マルチカラー・パッド搭載で操作性が向上したビート・メイク・マシン

NATIVE INSTRUMENTSMaschine MK2
 DJソフトウェアから映画音楽向けの音源まで幅広いラインナップをそろえ、ソフトウェア音源の総合メーカーと言っても過言ではないNATIVE INSTRUMENTSのビート・マシン=Maschi neの新モデルMaschine MK2とMaschine Mikro MK2(写真①)がリリースされ、それに合わせてMaschineソフトウェアもバージョンが1.8となりました。筆者も愛用するMaschineですが、その最新モデルを早速チェックしていきましょう。

_YK42744c▲写真① Maschine Mikro MK2(36,800円)。Maschine MK2とともにカラーはブラックとホワイトの2バージョンがある

16のマルチカラー・パッドを搭載
6.5GBの膨大なサンプル・ライブラリー


MaschineはAKAI PROFESSIONAL MPCシリーズにも似た16個のパッドを備えるハードウェアのMaschineコントローラーと、Maschineソフトウェアを組み合わせて使うハイブリッドなタイプのサンプラーです。主にビート・メイクに特化していますが、ソフトウェアはバージョン1.6からVST/Audio Unitsプラグインのホスト機能を備え、1.7からはKompleteシリーズの音源も統合されて、音源部分が強化されました。Maschineソフトウェア1.8(画面①)はWindows 7およびMac OS X 10.6以降に対応し、スタンドアローンおよびVST/Audio Units/RTASプラグインとして動作し、VST/Audio Unitsプラグインでは64ビット・ネイティブに対応しています。ちなみにMaschineソフトウェアはハードウェアをつながなくても起動可能です。 MaschineSC▲画面① MaschineソフトウェアのGUIでまず目を引くのはパッドのカラーリングが可能になった点。ほかにはタイム・ストレッチとピッチ・シフト機能を備えたり、新しいエフェクトの追加など、細部をブラッシュ・アップしたバージョン・アップと言えるMaschine MK2コントローラー(以下Maschine MK2)は、目を引く16のマルチカラー・パッド/2つのLCDディスプレイ/ページやパラメーターなどを切り替える47のボタン/パラメーターのエディットに使用する8つのノブ/1つのマスター・プッシュ・エンコーダーを搭載しています。一方、Maschine Mikro MK2コントローラー(以下Mikro MK2)は、同じく16のマルチカラー・パッドと1つのLCDディスプレイ/28のボタン/1つのマスター・プッシュ・エンコーダーと操作子は少なくなりますが、ハードウェアからアクセスできるパラメーター/ソフトウェアの機能/ライブラリーは同様です。なお、Mikro MK2はMIDIインターフェース機能が無いので、外部MIDI機器との連携を考える方は要注意です。さて、Maschineと言えば膨大なプリセットが特徴です。6.2GBのサウンド・ライブラリーには、326のドラム・キット/388のインストゥルメント/400以上のループ/約7,000のワンショット・サンプルと、クオリティの高い膨大なライブラリーに加えて、今回のバージョン1.8からはMassiveも付属します。ダブステップ系クリエイターの間で人気があり、抜けが良くて力強い音でモジュレーションが柔軟なため、ベースはもちろんリードやパッドにも使えます。おまけにKomplete Elementsも付属するので、Maschineが初めての制作マシンになったとしても音源には困らないでしょう。

滑りの良いパッドはたたき感も向上
カラー表示によって操作性もアップ


それでは実際にMaschine MK2をパソコンに接続してMaschineソフトウェアを起動してみましょう。パッドやボタンは滑りの良い材質に変更され、ほど良く硬い感触ですが指が痛くならず、指にまとわりつく感じも無いのでたたきやすいです。初代Maschineのときから十分満足できるクオリティでしたが、Maschine MK2はさらにその上を行く仕上がりです。また、パッドがカラー表示になったので、キックやスネアの楽器ごとに色を指定する使い方はもちろんのこと、シーンの切り替え時にブレイクのシーンは赤と設定すれば、シーン・ボタンを押すと設定したパッドが赤く光るので視認性も向上します。また、グループごとにもパッド・カラーを変えられるので、自分が今どのグループを選択しているか一目瞭然(りょうぜん)になりました。さらにMaschineで特筆すべきはハードウェア・ライクな操作性です。使いやすく配置されたボタンと8個のノブを組み合わせて操作すると、まるでハードウェアのサンプラーを触っているかのように楽しく音作りができます。動作は軽快でレスポンスも良く、パラメーターを変えるとサウンドがすぐに追従するのも快適です。さらにMikro MK2も試してみました。こちらはMaschineよりもサイズは小ぶり。厚みはあるものの、他社の16パッドMIDIコントローラーとあまり大きさは変わりません。パラメーターのエディットなど細かい作業も、フロント・パネルで操作する分、階層は深くなりますが、操作しやすいように考えて作られていて、意外にもサクサクとエディットできました。Maschine MK2とMikro MK2の違いはコントローラー・サーフェスだけなので、どちらを選ぶか悩むところですが、エディットはパソコンでするという方や、エディットせずにプリセットで使う派の方はMikro MK2で十分でしょう。個人的には操作感が気持ち良いMaschine MK2の方をオススメします。

ブラウズしやすく改良したエンコーダー
オフライン・タイム・ストレッチを新搭載


パッド部分以外を初代Maschineと比較すると、クリック式のマスター・プッシュ・エンコーダーが搭載されたことが挙げられます。特にサンプルをブラウズするとき、初代Maschineだとサンプルの選択とロードが違うボタンだったので、大量のプリセットをブラウズするときにはストレスを感じましたが、MK2ではプッシュ・エンコーダーで回してプッシュすればロードできるようになったので、ブラウジングがスムーズになりました。特にMaschineはプリセットが多いのでこういう地味に効く改良はうれしいですね。また、初代MaschineにはVolumeやSwing、Tempoといった"うっかり触ると困るパラメーター"に独立したノブがありましたが、これが逆に誤作動の元にもなっていました。それが本機よりボタンで切り替えてマスター・プッシュ・エンコーダーで調整する形に変更。また、ブラック・ボディにはノブの周りが白くペイントされて視認性も向上しています。初代Maschineは黒の筐体に黒のノブだったのでたまに見失いましたが、ちょっとした工夫で随分使いやすくなるものです。こうやってハードウェアの変更点を見ていると、奇抜な新機能よりもユーザーの要望に応えつつ、細部がブラッシュ・アップしている感じで、まっとうに進化を遂げたと言えるでしょう。内蔵エフェクトはベーシックなものから飛び道具まで19種類と幅広くそろえていて、種類も満遍なくバランスが取れています。パラメーターの数はさほど多くないので、凝った音作りや自分のお気に入りのプラグインをかけたい場合は、外部プラグインも使用できます。Maschineソフトウェア自体がプラグインのホストとなるので、パラアウトなどの面倒くさい設定は不要。バージョン1.8からトランジェントを調整するTransient Masterをはじめ、アナログらしいウォームなコンプレッションをかけるTape SaturatorとTube Saturatorなどのエフェクトが追加されています。さらにバージョン1.8より待望のオフライン・タイム・ストレッチ機能も追加されました。別のアプリケーションを立ち上げることなくタイム・ストレッチできるのは快適で品質も必要十分。長さを維持したまま音程の変更も可能で、サンプルのキー合わせが楽になりました。こうしてみるとMaschineはもはや単なるドラム・サンプラーではなく、多機能グルーブ・マシンに進化した印象でした。また、初代MaschineとMK2シリーズはソフトウェア的には機能の差はないので、安易にユーザーを切り捨てない姿勢も評価できます。進化し続けるMaschineの今後が楽しみですね。 _YK42769a ▲Maschine MK2のリア・パネルにはUSB端子のほかにMIDI IN/OUTが装備されるサウンド&レコーディング・マガジン 2012年12月号より)
NATIVE INSTRUMENTS
Maschine MK2
62,800円
●外形寸法/320(W)×65(H)×295(D)mm ●重量/2.1kg

▪Mac/Mac OS X 10.6.8以上(10.7対応)、IN TEL Core 2 Duo 2GHz以上、2GB以上のRA M、11GB以上のハード・ディスク空き容量、動作フォーマット:VST/Audio Units/RTAS/Core Au dio/スタンドアローン ▪Windows/Windows 7(最新Service Pack、32ビット/64ビット対応)、INTEL Core 2 DuoまたはAMD Athlon 64 X2、2GB以上のRAM、11 GB以上のハード・ディスク空き容量、動作フォーマット:VST/RTAS/ASIO/WASAPI/スタンドアローン