シンベ/リズム・マシンの名機4種を再現したソフト音源パッケージ

D16 GROUPD16 Classic Boxes Collection
D16 GROUPはポーランドのミコウフという町に拠点を置くソフト・メーカーで、アナログ機材のバーチャル・インストゥルメント化製品などをメインにリリースしている。今回紹介するD16 Classic BoxesはMac/Windowsに対応した4つの主力ソフト音源(ベース・シンセ音源×1、リズム・マシン音源×3)をバンドルしたもので現在はダウンロードで販売されている。実は欧米では2007年末にリリースされており、既に高い評価を得ていたが、さらに何度かの改良を加えられて満を持しての日本デビューとなった。

TB-303そのまま音質のPhoscyon
TR-909のうま味を表現したDrumazon


製品を構成しているのはROLAND TB-303系ベース・シンセ音源のPhoscyon、ROLAND TR-909系リズム・マシン音源のDrumazon、ROLAND TR-808系のNepheton、ROLAND TR-606系のNithonatの4つ。"系"とは言っても、モロに実機をエミュレートしたアナログ・モデリング・シンセ/リズム・マシンと言っていいだろう。スタンドアローンではないので、VSTかAudio Unitsに対応したホスト・アプリケーションが必要だが、どのプラグインも作った音色とシーケンス・パターンは独立して別々に名前を付けて保存することができ、個別に呼び出すことができる。そしてユーザー・インターフェースの美しさ、これは特筆に値する。ボタンやツマミの見た目の質感が良く、レイアウトにセンスとこだわりを感じる。美しいだけでなく操作性もよく考えられており、有機的なフィーリングに好感が持てる。ひとつひとつ製品を見ていこう。Phoscyonは概述の通りTB-303からヒントを得たベース・シンセで、音はまさに"TB-303のアレ"だ。音作りのためのパラメーターを実機よりもさらに増やし、ユニークなアルペジエイターとアシッド感全開のディストーションも内蔵する。類似したソフトは多いが、クオリティは中でも高い方ではないだろうか。ブリブリ感がうまく表現されておりレゾナンスを強力にかけても暴れ過ぎず、扱いやすい。実践的な機能も数多く備えている。Drumazonは見た目もTR-909にそっくり。音も実機のおいしい部分をうまく表現していて非常にリアル。音作りのためのパラメーターがより細かく用意されていてまるでシンセのような雰囲気だ。オーソドックスなハウスからダンスホール・レゲエ的なものまで守備範囲は広い。シーケンサーは12パターン×8バンクでシャッフルも可能だ。

Nephetonはタムとコンガの併用可能
音色変化の幅が大きいNithonat


TR-808系のNephetonのシーケンサー部分はフィル・インを合わせれば16パターン×4バンク。パターンのコピー/ペーストもできる。実機では同時には使えなかったタムとコンガなどと併用できるほか、新たに"LAZER GUN"という"あるといいな"的オリジナル音色が追加されているなど、ずいぶんと拡張されている。しかし音はやっぱり"ヤオヤ"の音だ。ヒップホップにはもちろんテクノやJポップでも頻繁に耳にするので、知らない人でも聴けば"あーこれか"と思うだろう。TR-808はパターン制作の際の音色切り替えで、ダイアルをガチガチと回さなければいけないが、Nephetonは下部に一列に並んだボタンのクリックになっている。これは個人的に使いやすいと思った。また、Nithonatは見た目は実機のTR-606と違う部分も多いが、音はやはり似ている。独特のチープ感がエレクトロ・テイストを醸し出しているが、音色の変化幅が大きいのでいろんなジャンルに使えるだろう。どのプラグインもMIDIとの親和性がよく考えられており、すべてのパラメーターを任意のコントロール・チェンジに割り当てることができる。やり方は簡単で"MIDI LEARN"をクリックした後パラメーターをどれかひとつクリック。そうすれば待機状態になるので、それから割り当てたいMIDIコントローラーのツマミを動かすだけ。設定は名前を付けて保存できる。またどのプラグインにもシーケンサーが内蔵されているが、テンポをホストDAWに同期させられるほか、内蔵シーケンサーを使わずにホストDAWのMIDIトラックなどの外部信号で音源部分を鳴らすこともできる。全体的に言えることは音色のヌケが良い。ノイズが全く無いこともあるが、スピード感があり、品の良さを感じる。本メーカーのWebサイトでは、実機とソフトの音の周波数特性を比較して表示するなど自信も相当なものだ。プレイバック・サンプラーとは違いリアルタイムに音色を生成しているので表情豊かな音色変化を楽しめるし、必要なハード・ディスク容量も100MB程度と圧倒的に軽い。またリズム・マシンはキックやスネアなどをマルチ出力もできるので、自在に加工することができるのもありがたい。
日本でのデビューは発表から3年ちょっととやや遅かったが、完成度の高い製品だけに、手にしてみたい人は多いのではないだろうか。
D16 GROUP
D16 Classic Boxes Collection
37,485円
▪Windows/Windows XP/Vista、Pentium 4 1.5GHz(マルチコアCPU 2GHz以上を推奨)、512MB以上のRAM(1GB以上を推奨)▪Mac/Mac OS X 10.4/10.5/10.6、INTEL Core2 Duo 1.5GHz以上(2GHz以上を推奨)、512MB以上のRAM(1GB以上を推奨)