音源のポテンシャルを最大限に引き出す
アコースティック・ピアノを再現したタッチ
Oxygen 88はピアノと同じ音域である88鍵のキーボードに、9本のフェーダーと8つのノブ、6つのトランスポート・ボタンを中核として、全部で32系統のアサインが可能なコントローラーを搭載。また2つのサステイン・ペダルと1つのエクスプレッション・ペダルの接続も可能です。スペックだけで本機を見るとバランスは良いものの、さほど目立った特徴がないように見えるかもしれません。しかし実際に触れてみると、カタログやWebサイトの情報だけでは分からない、本機のポテンシャルに気づくはずです。
特筆すべきは新採用となった"グレード・ハンマー・アクション・キーベッド"という鍵盤のアクション・システムです。ここ数年のピアノやエレピ系音源の進化には目を見張るものがありますが、音源性能が幾ら上がってもレスポンスの良い鍵盤で演奏しなければ、そのポテンシャルを引き出すことはできません。本機はアコースティック・ピアノのように低域と高域で鍵盤の重さに違いをつけることで、この価格帯の製品としてはトップ・クラスのキー・タッチを実現しています。また88鍵という鍵盤数のメリットは、トランスポーズ無しで作業ができる点にあります。各楽器の音域が容易に把握できるため、制作時の作業効率が格段にアップするでしょう。
主要DAWに対応するDirect Link
重厚な操作感を持ったコントロール部
本機のもう1つの魅力は、シンプルで取り回しの良い操作性です。中でも新機能の"DirectLinkモード"は、対応DAWソフトウェアの基本操作を設定要らずで、各コントローラーに自動でマッピングしてくれます。主なDAWには一通り対応していますが、やはりコンビネーションが良いのはAVID Pro Toolsです。Pro Toolsのコントローラーとして本機を指定するには、10個あるプリセットのP10を選択すれば設定は完了。フェーダーはミキサー・フェーダー、フェーダー下のボタンはトラック・ミュートのオン／オフ、ノブはパン、トランスポート・ボタンはDAWの各トランスポートに自動的にマッピングされ、選択トラックの移動は左上部にあるトラック・ボタンで実行できます。MIDIトラックの場合は選択と同時に録音待機の状態になります。特に便利なのがトランスポート・ボタンで、キーボードの前に座ったときに、無理なく操作できる位置にあり、録音／再生や早送り／巻き戻しといった頻度の高い操作には、専用のボタンが割り当てられています。加えてボタン1つでノブをエフェクトやシンセなどのパラメーター・エディットに切り替えられるのも、気が利いています。ほかにもプリセットはXpand!2やHybrid、VelvetなどのAVID製品用のマッピングも用意。せっかく導入したDAWコントローラーの設定が面倒で、生かしきれないこともあると思うので、確実に操作環境が用意されているのはうれしい配慮だと思います。
さらにパネル・レイアウトの設計に余裕を持たせているため、ノブやフェーダーに十分な間隔があって操作しやすいです。重量のあるボディによる、安定したノブやフェーダーの操作感も地味ではありますが、大切なポイントです。
このように"本格的なピアノ・タッチのキーボード"と"使い勝手の良いDAWコントローラー"を一体化し、手ごろな価格で実現したのが本機の全容と言えます。このような演奏性能の高い鍵盤でハイクオリティな音源を鳴らすと、あらためて演奏する楽しさを実感できます。未体験の方はぜひ一度試してみることをお勧めします。
▼リア・パネル。右上部の左からACアダプター端子、サステイン・ペダル入力端子（フォーン）×2、エクスプレッション・ペダル入力端子（フォーン）、MIDI OUT、USB端子
（サウンド＆レコーディング・マガジン 2011年10月号より）
▪Windows ／Windows XP SP3/Vista SP1（32/64ビット）/7（32/64ビット）、800MHz以上のINTELまたはAMD製CPU/512MB以上のRAM（XPの場合）、1GHz以上のINTELまたはAMD製CPU/1GB以上のRAM/DirectX10以上（以上Vista/7の場合）▪Mac／10.5.8または10.6.4、INTEL Core Duo、1GB以上のRAM
