
十分なゲインを持つ入力
マイクプリは中域の張り出し感が特徴
最高24ビット/96kHzに対応し、8イン/2アウトのアナログ入出力を備えるScarlett 18I6。フロント・パネルにはマイク/ライン・イン(XLR/TRSフォーン・コンボ)×2が装備されています。この端子にはマイクのほか、シンセなどライン楽器の入力も可能。特に、バランス出力に対応した楽器を録音する場合、XLRケーブルでの接続がお勧めです。入力レベルに気を付ければ、かなりクリアに録ることができるからです。またこの端子はHi-Zにも対応。ただハイインピーダンス接続の場合、入力した音がややひずみっぽくなる印象です。とは言えエフェクティブな音質でもありますので、録音前に音色を調整すれば、面白い録り音が得られそうですね。なお、本機にはヘッドフォン端子(フォーン)も1基用意されています。リア・パネルにはライン・イン(TRSフォーン)×6やステレオ1系統のライン・アウト(TRSフォーン)を装備。このライン出力とヘッドフォン端子の音量ツマミがフロント・パネルに備えられており、スピーカーとヘッドフォンを接続することで、独立した2系統の音をモニターすることが可能です。なお、ヘッドフォン端子の出力音量は十分なもの。ライン・アウトの出力音量も同じ傾向ですが、付属のミックス・ソフトScarlett Mix Controlを使う場合はDAWソフトからの出力をやや下げ、同ミックス・ソフトの入力に余裕を持たせた方がベター。音の詰まった感じが緩和されるのです。デジタル入出力には1系統のS/P DIFイン/アウト(コアキシャル)が用意されるほか、ADATイン(オプティカル)も装備。ADAT出力を備えた同社マイクプリ、OctoPre MKIIなどをつなぐことで入力数を最大8ch増やすことができ、バンド一発録りなどのマルチマイク録音にも対応します。試しに2本のAKG C414を本機に接続し、オンマイクで声を録ってみました。マイクプリのゲインは十分で、性能の高さを感じます。また、その録り音には中域の気持ちいい張り出し感があります。一方、立ち上がりの早い音についてはスピード感があいまいで、音の連続性にやや欠ける印象。ですが、この価格を考えるとコスト・パフォーマンスはやはり高いと思います。なお、本機はUSBバス・パワーでの動作に対応していないため、付属の電源アダプターは必須です。
付属ソフト内に3系統のミックスを作れる
全入力を使っての録音も安定動作
ヘッドフォン出力を含むアナログ/デジタルを総合すると、最大18イン/6アウトの入出力数を有する本機。付属のミックス・ソフトScarlett Mix Controlを使えば、柔軟なルーティングを実現できます。このソフトは画面上のタブで切り替えて使える3つのミキサーを備えており、内部で3系統のステレオ・ミックスを作成可能。任意の入力信号の組み合わせやDAWソフトからの出力信号など異なるミックスを作り出せる上、本機のあらゆる出力へそれらを個別にルーティングできます。例えば、ギタリストが使っているヘッドフォン端子に"オケ小さめ/ギター大きめ"という音量設定のミックスを送りながら、モニター・スピーカーを接続したライン・アウトには異なるバランスのミックスを割り当てる、といった操作も可能です。本機はFireWireではなくUSB接続の多入力オーディオI/Oなので、使用前はスムーズに動いてくれるかやや不安でした。ですが、少なくとも私物のAPPLE MacProとINTEL Core 2 Duo搭載のノート・パソコンでは安定的に動作。全入力を使いSTEINBERG Nuendoに録音した際も、滞り無く動きました。このように良質な本機ですが、ABLETON Live LiteやNOVATION Bass Station、コンプ/EQ/ゲート/リバーブを含むプラグイン・バンドルFOCUSRITE Scarlett Plug-in Suiteなど、同梱ソフトも見逃せません。高い性能を手ごろな価格で購入できるScarlett 18I6。"本機で切り開ける世界が、その後の音楽制作の良きスタートになればいいな"と、思います。

▲リア・パネルには左からS/P DIFアウト/イン(コアキシャル)、DCイン、MIDI OUT/IN、USB2.0端子、ADATイン(オプティカル)、ライン・アウト(TRSフォーン)×2、ライン・イン(TRSフォーン)×6といった端子群が並ぶ
▪Windows/Windows 7(全バージョン)/Vista(32ビットのみ)/XP(SP3/32ビットのみ)▪Mac/Mac OS X 10.6.5以降