使い勝手がさらに向上しエフェクトの強化も図られたSonarの最新版

CAKEWALKSonar X2 Producer
 9月にアメリカで発売されたSonar X2が、国内でも発表されました。前バージョンであるSonar X1で進化を遂げたGUIや諸機能がまたもやアップデート。さらに、最高64ビット/384kHzのオーディオに対応しました。この変革は"音楽制作"という行為そのものが趣味や娯楽だけにとどまらず、何らかの高みに達するのではないか!?という予感さえ抱かせます。そのとき一番アツいものって、どんどん変化/進化してくものですからね。ここでは、激動のDAW業界で劇的な変化を遂げたSonar X2について見ていきます。

複数のオートメーションやテイクが
一覧表示&編集可能に


Sonar X2の画面を初めて見た瞬間に思ったのは"視認性が大幅に向上されている!"ということ。GUIはあくまで見やすく合理的で、ひたすら直感的に操作できます。例えばMIDIクリップ右端のアイコンをクリックすると、ピアノロールや譜面など、さまざまなビューへ簡単に移動できるようになりました(画面①)。また新たに追加されたオートメーション・レーンでは、オーディオ/MIDIクリップを問わず、クリップそのものとオートメーションを分けて表示可能(画面②)。そのクリップにひもづくオートメーションを個別に表示/編集できるようになったので、一覧性も良好です。これまでは各種オートメーションが1つのエリア内にしか表示できなかったため、複数のオートメーションが重なっていたりすると"こっちのオートメーションじゃなくて、あっちのオートメーションがいじりたかったのに! キーッ!"という地味なイライラが募ったりしました。でもオートメーション・レーンでそれも解消され、作業がスムーズに。 121201-sonor-1▲画面① Sonar X2では、MIDIクリップ右端のアイコンをクリックするとピアノロールや譜面、MIDIイベント・リスト、シーケンサーの各種画面に移動できるメニューが表示される 121201-sonor-2▲画面② オーディオ/MIDIトラックにおいて、各種オートメーションを個別のエリアに分けて表示/編集できる機能=オートメーション・レーン。Sonar X2では、数多くのパラメーターに対してオートメーションが書けるまた、Sonarでは"トラック・レイヤー"という機能を使用することで、1つのトラック内に複数のテイクを重ねて録音することができます。従来は各テイクを重ねてしか表示できませんでしたが、Sonar X2には"テクノ・レーン"が新設され、先ほどのオートメーション・レーンと同様の一覧性で各テイクを見ることができます。トラック制作や仮歌録りを含むすべての作業をSonarでやってしまう僕としては、録ったテイクが縦にズラっと並んで簡単に聴き比べられるテクノ・レーンはかなりありがたいです。ババっとたくさん録って、後から選んでいく作業が簡単になったので"テンションが上がっているうちに作り終えることができるぜー!"という勇気がもらえます。Sonarでは以前のバージョンから"ここら辺に音を配置したい"と思っていた位置にクリップを動かしていくと、あらかじめ設定しておいた分解能に従って、スイーッとグリッドに吸い付いてくれる"スマート・グリッド"という機能がありました。画面をズーム・インするほどクリップを細かく動かすことができ、ズーム・アウトした状態ではザックリとした動きになるのです。このあんばいが以前のバージョンより、とってもちょうど良い感じになりました。"そっちに吸い付いちゃダメ"というミスも少なくなりそうです。僕は曲作りの中でクリップを移動させることが多いのですが、ちょっとした操作ミスがあったにもかかわらず作業を進めてしまい、最後になってガビーン!という事故が多発していました。今回さらに細かくクリップが動かせるようになったので、こうしたミスも減るでしょう。心憎いアップデートですね。クリエイターの皆様が最もよく目にするであろう、ピアノロールにもうれしい改善が見られます。マウス・オーバーした音程は色が変わるため、今どの音を編集しているかが分かりやすくなったのです(左ページのメイン画面)。これは地味に便利です。僕なんか今まで左側の鍵盤の絵から指をスーッとスライドさせて"えっと......あ、B♭ね"とかやっていましたから。指でなぞる必要もないので、ディスプレイも汚れませんよー(笑)!これらのアップデートでは機能というよりも使い心地がブラッシュ・アップされている印象なのですが、"使い心地が良い"="頭の中で鳴っている音をSonarにイチ早く受け渡すことができる"、そして"見た目が分かりやすい"="自分がSonarに受け渡した事柄を吟味しやすい"というシンプルな図式が、ユーザーのモチベーション・アップに直結すると思います。このように、細やかでありつつも大きな意味のある改善こそ、ユーザーは敏感に感じ取るものだと思います。

アナログ卓シミュレーターやR-Mixなど
多数のエフェクトを新搭載


さて、Sonarでは画面の左端に配置される機能が段々と豪華になっている印象がありますが、今回もスゴいです。Sonar X1で初めて実装された強力なプラグイン型チャンネル・ストリップ、Pro Channelにも当時はかなり驚いたものですが、今回はFX Chain Module/Console Emulatorという2種類のモジュールが追加されています。FX Chain Moduleは、Sonar X1でおなじみのFX ChainをPro Channelに組み込んで使えるというもの。FX Chainでは複数のプラグインを好きにルーティングして、1つのマルチエフェクターとして扱えます。また、使用エフェクトの任意のパラメーターをアサインできるコントローラーが装備されており、組み合わせたエフェクト群+設定したパラメーターというプリセットとして保存することも可能。例えば、ボーカルなど"いつも大体こんな感じ"と決まっているソースに関しては、あらかじめ作っておいたプリセットをロードして微調整するだけで済みます。一方、Console Emulatorは非常にシンプルなGUIのアナログ・コンソール・モデリング(画面③)。S/N/Aという3タイプを選んで使用でき、インサートしたトラックにアナログ的な温かみを添えてくれます。操作法もシンプルで、ツマミがたったの2個! STYはツマミの少ない機材が好きなので、こういった"ツマミ回したらエエ感じになるねん"というエフェクトにはめっぽう弱いですねん。というのは置いといて、Console Emulatorを使えば、いろいろなシンセを使ったせいでバラつきの出たトラックにまとまりを与えたりできそう。また過大入力して、あえてひずませてみたりなど、さまざまな使い道がイメージできます。 121201-sonor-3▲画面③ 新たに搭載されたプラグインConsole Emulatorはアナログ卓のモデリング。S/N/Aの3種類が用意されており、画面はSとなっている。ちなみに、Sonar X2ではコンピューターのCPUパワーが許す限り無制限にプラグインが使えるさてさて、新しいエフェクトはまだまだあります。今回はリバーブのBreverb Sonarやアンプ・モデリングのTH2 Producerなど、既存のエフェクトとは毛色の違ったものが追加されています。中でもグッときたのが、やっぱりR-Mix Sonar(画面④)。これは2ミックス内にある特定の楽器やボーカル"のみ"をキレイに消したり抜き取ったり、抜いたものにエフェクトをかけたり、タイム・ストレッチやピッチ変更が施せるという、サンプリング/リミックスなどを行う人には一日中触っていても飽きないであろう神エフェクト。R-Mixは、去年ROLANDから単体製品として発売されたものですが、触ってみないと良さが分からないエフェクトという気もするので、Sonarに搭載されることで間口が広がるのは素晴らしいと思います。 121201-sonor-4▲画面④ Sonar X2には、オーディオ解析ソフトのROLAND R-Mixがプラグインとして標準搭載されている。2ミックスを周波数/定位/音量という3パラメーターで分析でき、音楽を構成するさまざまなサウンドを視覚的に表示可能だ資料によると、今回のアップデートでは100以上もの機能が追加されているそうです。クリエイターが向き合うことの多いMIDIやオーディオに関する煩雑な作業をよりスピーディに、簡潔に行うためのアイディアが詰まっています。Sonar X2は使ってみる価値、かなりあると思います。(サウンド&レコーディング・マガジン 2012年12月号より)
CAKEWALK
Sonar X2 Producer
オープン・プライス (市場予想価格/80,000円前後)
▪Windows/Windows 7 SP1以降(32/64ビット)、2.6GHz以上のプロセッサー、50GB以上の空き容量を持つSATA接続のハード・ディスクまたはSSD(ハード・ディスクの場合は7,200回転以上を推奨)、2GB以上のRAM