場面を選ばず多目的に使えるサイドアドレス型コンデンサー・マイク

SHUREBeta 181/S
米国の老舗音響メーカーSHUREからコンデンサー型マイクBeta 181/Sがリリースされました。このBeta 181/Sはコンパクトなボディと交換可能なマイク・カートリッジにより、さまざまな設置環境や用途で活躍するサイドアドレス・タイプの楽器用コンデンサー・マイク。定評あるBetaシリーズの基本性能を受け継ぎ、過酷な環境でも確実な収音ができるように設計されているそうです。

手のひらサイズで設置場所を選ばない
高い最大音圧レベルで大音量にも対応


Beta 181/Sは手のひらに乗るほど極めてコンパクトなサイズのサイドアドレス型コンデンサー・マイク。本機の指向性は超指向ですが、ほかにも単一指向のBeta 181/C、無指向のBeta 181/O、双指向のBeta 181/BI(各66,150円)があります。ライブや撮影の都合でマイクを目立たせたくない、狭いスペースに設置しなければならない、音源に近づけて設置したいといった場合に最適です。また指向性の異なる4種類のマイク・カートリッジもオプションで用意しており、単一指向のRPM181/C、超指向のRPM181/S、無指向のRPM181/O、双指向のRPM181/BI(各36,750円)があります。これらのカートリッジは簡単に着脱可能で、用途に応じて買い足していくのも良いでしょう。さらに特筆すべきは最大音圧レベルの高さです。すべてのカプセルで150dB以上となっており、ドラムやエレキギターなど大音量の楽器もひずむことなくクリアに収音できます。想像をはるかに超えるコンパクトさは、セッティングの問題を解消します。Beta 181シリーズであれば、ドラム・セットへクローズにセッティングするといった場合でも問題無く立てることができます。特にスネアにはとても立てやすく、マイキングのアレンジで苦労することは無さそうです。では早速サウンドをチェックしていきましょう。今回試聴したのは、超指向のBeta 181/S。まずはスネアに立ててみました。サウンドの比較用には、スネア用の定番マイクであるAKG C451EBとSHURE SM57を用いました。最初にスネア単体の音を確認します。C451EBに比べると本機はハイもローも控えめで少し中域に寄った音の印象です。どちらかというとダイナミック・マイクに近いサウンドで、C451EBの方がレンジが広く感じます。C451EBに比べるとBeta 181/Sの方が少し落ち着いた音で、C451EBに比べ約5dBほど小さかったです。次にダイナミック・マイクとして定番のSHURE SM57とも比較してみましたが、意外にもSM57よりも控えめな印象。控えめと言っても決して地味な印象ではなく、むしろジャンルによってはナチュラルに感じるサウンド。どちらかというと、ロックよりはポップスに向く音ではないかと思います。私がこの3本の中からスネア用のマイクを選ぶとするなら、ジャズなどの細かいスティック・ワークを拾いたいときはC451EB、ロックならSM57、ポップスにはこのBeta 181/Sといったところでしょうか。

ドラム個々の音をクリアに収音できる
ナチュナルな音はPA現場にもお薦め


続いてスネアに立てたマイクへのタムやハイハットのカブりを検証してみました。これはさすがに超指向性のカプセルだけあって、カブりの少ない音でした。タムもハイハットもかなりカブりが抑えられ、C451EBとの比較ではもちろんのこと、ダイナミック・マイクのSM57と比較してもカブりは小さかったです。マルチマイクでドラム個々の音をクリアに録りたいときには、この超指向性のカートリッジはかなり魅力的だと言えます。また、今までライブPAではダイナミック・マイクを使っていた方も多いと思います。しかしコンデンサー・マイクでもこれだけカブりが抑えられるのであれば、サウンド的にもナチュラルな本機はPAの現場に特にお薦めできるでしょう。最後にアコースティック・ギターを録音してみました。こちらもC451EBと比較しつつの試聴でしたが、やはりスネアのときと同様にC451EBと比べると落ち着いた音の印象。"ジャリッ"としたところが少ない若干おとなしめのサウンドです。最近のマイクの傾向にあるような耳にうるさい硬めの部分が無く好印象です。少し足りない高域の倍音成分はEQなどで持ち上げれば、高級なマイクの音に近付けることも可能です。とにかくこの超指向性はカブりに強く、狙ったサウンドだけを拾えます。そのためマイクと楽器の距離や角度を変えれば、録り音に変化を与えることが簡単にできるのです。自分の思う音が得られるまで、いろいろと試すのも良いでしょう。今回は超指向性のモデルのみのチェックでしたが、なかなか面白いコンセプトのマイクでした。超小型でありながらサイドアドレス・タイプなので、床ぎりぎりに置かれた楽器を収音する場合に特に有効だと思います。例えばジャンベの下側から低域を収めるようなときや、琴や民族楽器を録る場合など。このようにセッティングの幅が広がることは、サウンド作りにおいても有利になってきます。1本備えておくととても便利で、エンジニアにとって心強い味方になることを最後に述べたいと思います。撮影/川村容一
SHURE
Beta 181/S
66,150円
▪指向性/超指向(オプションにより単一指向、無指向、双指向のカプセルに変更可能)▪周波数特性/20Hz〜20kHz▪感度/−49.5dB re 1V/Pa▪最大音圧レベル/154.5dB▪外形寸法/35(φ)×124(H)mm▪重量/145g▪付属品/マイク・ホルダー(A57F)、ウィンド・スクリーン(A181WS)、3/8インチ→5/8インチ変換ねじ、マイク・ポーチ(A181C)