独自のケブラー・コーン・ウーファーと
軽量のシルク・ドーム・ツィーターを採用
Eris E8はバイアンプ駆動を採用し、低域/高域にそれぞれクラスABアンプを備えています。低域のアンプ出力は75Wとなっており、独自の8インチ・ケブラー・コーン・ウーファーを駆動させ、35Hzまでの低域を再現します。高域のアンプ出力は65Wとなり、1.25インチの軽量シルク・ドーム・ツィーターをドライブさせ、22kHzまで再現するという申し分無いスペックです。背面には3種類のライン・インを装備。XLRとTRSフォーンの端子がバランス入力で、RCAピンの端子がアンバランス入力となっています。外形寸法は250(W)×384(H)×299(D)mmとなっており、高さはYAMAHA NS-10Mとほぼ同じ、全体的にはGENELEC 1031Aと同程度です。重量は10.07kgで、このサイズのモデルとしてはやや軽め。スピーカー・スタンドにも、コンソールの上にも設置しやすそうな印象です。背面の“ACOUSTIC TUNING”セクションには、内蔵EQの操作子が装備されています。“HIGH”ツマミはハイシェルビングEQを制御するもので、4.5kHz以上の帯域を±6dBの範囲で調整可能。“MID”ツマミは中域のピーキングEQとなり、1kHzを中心として±6dBの増減が行えます。“LOW CUTOFF”はサブウーファーを併用する際に使うローカットで、80Hzもしくは100Hzを−12dB/octでロールオフさせることが可能。このセクションには“Acoustic Space”というローシェルビングEQスイッチが別途用意されており、設置環境に合わせて800Hz未満の帯域をカットすることができます。スイッチで切り替えられるモードは全3種類。使用例としては、本機を壁から離して設置する場合はフラットな“0dB”、壁に接する状態でセットする際は“−2dB”、壁付近で内振りにするときは“−4dB”を選択します。
ベースのボトムやキックのアタックを
しっかりと再現する低域
今回は、自宅の作業部屋とSSLコンソールを備えたスタジオの両方でチェックを行いました。自宅ではモニター・コントローラーにPRESONUS Central Stationを使い、本機をAMCRON DC-300AでドライブさせたNS-10M、そしてパワード・モニターのGENELEC 1032Aと比較試聴。スタジオでは、YAMAHA PC-2002で駆動させたNS-10Mと聴き比べてみました。音源は、普段モニター・チェックに使っているミシェル・ンデゲオチェロの「ザ・ウェイ」とバーシアの「Drunk On Love」を使用。そのほか、現在筆者が手掛けているAVID Pro Toolsセッションを用い、実際のミックス作業にも使ってみました。低域の出方は、昨今のパワード・モニターらしくとても伸びがあります。ベースのボトムやフレーズが心地良く聴き取れるほか、バス・ドラムのタイトなアタック感もしっかりととらえることができ、ウーファーのレスポンスの良さが感じられました。入力レベルはかなり上げることができ、突っ込んだときにも1032Aと比べてそん色の無い低域の明りょう度です。しかし、中域に関してはすべての内蔵EQをフラットに設定した際、少々物足りなさを感じました。低域が豊かなせいなのかもしれませんが、ボーカルは一歩下がった感じ、ピアノだと粒立ちが見えにくくなる印象です。高域もロールオフしている感じで、NS-10Mと比べてもハイハットやシンバル、振りモノのパーカッションの動きが見えづらく、左右の広がりが狭いように感じました。そこでスピーカーを壁面から離して内振りにし、ACOUSTIC SPACEを−4dB、LOW CUTOFFを80Hz、MIDを2時くらい、HIGHを1時半くらいの位置に設定。すると、個人的にしっくりとくるサウンドが得られました。内蔵EQは、メーカーが想定している使い方とは違ったかもしれませんが、出音を微調整できるのがとても面白かったです。1本26,000円前後と、リーズナブルな価格帯のスピーカーとしてはコスト・パフォーマンスに優れていると思います。