軽量でモバイル性に優れた2イン/2アウトのUSBオーディオI/O

FOCUSRITEScarlett 2I2
 筆者にとってFOCUSRITEと言えば、10年近く前に衝動買いしたマイクプリのVoicemaster Pro。これが当時リリースされていた同価格帯(10万円前後)モデルの中では一線を画す代物でして、特にヌケの良さ、クリアかつ低ノイズなサウンドに衝撃を受けたことを思い出します(いまだに現役!)。そんな同社が満を持して送り出した、2イン/2アウトのUSBオーディオ・インターフェースScarlett 2I2。マイクプリにもがぜん期待が高まります。それでは早速チェックしていきましょう!

最高で24ビット/96kHzに対応
ミックスでも重宝する分離の良い音質


本製品を開封してまず目を奪われるのは、コンパクトなサイズとアルマイト処理されたアルミ・ボディ。何よりも軽いので持ち運びの際は、本当に重宝しそうです。創造力をかき立ててくれそうな、ボディの鮮やかなワインレッドも、この価格帯にありがちなチープさを感じさせない仕上がりで好感が持てます。


入出力系統を見ていくと、リア・パネルにはライン出力(TRSフォーン)×2とUSB端子のみのシンプルな構成。バス・パワーで駆動するので電源も不要で、パソコンさえあればどこでも録音/プレイバックが可能です。フロント・パネルにはXLR/TRSフォーンのいずれに対応するNEUTRIK製コンボ入力端子を2系統装備。もちろんファンタム電源を搭載しているので、マイクの種類を選ばず使用できます。さらにエレキギターやベースなどの楽器とライン入力を切り替えるライン/インスト・スイッチも装備し、フロント・パネル上だけでサクサクとセッティングが進められます。ほかにも操作感が良好な、大きめに作られたモニター・ノブ、独立したレベル・コントロールが可能なヘッドフォン・アウトなど、シンプルかつ作業効率の良いレイアウトになっています。


それでは実際に本機に触れていきましょう! まずパソコンにドライバーをインストールします。動作条件はAPPLE Macの場合OS Ⅹ 10.6.5以上(10.7にも対応)、WindowsではWindows XP SP3と7に対応しますが、Vistaは非対応なのでご注意ください。続いてUSBケーブルでパソコンとつなぎ、ライン・アウトからモニター・スピーカーへ接続してサウンド・チェックします。さすがに24ビット/96kHz対応モデルというだけあり、低域から超高域までを余裕でカバーする音質でした。音像自体の分離も良いのでミックスでも活躍しそうです。また、全体的に聴いていて気持ち良くなれる音なので、リスニング用途としても重宝するでしょう。


クセがなくヌケの良い録り音
入力音の直接モニタリングが可能


続いてレコーディングで録り音をチェックしていきます。本機の高品質マイクプリを試すべく、コンデンサー・マイクを使ってアコギを録音してみました。まず48VスイッチをONにして、ゲイン・ノブで適正レベルを調整します。このゲイン・ノブがユニークで、入力信号が入るたびにノブ周りに配置されたLEDが点灯します。信号がクリップした状態だとレッドに光り、徐々にゲインを減らすとオレンジに変わり、適正レベルになるとグリーンといった具合に、目で確認しながらしっかりと録音レベルを調整できます。歌やアコギのようにレベルが安定しづらい録音時にうれしい機能だと思います。


早速録った音をプレイバックしてみると、やはりFOCUSRITEの音がします! 例えるならば、音につやがあると言うか、立体的で目に見えそうな音像です。中〜高域の抜けが良く、アコギのストロークなどにはもってこいでしょう。特徴的なクセはありませんが、楽器が混ざった状態でもしっかり主張するサウンドです。コンデンサー・マイクで収音した弦を擦る音や、ボディに指が当たる音も忠実に再現されている上に低ノイズなので、これは使える!という印象です。


使えると言えば、フロント・パネルに装備されたダイレクト・モニター・スイッチも見逃せません。DAWのレコーディングでネックとなるレイテンシーですが、この機能によりDAWを介さず本機で直接入力ソースをモニターすることができるため、"ゼロ・レイテンシー"を実現しています。アコギのように、モニター音よりも楽器の生音の音量の方が大きい場合は特に必要ありませんが、歌やエレキギターのようにモニターの遅延が気になるレコーディングでは、威力を発揮してくれることでしょう。スイッチのON/OFF操作のみで直接モニタリングが可能なので、ここは用途に応じて使い分けたいところです。


最後に同梱品の紹介もしておきます。本機にはABLETON Live LiteとScarlett Plug-In Sui
teが同梱されているので、DAWソフトを持っていなくても、すぐにレコーディングを楽しめます。Scarlett Plug-In Suiteはコンプレッサー、EQ、ゲート、リバーブといった制作に必須なエフェクターが一通りそろっており、もちろん主要DAWに対応。それぞれ実戦で使えるものばかりですが、特にゲートのえげつない効き方(良い意味で)にはうならされました。


 


総評としては、価格設定を間違えたのではと心配になるぐらい高品位なオーディオ・インターフェースという印象を受けました。マイクプリの特性はかなりナチュラルなので、クセが無くて物足りないと感じる人もいるかもしれませんが、この価格帯からしたら間違いなくトップ・クラスの音質だと思います。録音やDAW初心者の方はもちろん、これから小型のオーディオ・インターフェースを探そうと思っている方には、迷わずお薦めしたいアイテムです!



Scarlett_2i2_rear.jpg



▲リア・パネルはUSB端子とライン・アウト(フォーン)×2とシンプルな構成


サウンド&レコーディング・マガジン 2012年5月号より)



FOCUSRITE
Scarlett 2I2
オープン・プライス (市場予想価格/ 12,800円前後)
●接続タイプ/USB ●オーディオ入出力数/2イン、2アウト ●最高ビット&レート/24ビット、96kHz ●最大入力音圧/130dB SPL(@1kHz) ●外形寸法/175(W)×45(H)×100(D)mm ●重量/580g

●Mac/Mac OS Ⅹ 10.6.5以上(32/64ビット)、10.7対応 ●Windows/Windows XP SP3(32ビット)/7(32/64ビット)※Vista非対応