできることは、音色のリアルさの説得力を大いに増している。打ち込みで一から作曲していくのに比べると、既に音色の組み合わせやフレーズが出来上がっているので、作曲のスピードは圧倒的に速い。ただし、譜面で作曲されているものを再現していくのには向かない。Luminaに用意されているフレーズの数はかなり多いので、プログラム全体をあらかじめしっかり聴き込んでおけば、作品が単調になることは避けられるだろう。Symphobiaなどと併せて、PROJECT SAMは新しいオーケストラ作品の作り方を提示しているのだ。   (サウンド&レコーディング・マガジン 2013年10月号より)
PROJECT SAM
Lumina
122,850円
▪Mac:Mac OS X 10.6.8以降 ▪Windows:Windows 7/8 ▪共通項目:INTEL Core Duo 1.66GHz以上、4GB以上のRAM、40GB以上のハード・ディスク空き容量、USBポート