クラスDアンプを4基内蔵するコンパクトな16chパワード・ミキサー

CARVINC1648P
昔のパワード・ミキサーはとにかく重く、機能が少ない製品しか無かったものです。6〜8chでEQも2バンドの簡易版(周波数固定)だったりしましたが、それでも当時は役に立った思い出があります。しかし、最近ではリハスタで触るパワード・ミキサーにも良い製品があり、随分進歩したんだと感心します。今回のCARVIN C1648Pはまさにその進化したパワード。ドキドキしながらレビューしていきたいと思います。

500W(4Ω)×4の大出力
エフェクトやUSBオーディオも搭載


このC1648Pは、モノインプットが16ch。構成としてはまさに今流行のカフェやインストア、アコースティック系ライブ・ハウスなどの現場向きです。フェーダー長が60mm、つまみが細くしてあったりと、1つ1つのパーツを必要最小限にうまく抑え、16ch+αとは思えない小ささにまとめられています。重量は11.4kgと意外に重くないです。しかも安定感のあるクラスDのアンプを4ch分も搭載しているのは本当に驚きです! さらにアンプ出力は何と500W×4(4Ω)。スペック上は現場レベルの単体アンプとの違いもさほどありません。スイッチ1つで簡単にメインL/R&AUX1/2アウトか、AUX1〜4アウトにアンプをアサインできます。インプットは、16chモノに加え、2つのステレオ・リターン。アウトはメインに加え4バス・グループ、8AUX(エフェクト2系統含む)、モノアウト、RECアウトと豊富です。さらに、ディレイやリバーブなどを備えた24ビット・デジタル・エフェクトを2基搭載しています。チャンネルEQは4バンド・パラメトリックで、LO MIDとHI MIDは周波数可変と、幅広いコントロールが可能です。アウト用として9バンドのグラフィックEQもあり、メインL/RかMonitor 1/2にアサインすることができます。そして4つのメイン・バス(グループ)には、それぞれに1ノブ型のシンプルなコンプレッサーを装備。ですから出力関係にアウトボードを用意する必要がないのです。
リア・パネルにはUSB端子を搭載し、L/Rステレオ・ミックスをコンピューターへダイレクトに録音できます。逆にコンピューターでの再生をコンソールに送ることも可能です。それと、トップ・パネルにもUSBコネクターが2つあり、こちらはUSB機器にバス電源を供給するためだけのポートになっています。

簡単セットアップで
ステージ上の音をそのまま再現


今回はパーカッションやピアノまである対バン式のアコースティック・イベントでチェックしてみます。メイン・スピーカーはELECTRO-VOICE SX300、モニターが同じくFM1502が2系統。追加のモニター用として、他メーカーのアンプをセッティングしました。まず、魅力は何と言っても素早いセットアップ。インプットを終え、チャンネルにアウトボードのコンプをインサートし準備完了。内蔵グラフィックEQでスピーカーをチューニングすると、Q幅が思ったより狭い感じがし、位相の崩れも気になりません。フェーダーを徐々に上げていくと、ハイパワーを誇るだけあり"まだまだ出せるよ"という余裕のある感触。モニターも鳴らしてみると、こちらも会場常設のハイパワー・アンプとそん色ありません。あと2ch分のアンプを搭載していたら......なんてぜいたくな悩みも出てきそうです(笑)。エフェクトも2基あるので1つは歌に、もう1つはギターに、と使い分けができます。パラメーター調整用のノブも2つあり、細かな調整が可能(1つはエフェクト・タイプ切り替え兼用)。音質やかかり具合がスムーズで、上質なのもよいです。肝心の音質は、メイン/AUX共にとてもクリーンです。良い意味で色付けが無いので"そのまま"のイメージをミックスするのに手間がかかりません。乱暴な言い方をすると、ゲインだけ取ってフェーダーを上げれば、"ステージ上にいる疑似体験"が音でできます。それくらい音質は優秀ですね。パラメトリックEQの効き具合も良く、こちらはQ幅が広めな作りですので、オーバーEQにならないよう、心掛けてください。我々PAマンからすると、今までこのチャンネル数のミキサーは、あくまで"サブ卓"という認識でした。しかし本機はAUX、リバーブ、EQ、どこをとっても大型ミキサーと変わらないし、操作もストレス無くできます。"ミニマム・セットならC1648P"という人が、これからは増えるかもしれませんね。 201105_C1648P_01.jpg▲リア・パネル。電源スイッチの上にUSB端子(オーディオ入出力用)。下段左側にはスピーカー・アウト(スピコン)×4。LEDはアンプのクリップ(赤)×4、プロテクト(黄)×1で、その右にアンプ・アサイン・スイッチ、アンプ手前でのインサート端子(TRSフォーン)が並んでいる 
CARVIN
C1648P
オープン・プライス (市場予想価格/99,800円前後)
▪ミキサー周波数特性/20Hz〜20kHz(±1dB)▪SN比/90dB以上▪ダイナミック・レンジ/104dB▪マイク・ゲイン/56dB▪USBオーディオI/O(Windowsのみ)/16ビット/48kHz/ASIO対応(ASIO4ALL推奨)▪アンプ出力/500W×4(4Ω)、300W×4(8Ω)▪アンプ周波数特性/20Hz〜20kHz(±0.5dB)▪ダイナミック・レンジ/104dB▪外形寸法/563(W)×146(H)×415(D)mm▪重量/11.4kg