VARI-PHASE機能によって
2つの入力の位相がそろえらえる
まずは入出力から。フロント・パネル左にあるのがTHRUアウトとINSTイン(共にフォーン)。INSTインはギターが直接入力できるいわばDI入力で、THRUアウトはその入力をダイレクトに出力できる。一方、リア・パネルにはMICインとLINEアウト(共にXLR)、そしてMICアウト(フォーン)を用意。本機は基本的に1chのDI/マイクプリ/コンプだが、INSTインとMICインの2つのソースをミックスして出力することが可能で、そのミックスされたサウンドがコンプを経由して出力されるのがLINEアウトだ。MICアウトに関しては、MICインからマイクプリ/フェイズ/80Hz(-12dB/oct)のハイパス・フィルターを通った信号が出力される。なお内部ジャンパーの接続はユーザー自身で変更可能で、コンプの位置をマイクプリの後に変えることも可能となっているそうだ。
次にフロント・パネルの操作子だが、2つの赤いツマミがINSTインとMICインのゲイン。MIC GAINツマミは表記の通り6dBステップで+66dBまでカバー。リボン・マイクなどゲインの低いマイクにも十分対応できる値だ。ニーヴ氏こん身のマイクプリ部にはトランス入力を意識したT.L.A回路が採用されている。MIC GAINを0dBに設定することでライン・レベルの入力も可能だ。MIC GAINの右上には、前述のハイパス・フィルター・スイッチと位相を180度反転させるフェイズ・スイッチも備える。
中央に見えるのはBLENDツマミで、先ほどのINSTインとMICインはここでミックスされてLINEアウトから出力される。このBLENDツマミをINST方向に回し切れば、INSTインとMICインの音をLINEアウトとMICアウトから別々に出力することも可能だ。その右にあるSILKスイッチは、いにしえのビンテージ・マイクプリをシミュレートする機能。これを押すと音像がしっかり固定され、音が前に出るような効果が得られる。
その右上はコンプ・セクションで、ON/OFFスイッチとTHRESHOLDツマミ(-20~+10dB
u)を装備。レシオは2:1固定で、工場出荷時はアタック/リリース・タイムは40msになっている(こちらも内部ジャンパー設定で変更可能)。
そしてCOMPスイッチの左にあるのが、同社DIの名物とも言えるVARI-PHASEスイッチ&PHASE SWEEPツマミ。この機能はINSTインの位相を0~180度可変できるもの。例えばギターをINSTインに直接入力しつつ、THRUアウトをギター・アンプにつないでマイクでも収音するとしよう。そのマイクをMICインに入れると、当然INSTインと位相のズレが出てくる。そんなとき、このPHASE SWEEPツマミを調整すれば、位相の干渉を最小限にできる。このVARI-PHASEは単体ツールとして欲しいくらいの優れた機能だ。
スピードと立体感のあるサウンド
コンプはボーカルの帯域が得意
今回はベースと男性ボーカルでチェックを敢行。まずベースだが、本機は入力インピーダンスが3MΩとなっているため、豊かなプレゼンスと躍動感のある中低域が味わえ、スピード感と立体感がある。VARI-PHASE機能と併せてのサウンド・メイキングにより、ベース・レコーディングのかなりの武器になってくれそうだ。
男性ボーカルに関しては、本機とSSL Jシリーズ、同社5012と比較をしてみた。Portico勢は共にSSLよりサウンドの温度感が高い印象。ルックスや時代こそ違えど"あの"NEVEサウンドだ! そして本機のSILKスイッチをONにすると、さらに5012よりもう一歩ボーカルが前に出て、迫力や肉感が増した。ロック系の曲にお勧めのテイストだと思う。またコンプはボーカルの帯域が得意で、温かみのある音色が特徴であった。
冒頭でも触れた通り、今後はライブ配信なども増加していくと思われるが、音にこだわりたいプレイヤーにぴったりの製品だと感じた。さまざまな場面で積極的にNEVEサウンドを導入しよう。