付属ソフトでの柔軟な操作が可能な18イン/6アウトのオーディオI/O

FOCUSRITEScarlett 18I6
本稿では、"これがきっかけで音作りの楽しさを知ることができる"という可能性を秘めたUSB 2.0接続のオーディオI/O、FOCUSRITE Scarlett 18I6を紹介します。思えば、僕が初めて購入したチャンネル・ストリップも同社のものでした。TrakMaster Proと名付けられたその製品は、楽器や音の鳴るものにしか関心が無かった当時の僕に"録音や音の出入口を工夫するのって面白い"と思わせてくれた一台です。そのころベーシストだった僕に、現在のキャリアであるエンジニアへの一歩を踏み出させてくれた同社の技術力。それはScarlett 18I6の拡張性が切り開く広い世界のイメージにつながっています。

十分なゲインを持つ入力
マイクプリは中域の張り出し感が特徴


最高24ビット/96kHzに対応し、8イン/2アウトのアナログ入出力を備えるScarlett 18I6。フロント・パネルにはマイク/ライン・イン(XLR/TRSフォーン・コンボ)×2が装備されています。この端子にはマイクのほか、シンセなどライン楽器の入力も可能。特に、バランス出力に対応した楽器を録音する場合、XLRケーブルでの接続がお勧めです。入力レベルに気を付ければ、かなりクリアに録ることができるからです。またこの端子はHi-Zにも対応。ただハイインピーダンス接続の場合、入力した音がややひずみっぽくなる印象です。とは言えエフェクティブな音質でもありますので、録音前に音色を調整すれば、面白い録り音が得られそうですね。なお、本機にはヘッドフォン端子(フォーン)も1基用意されています。リア・パネルにはライン・イン(TRSフォーン)×6やステレオ1系統のライン・アウト(TRSフォーン)を装備。このライン出力とヘッドフォン端子の音量ツマミがフロント・パネルに備えられており、スピーカーとヘッドフォンを接続することで、独立した2系統の音をモニターすることが可能です。なお、ヘッドフォン端子の出力音量は十分なもの。ライン・アウトの出力音量も同じ傾向ですが、付属のミックス・ソフトScarlett Mix Controlを使う場合はDAWソフトからの出力をやや下げ、同ミックス・ソフトの入力に余裕を持たせた方がベター。音の詰まった感じが緩和されるのです。デジタル入出力には1系統のS/P DIFイン/アウト(コアキシャル)が用意されるほか、ADATイン(オプティカル)も装備。ADAT出力を備えた同社マイクプリ、OctoPre MKIIなどをつなぐことで入力数を最大8ch増やすことができ、バンド一発録りなどのマルチマイク録音にも対応します。試しに2本のAKG C414を本機に接続し、オンマイクで声を録ってみました。マイクプリのゲインは十分で、性能の高さを感じます。また、その録り音には中域の気持ちいい張り出し感があります。一方、立ち上がりの早い音についてはスピード感があいまいで、音の連続性にやや欠ける印象。ですが、この価格を考えるとコスト・パフォーマンスはやはり高いと思います。なお、本機はUSBバス・パワーでの動作に対応していないため、付属の電源アダプターは必須です。

付属ソフト内に3系統のミックスを作れる
全入力を使っての録音も安定動作


ヘッドフォン出力を含むアナログ/デジタルを総合すると、最大18イン/6アウトの入出力数を有する本機。付属のミックス・ソフトScarlett Mix Controlを使えば、柔軟なルーティングを実現できます。このソフトは画面上のタブで切り替えて使える3つのミキサーを備えており、内部で3系統のステレオ・ミックスを作成可能。任意の入力信号の組み合わせやDAWソフトからの出力信号など異なるミックスを作り出せる上、本機のあらゆる出力へそれらを個別にルーティングできます。例えば、ギタリストが使っているヘッドフォン端子に"オケ小さめ/ギター大きめ"という音量設定のミックスを送りながら、モニター・スピーカーを接続したライン・アウトには異なるバランスのミックスを割り当てる、といった操作も可能です。本機はFireWireではなくUSB接続の多入力オーディオI/Oなので、使用前はスムーズに動いてくれるかやや不安でした。ですが、少なくとも私物のAPPLE MacProとINTEL Core 2 Duo搭載のノート・パソコンでは安定的に動作。全入力を使いSTEINBERG Nuendoに録音した際も、滞り無く動きました。このように良質な本機ですが、ABLETON Live LiteやNOVATION Bass Station、コンプ/EQ/ゲート/リバーブを含むプラグイン・バンドルFOCUSRITE Scarlett Plug-in Suiteなど、同梱ソフトも見逃せません。高い性能を手ごろな価格で購入できるScarlett 18I6。"本機で切り開ける世界が、その後の音楽制作の良きスタートになればいいな"と、思います。201109_Scarlett18I6_01.jpg

▲リア・パネルには左からS/P DIFアウト/イン(コアキシャル)、DCイン、MIDI OUT/IN、USB2.0端子、ADATイン(オプティカル)、ライン・アウト(TRSフォーン)×2、ライン・イン(TRSフォーン)×6といった端子群が並ぶ


 
FOCUSRITE
Scarlett 18I6
オープン・プライス (市場予想価格/35,000円前後)
▪アナログ入力/マイク/ライン/インスト・イン(XLR/TRSフォーン・コンボ)×2、ライン・イン(TRSフォーン)×6▪アナログ出力/ライン・アウト(TRSフォーン)×2、ヘッドフォン・アウト(フォーン)×1▪デジタル入力/S/P DIFイン(コアキシャル)×1、ADATイン(オプティカル/44.1〜48kHz:8ch、88.2〜96kHz:4ch)×1▪デジタル出力/S/P DIFアウト(コアキシャル)×1▪外形寸法/215(W)×45(H)×220(D)mm▪重量/1.5kg

▪Windows/Windows 7(全バージョン)/Vista(32ビットのみ)/XP(SP3/32ビットのみ)▪Mac/Mac OS X 10.6.5以降