
内蔵プリアンプは+12dBブースト固定
18〜48Vのファンタム電源で動作
一見してまず驚くのは、フォーン/XLRの変換アダプターと見間違えるような形状と大きさです。外形寸法は19.5(φ)×82.5(H)mmとなっており、スイッチ類は一切無く外観は非常にシンプル。ボディにはビンテージライクなメーカー・ロゴが配置されており、Big Ampという気の利いた製品名と相まって一気に気に入りました。Big Ampは、この小さな筐体の中にゲイン・ブーストとインピーダンス変換、アンバランス接続からバランス接続への変換といった機能を持たせています。入出力端子はボディの先端部にそれぞれ配置。入力はアンバランス接続のライン・イン(フォーン)、出力はバランス接続のライン・アウト(XLR)となっています。内部にはクラスAのアクティブ型FETアンプが搭載されており、楽器をつなぐとゲインが+12dBブーストされます。既にご存じかもしれませんが、“FET”とは“FIELD EFFECT TRANSISTOR”の略で、トランジスター・タイプのアンプとなっています。その音質は低ノイズで、大きなヘッドルームを備えているというのが一般的。このプリアンプは、ミキサーなどからファンタム電源を供給すると動作します。また、必要な電圧は18〜48Vです。先述の通り、本機はDIとして使用することも可能で、ウッド・ベースなどに使うピエゾ・ピックアップやエレキギター/ベースなどのハイインピーダンス信号を、ローインピーダンスに変換。出力された信号は、ミキサーやプリアンプ、チャンネル・ストリップなどへダイレクトに入力することができます。ライブやレコーディングの現場では、さまざまなインピーダンスを持つ楽器/機材を取り扱いますが、ハイインピーダンス機器をDIに通してローインピーダンスに変換し、さらにバランス方式で伝送することで、ノイズを抑え音質の劣化を回避することができます。プリアンプとDIという、両面を持ち合わせたBig Ampは、シンプル&コンパクトであることも相まって、非常に使いやすい機材であることが期待できます。
アンプの音質はクリーンで
ヘッドルームも十分
今回は、レコーディングの現場でBig AmpにEPIPHONEのエレキギターSheratonとパッシブ・タイプのFENDER Jazz Bassをつないでみました。いずれの楽器の場合も、印象に残ったのは触れ込み通りの低ノイズでクリーンなサウンドです。DIとして望まれる基本的な性能ですが、コンパクト設計である上に、ゲイン・ブーストされていてなおこの透明感なので、非常に良い印象。ヘッドルームも十分だと思います。また、音ヤセが感じられないのも特徴。DIによっては“線が細くなるな”と思う機種もありますが、Big Ampにはそういったことは無く、やはりここでも原音に忠実という印象です。ベースを接続しても、低音がボヤけるようなことはありませんでした。製品開発の丁寧さをうかがうことができますね。DIとしてリクエストすることがあるとすれば、PADやグラウンド・リフト、極性反転などのスイッチを搭載してくれたらもっと良かったと思います。PADはシンセのライン出力などによく使われますし、グラウンド・リフト・スイッチはアースの絶縁でノイズが発生しやすい場合に便利。特にライブの現場では便利でしょう。あと“内蔵アンプでゲインが+12dBブーストされます”といった表示がどこかにあればより親切な気がします。そうでないと、本当に変換アダプターと間違えて扱ってしまうこともあるかもしれません。とは言え、Big Ampが有用であることは間違いありません。小型かつ軽量なので持ち運びやすいでしょうし、音質も良いのでギター・ケースに常備しておくとよいと思います。例えば、小規模なライブ・ハウスでは“DIが足りなくなった”ということもしばしば起こるので、いざというときの助けになるでしょう。また、飛び入りギター・セッションなどでは、サっとケーブルにつないでミキサーなどに入力することができます。セッティングが楽でいいですね。コンパクトでシンプル、そしてクリアな音質を持ったBig Ampは、今までにありそうでなかった“ミュージシャンのツボ”を押さえたプリアンプ/DIだと思います。機動性が高く、使い勝手が良いので、自宅録音/ライブいずれのシチュエーションでも大きな力を発揮するでしょう。

