指先で直感的な操作が行えるオーディオI/O内蔵のDJコントローラー

NOVATIONTwitch
DJのデジタル化が進みはや数年、ソフトは一通り出そろった感があり、その後はDJコントローラーなどハード面で各社が競い合っていますが、LaunchPadやDicerなど、ほかとはひと味違う製品を発表しているNOVATIONから、これまたひと味違ったTwitchが発売されました。

コンパクトな設計ながら操作性を考慮した
バランスの良いレイアウトを実現


TwitchはSERATOとのコラボレーションによって開発されたDJシステム。本機にはDJソフトのSERATO Itchが付属しており、その機能を余すところなくコントロールできるオーディオ・インターフェース搭載のDJコントローラーです。また、TwitchはABLETON LiveやNATIVE INSTRUMENTS Traktorのコントローラーとしても機能します。その際は、NOVATIONのサイト(www.h-resolution.com/Novation/Twitch_Download.html)からマッピング・ファイルがダウンロードできます。最近のDJコントローラーはプラッターやジョグ・ホイールがあり、大きくて重量があるもの、もしくは軽量化した代わりにインターフェース機能が無いものなど、両極端な製品が多かったように思います。しかしTwitchに装備された独自のタッチ・コントローラTOUCHSTRIP(後述)は、本体のコンパクト化を実現しつつも十分な操作性を確保し、これまでに無い画期的なパフォーマンスができるようです!というわけで、はやる気持ちを抑えつつ、まずは開封の儀式から。パッケージには本体、Itch(最新バージョンはserato.com/itchでアップデート可能)、USBケーブル、NATIVE INSTRUMENTS Traktor用のオーバーレイ・シートとシンプルな内容。完全バス・パワー駆動なので、電源アダプターも必要ありません。本体は堅固なアルミ・パネルを採用したタフな設計の上、とにかく軽く重さはなんと1.8kg! 今回Itch用に使用するAPPLE MacBook Proの15インチ・モデルと大きさはほぼ同じでありながらそれよりも軽いので、PCバックにも収納できるし、狭いDJブース内にも設置可能です。オーディオ・インターフェース部は、24ビット/44.1/48kHzに対応、メイン出力はTRSフォーン端子を採用しているほか、ブース出力(RCAピン)、2系統のヘッドフォン出力(ステレオ・ミニ/フォーン)、専用のゲインを備えたマイク入力(フォーン)とAUX入力(RCAピン)も搭載。プラッターを省いたスペースには、左右8個ずつのトリガー・パッド、そしてその上にTOUCHSTRIPがあり、Itchの操作に特化しつつもクロスフェーダーや縦フェーダー、3バンドEQ、チャンネル・エフェクトなどDJプレイに必要な各種ボタンやツマミをバランス良く配置しています。

独自コントローラーTOUCHSTRIPは
マルチタッチのため多彩な表現が可能


それでは実際に本機を使用していきます。まずは、Itch(画面①)をインストールしたコンピューターと本機をUSBケーブルで接続し、Twitchの出力端子からパワード・スピーカーに直結、で完了! これだけでどこでもDJできるんですから本当にすごい時代になったものですね。ハード・ケースでターンテーブルとミキサーを運んでいた時代はどこへ......。さてItchを立ち上げるとシンプルで見やすい画面が表示され、すべての操作はTwitch側で行うことが可能。マウスやキーボードに触る必要はありません。 201111_Twitch_01.jpg▲画面① SERATO Itchの全景画面。画面中央がプレイリストで、その下にはデッキ1(左)とデッキ2(右)が並ぶシンプルで分かりやすいビジュアルだ。このItchの全操作はコントローラーのTwitchで行うことが可能 今回はAPPLE iTunesで管理している楽曲ファイルをパネル右上にあるブラウズ・セクションのスクロール・ノブで選びデッキ1(左)かデッキ2(右)にロードし、各種機能をチェックしていきます。まずデッキ1に曲をロードし、PLAYボタンを押して気づいたのは"ボタンを押した感触がバッチリ"ということ。レスポンスが非常に良いのですが、2度打ち(1度押して2回音が鳴ってしまう)なんてこともありません。そんなことどうでもいいと思うかもしれませんが、CUEボタンやトリガー・パッドなど、今後何千回も押すことになるボタンの押し込み感や固さなどはパッドを扱う上でとても重要な要素です。次にデッキ2に曲をロードし、ミックスしてみます。ItchのBPM検出機能により、左右の曲のテンポはSYNCボタンを押すだけで合わせてくれるので、あとはモニター側の曲をタイミングよく再生し、クロスフェーダーを反対側に切ればミックスは完了です。DJミックスの工程が格段に楽になるシンク機能を嫌う人も多いですが、テンポ合わせがDJの仕事ではないので、個人的には便利な機能はジャンジャン使ってしまえばいいと思っています。その分フロアの雰囲気に注意を払える時間が作れますからね。ビート・シンク機能が必要ない、もしくはテンポが一定でない生演奏の曲をミックスする際は、従来のDJと同様にヘッドフォンでモニタリングしながら、手動でPITCHノブを操作し、外音に対してテンポを追従させていきます。そういったとき、なるべく正確にテンポを合わせていても、リズムの揺れやズレのせいで、2曲のテンポがずれてくる場合がありますよね? ここで活躍するのが本機最大の特徴であるタッチ式のトラック・コントローラーTOUCHSTRIP。再生中にTOUCHSTRIPの上にあるSWIPEボタンを押すと点灯し、この状態でTOUCHSTRIPを操作するとトラックを前後にナッジ(微調整)できるので、ターンテーブルでテンポを合わせる際にプラッターやレコードを触って微調整するのと同じ感覚で操作することができます。このTOUCHSTRIPはマルチタッチ・パッドなので多彩なジェスチャーでトラックを操作することが可能。今度はSWIPEボタンをもう一度押して点滅させた状態では、フォワード/リバースといった簡単なスクラッチ、バック・スピンなど、プラッターを前後に動かすのと同じ効果が得られます。さらにDROPボタンを押した点灯モードでは、レコードに針を落とすように任意の個所から再生することができます。この状態でもう一度DROPボタンを押すと点滅モードになり、TOUCHSTRIPの中央から右側に行くほど早送りされ、逆に中央から左側に行くほど巻き戻しされます。これらの機能を使うことで、プラッターが無くてもメリハリのついたDJプレイが可能です(写真①)。 201111_Twitch_02.jpg▲写真① 指で操作しているのがTOUCHSTRIP機能。写真上の赤いボタン(SWIPE)が点灯した状態ではテンポのナッジ操作ができ、点滅した状態ではスクラッチ効果が得られる。またSWIPEボタンの右にあるDROPボタンの点灯時は、任意の場所に瞬時にレコード針を落とすような効果になり、点滅時はTOUCHSTRIPの中央から右側へ行くほど高速再生される。逆に左側に行くほど逆再生(巻き戻し)される仕組みだ 

4種類のパフォーマンス・モードを搭載
スライサーは即興でビートを作れる


次にパフォーマンス・モードをチェックしてみます。このモードには、ホット・キュー、オート・ループ、ループ・ロール、スライサーの4つが用意されています。ホット・キュー・モードでは、8つのキュー・ポイントを設定し、1〜8のパッドを使いサンプラー感覚で操作することができます。試しに曲中のキック、ハット、スネアの3カ所をパッドにアサインしてドラム演奏してみましたが、パッドの反応がバッチリなので、DJプレイの中にどんどん取り入れていけそうですし、8つ設定できるのもうれしいところです。オート・ループは特定の範囲をループ再生するモードで、1〜8のパッドで1/4拍〜8小節など異なる長さのループをワンタッチで組むことができるほか、前述のTOUCHSTRIPを使えば、マルチタッチ・スクリーンで写真の拡大縮小をするかのごとく、2本の指でループの長さを自由自在に変えることが可能です。ループ・ポイントをトラックに記憶させ、指定したループ・ポイントへすぐさまアクセスすることもでき、直感的にプレイに反映させていけます。ループ・ロールは、ループ再生している間も曲が進んでいるので、パッドを離すと押していた実時間分だけトラックも進みます。歌のある曲だったり原曲の構成を崩さずにプレイしたい場合はこのモードがお勧めです。そして最後のスライサーは、オーディオを自動でスライス(チョップ)し、面倒なパッド割当てをすることなく、リアルタイムで新しいグルーブを生みだすことができるTwitch独自のユニークな機能。これは再生中にSLICEボタンを押すと自動で2小節分が8つに切り分けられパッドにアサインされるというもの。それらをランダムにたたいて並び順を変えれば、新しいリズム・パターンやフレーズを瞬時に作り出すことができちゃうんです!特にブレイクビーツやダブステップ系のDJに重宝されそうな機能です。またループ範囲を指定してからスライサーを実行するとループした範囲をスライスしてくれるので、ループしたままフレーズを自由に変えることができるのもポイントですね。では次にエフェクト部を見ていきましょう。Itchに搭載されたエフェクトは、Twitchで制御できるようになっています。外部入力やマイク入力も処理可能なマスター・エフェクト(12種類)に加えて、左右のデッキにも個別にエフェクトをアサイン(7種類)できるので、これらを組み合わせて独創的なエフェクトを作り出すことも可能です。さらに各デッキにはFADER FXというモードが搭載されていて、FXボタンをONにすると縦フェーダーでボリュームだけでなく、エフェクト量の調整ができます。例えば徐々に縦フェーダーを下げ、ディレイ音のみを残して次の曲につないだり、フェーダーの上下でフィルターの開閉をして、抑揚をつけるなんていうことも簡単にできちゃいます。縦フェーダーのストロークが長いのはロング・ミックス用かと思っていましたが、FADER FXの操作のためなのかもしれません。そして最後に、DJにとって大切な使用感についての感想を幾つか。まずは一番重要な音に関してですが、デジタル臭さや高域の無駄なシャリシャリ感なども無く、耳に痛くない素直な出音。ヘッドフォン出力に関しても、十分に出力が確保されているので大音量の外音にも負けないモニタリングができました。また本機にはLEDバックライト付きのボタンが採用されていますので、クラブなど暗い環境での視認性もバッチリです。ここまでテストしてみて、独自のタッチ・コントローラーはもちろん、総合的に見ても操作性に優れたDJコントローラーだと言えるでしょう。 201111_Twitch_rear.jpg▲リア・パネル。左からマスター出力L/R(TRSフォーン)、ブース出力L/R(RCAピン)、ブース・アウトプット・スイッチ(メイン/キュー)、AUX入力L/R(RCAピン)、AUXゲイン、ダイレクト・モニタリング・スイッチ、USB端子。なお、マイク入力(TRSフォーン)、ヘッドフォン出力(ステレオ・ミニ/フォーン)はフロント・パネルに装備 
NOVATION
Twitch
オープン・プライス (市場予想価格/52,500円前後)
▪外形寸法/350(W)×65(H)×275(D)mm▪重量/1.8kg

▪Mac/Mac OS Ⅹ 10.5.8、INTEL Core 2 Duo 1.8GHzのCPU、1GB以上のRAM、OS Ⅹ 10.6、INTEL Core 2 Duo 1.8GHz(32ビット)/2.4GHz(64ビット)以上のCPU、1GB(32ビット)/4GB(64ビット)以上のRAM ▪Windows/Windows XP(32ビット/64ビット)/7(32ビット/64ビット)、INTEL Core 2 Duo 1.8 GHz(32ビット)/2.4GHz(64ビット)以上のCPU、1GB(XP)/2GB(7)/4GB(7/64ビット)以上のRAM