クラスDアンプを搭載した軽量タイプのPA用パワード・スピーカー

JBL PROFESSIONALPRX615M
PA系の音響製品だけでなく、高級オーディオ〜シネマ〜設備用途など幅広いラインナップを持つスピーカー・ブランドの老舗JBL PROFESSIONALから、可搬性・効率の優れたPA用パワード・スピーカーPRXシリーズが登場。今回はその中でも15インチLF×1&1.5インチHF×1のモデル=PRX615Mをチェックしてみた。

LF500W+HF500Wのバイアンプ方式
中高域に元気のあるキャラクター


PRX615Mの第一印象は屈強なルックスだが、実際に箱から出してみると、その軽さに驚く。重さは19.7kgなので、1人でスピーカー・スタンドに立てる際も、楽に設置できるだろう。またスタンド・マウント時は水平と下向き約10度の設置が可能。また正面から見て上下左右に2カ所とリア1カ所にM10規格のソケットがあるので、固定設備につるすこともできる。また横置きにすればウェッジ・モニターとしても使用可能だ。続いてリア・パネルを見てみると、大きなヒート・シンクにはAMCRONロゴが刻印される。スペックには"Crown Class D"でLF500W+HF500Wとあり、同社XLSシリーズで使われているテクノロジーのようだ。消費電力は600Wと、電源容量に余裕のない現場にもありがたい。入力はXLR/TRSフォーン・コンボで出力はXLR。入力感度はMic/Lineの切り替えができ、LEVELツマミでの調整も可能だ。加えてEQスイッチが付属し、Main/Monitorの2モードを切り替えられる。リミッター部にはDBX TypeIVを搭載し、あたかもHARMANグループ傘下のブランド競演のような様相を見せている。ではサウンドをチェックしていこう。まずは本機をスタンドに立てて、EQをMainにしてCDを再生。中高音〜高音が元気よく飛んできて、遠くまで届いてくれそうなキャラクター。低音はわりとタイトでキックのアタックが見えやすいので、ライブ・ハウスなどのメイン・スピーカーとして使用する場合は、会場サイズにもよるが、同シリーズのサブウーファーがあった方が良いかもしれない。続いてボーカルでチェックするとEQ無しでもフラットな印象。スピーチ用PAとしての用途であれば、200〜300人くらいの会場なら全然余裕といった感じの音量感だ。また、本機はバスレフ・ポートがリア側上部に付いているため、壁との距離で低音感が変わる。そのため、シチュエーションによって有効な設置方法を変えてみるのも良いだろう。

Monitorモードは若干控えめな印象
大音量でもLFとHFのバランスは良好


次にEQをMonitorにして床置きでチェック。中高域の印象もMainに比べて微妙に控えめな印象だが、このクラスが使用されるロケーションを考えたら十分なパワーだろう。音量を大きめに再生してみると、元気な高音に比べ、低音部でリミッターが先に入るが、たまに点灯する程度では変化はあまり感じなかった上、近くでは十二分な音量。今回チェックした環境では200Hz辺りの膨らみと、1〜2kHz位の若干のピーク、あとは出力が500Wもある元気なHFの高域ピークを少々落としたが、場所や設置方法によってはそのままでもいけるだろう。個人的にはもう少し低音がモリモリと来るとうれしいなと感じた。また、専用の18インチのサブウーファー(PRX618、PRX618-XLF)を使用する場合、サブに入力された信号がハイパスされて出力されるため、プロセッサーなども不要で使える。もちろんフルレンジで本機を使いつつ、のちにサブを足すというシステム・アップにも対応する。


本機はサイズの割には軽いので個人所有にも向くだろう。筆者が担当しているような打ち込みが混ざったバンドの場合、リハーサル・スタジオでドラムやアンプの生音に負けない音量でシーケンス・パートを流せない場合もあるので、そんな状況で本機を導入したいなと思った。

▼リア・パネル。上よりEQモード切り替えスイッチ(Main/Monitor)、インプット切り替えスイッチ(Mic/Line)、レベル、インプット(XLR/TRSフォーン・コンボ)、アウトプット(XLR)を備える




サウンド&レコーディング・マガジン 2012年10月号より)

撮影/川村容一

JBL PROFESSIONAL
PRX615M
141,750円
▪周波数特性/54Hz〜18kHz▪最大SPL/135dB▪アンプ出力/1,000W( 低域500W/ 高域500W)▪クロスオーバー周波数/1.8kHz▪外形寸法/429(W)×660(H)×414(D)mm▪重量/19.7kg