「AKG D12 VR」製品レビュー:3種類のフィルターを備えたバス・ドラム専用のダイナミック・マイク

今回テストするのは、レコーディング・スタジオでおなじみのメーカーAKGの新たなバス・ドラム用ダイナミック・マイク=D12 VR。同社D12の現代版として登場したものなのか、D112の進化形なのか、それとも全く新種のマイクなのか……? 早速チェックしていきましょう。

AKGD12 VR
今回テストするのは、レコーディング・スタジオでおなじみのメーカーAKGの新たなバス・ドラム用ダイナミック・マイク=D12 VR。同社D12の現代版として登場したものなのか、D112の進化形なのか、それとも全く新種のマイクなのか……? 早速チェックしていきましょう。

直径29mmの極薄ダイアフラムを採用
最大音圧レベルは164dB SPL


D12 VRの指向性はカーディオイド。直径29mmの極薄ラージ・ダイアフラムを採用し、バス・ドラムの量感を原音に近い形で再現しようとしています。最大SPLは164dBと、必要にして十分。同社C414のオリジナル・モデルに使用されているトランスを備え、インピーダンスは200Ω以下に設定されています。大抵のマイクプリとインピーダンス・マッチングが行えるというわけですね。最大の特徴は3種類の内蔵アクティブ・フィルター。これらは、本機に48Vのファンタム電源を供給することで有効になります。各フィルターはLED付きスイッチで切り替え可能。LEDが緑に光るポジションは、低域を持ち上げパワーを強調する“オープン・キック・ドラム・モード”、赤のポジションは中域を減衰させ響きを抑えた感じの“ビンテージ・サウンド・モード”、青は低域と高域をブーストした“クローズド・キック・ドラム・モード”となっています。この通りモードごとにLEDの色が分かれているため、遠目にも判別することが可能。ファンタム電源を切り、アクティブ・フィルターをOFFにすると、バス・ドラムだけでなくボーカルやベースの収音にも適しています。 

70's風のキック・サウンドや
ブーミーで個性的な音色が得られる


それでは、実際にチェックしてみます。使用するバス・ドラムは口径16インチで、フロント・ヘッドのサウンド・ホールが無いタイプ。まずはD12 VRをヘッドから約15cm離れたところに設置し、アクティブ・フィルターを“オープン・キック・ドラム・モード”に設定します。50〜120Hz周辺がバランス良く膨らみ、4.5kHz辺りが明るい粘りのあるサウンドです。ヘッドの前後の振動が分かるくらい、絶妙な音作りですね。扱いやすい音色で、かなり好印象です。次に“ビンテージ・サウンド・モード”に切り替えてみます。全体の響きとピークを抑えたタイトな音色で、1970年代の音楽でよく聴かれるデッドなブースでのバス・ドラム・サウンドに似ています。古め/今風どちらのサウンドにも使えそうです。最後の“クローズド・キック・ドラム・モード”は“オープン・キック”で持ち上がる低域/高域をさらに3〜4dBブーストしたような、かなり派手な音色。用途が限られると思いますが、ブーミーで面白いサウンドに仕上がっています。使用していて唯一気になったのは、アクティブ・フィルター・スイッチの表示。各モードにEQカーブが描かれているのですが、今どのモードを使っているのか分からなくなることがありました。個人的には、モード名も記載されていればなと思う次第です。このアクティブ・フィルターのおかげで、EQ非搭載のマイクプリに接続する場合でも十分な音作りが行えます。また各モードをONにしているときは、コンプをかけたような安定感が出るのも特徴です。さて話が前後するようですが、ここでファンタム電源をOFFにし、D12 VRの“素”の音をチェック。アクティブ・フィルターをかけているときに比べてゲインが4〜5dBほど上がり、回り込みが多くなるようです。サウンドは“オープン・キック”よりも明るく乾いており、立ち上がりが速い。ここまでバス・ドラムに試してきましたが、総合的には最大SPL=164dBという余裕が低域/高域のバランスの良さに表れている印象です。バス・ドラム以外のソースとして、試しにスネアに使用してみます。アクティブ・フィルターの音作りがマッチしており、各モード共に音が太く、かなり有用です。また、ウッド・ベースに立ててみると、今度はアクティブ・フィルターOFFの状態が好印象。ボディの響きやアタックが、リボン・マイクを使ったように肉厚です。また、極薄ラージ・ダイアフラムによるトランジェント特性の良さでしょうか、ファットながらヌケの良い音を録ることができました。 最近のバス・ドラムや低音楽器には、アナログ卓とテープを使っていたころのような、粘りのある濃密な音が求められているように感じます。本機はそのような現場の要望に応える、数少ないバス・ドラム用マイクの1本となるかもしれません。 (サウンド&レコーディング・マガジン 2013年6月号より)
AKG
D12 VR
56,700円
▪形式/ダイナミック型 ▪指向性/単一 ▪周波数特性/17Hz〜17kHz(±2dB) ▪最大音圧レベル/164dB SPL ▪出力インピーダンス/200Ω以下 ▪外形寸法/101(W)×125(H)×66(D)mm ▪重量/500g