BTと共同開発した"MIDIで演奏する"プラグイン・ビート・エフェクト

IZOTOPEStutter Edit
トランス・テクノのシーンで一躍脚光を浴びて以降、多岐にわたる活動の末、昨年のグラミー賞にもノミネートされたBTことブライアン・トランソーが、10年培ってきた高度なプログラミング技術"スタッター"。彼が本来エディットに数時間を要していたこの技術を、たった指先1本でリアルタイムに再現できるようにIZOTOPEと開発したプラグインがこのStutter Editです。

スタッター=連打エフェクトとともに
さまざまな効果を指一本で実現


そもそもスタッターとは何か? 端的に言えば、短いサンプル音をリズミカルに連打しながら変化を加えていくテクニックのことです。例えばDJミキサーには"ダダダダ"とビートを連打するエフェクトが付いてるものがありますし、ソフトでも同様にビートを小刻みにループさせるエフェクトがあったりします。これらもスタッターの一種と言えますが、Stutter Editではそれをもっと発展させて、例えばより複雑で細かいリズムの連打にし、ロービット化しながら、フィルターをかけつつ、パンで振って、エコーで包み、さらにその時間軸を逆走させる......といった高度な合わせ技としてプレイすることができます。しかも、その一連の動きをMIDIノートにアサインすることで、なんと鍵盤やドラム・パッドを1つ押すだけで即座に再現できてしまうのです! Stutter Editではこの1つのキーにアサインされたエフェクトの組み合わせを"ジェスチャー"と呼び、このジェスチャーのプリセットを組み合わせた"バンク"があらかじめ37種類も用意されています。まずはこれらを試しているだけで十分楽しめ、ラップトップ・パソコンでのライブ・パフォーマンスにおいて即戦力となるセットがそろっています。基本的な使用法は、まずDAWソフトのオーディオ・トラックにエフェクトとしてStutter Editをインサート。別途用意したMIDIトラックの入力をキーボード/コントローラー、出力先をStutter Editに設定します。そして再生中に鍵盤を押せば、そのキーにアサインされたジェスチャーが機能します。継続的にオーディオをサンプリングしてバッファーにためているので、一連の動作がリアルタイムに可能。実際に触ってみると、その反応の速さに驚かされます。これだけ複雑な処理を、一切タイム・ラグを感じることなく次から次へと切り替えていくことができ、パラメーターの描画も完全にリアルタイム。楽し過ぎて、誰かに止めてもらわないと延々とやり続けちゃいますよ(笑)。

"エフェクトの動き"をスライダーで設定
速度変化のカーブも操れる


ひとしきり夢中になって楽しんだ後は、構造について見ていきましょう。見慣れないインターフェースにちょっと尻込みしちゃうかもしれませんが、1つのモジュールが理解できれば残りはその応用のようなものです。焦らずいきましょう。まずジェスチャーにはスタッター・ジェスチャーとジェネレーター・ジェスチャーの2種類があり、どちらかを選択します。後者のジェネレーター・ジェスチャーは再生中の音にホワイト・ノイズやリバース・シンバルなどのサウンドを加えるものです。前者のスタッター・ジェスチャーにはスタッター(使用される音の長さ)、クオンタイズ、ゲート幅、ジャンプ・パン、ステレオ・ディレイ、ディレイ・バンドパス、バッファー・ポジション(バッファーのどの部分をスタッターさせるか)、ハイパス/ローパス・フィルター、ビット・リダクション、ローファイ、ドライ音のレベル、エフェクト音のレベルといった13種類のモジュールが用意されていて、各モジュールの名前の左にあるオレンジのアクティブ・ボタンを点灯させることでそのモジュールを有効にします。1つ1つのエフェクト名を見ていけば、大抵のものは聞き覚えのあるものです。一方、各パラメーターはちょっと特別な仕様になっています。まず左右に伸びるスライダーはレンジ・ハンドルといい、各エフェクトの値が変化する範囲を設定するものです。例えばスタッターの音の長さを1/8〜1/32など、ディレイ・タイムを1/2〜1/1,024などに設定します。トラック再生中にキーを押せば、その上をドットが走り、時間軸に沿って変化していくポジションを示します。その下にあるカーブ・コントロールでは、中央付近でドットの動きが始点から終点まで同じ速度になり、左側にすれば始点から早く移動して終点に近づくにつれゆっくりに、右側ではその逆になります。この動きは逆走させることもでき、さまざまな組み合わせによって予想もつかないダイナミックなスタッター効果を直感的に得ることができるのです。ここでの設定はオリジナルのジェスチャーとして保存でき、自分用にカスタマイズしたバンクを作成してライブの現場に活用することも可能。またMIDIトラックにノートを書き込めば、オートメーションもできます。このようにStutter Editは、エフェクトながらも楽器として演奏する楽しさを併せ持ち、エディットを新たなる次元へといとも簡単に導いてくれる、最新にして最強のツールと言えるでしょう。
IZOTOPE
Stutter Edit
オープン・プライス (市場予想価格/29,400円前後)
▪Windows/Windows XP/X64/Vista/7、VST&MIDI対応のDAWソフトもしくはAVID Pro To ols 7.4以降▪Mac/Mac OS X 10.5.8以降(Universal Bina ry)、Audio Units/VST&MIDI対応のDAWソフトもしくはAVID Pro Tools 7.4以降