フラットで脚色の無い音質が魅力の小型コンデンサー・マイク2機種

MIC WN101/N201
コストパフォーマンスが高く、高い技術に裏打ちされた中国製コンデンサー・マイク

MIC W N101/N201 N101(写真上):オープン・プライス(市場予想価格/102,900円前後) N201(写真下):オープン・プライス(市場予想価格/72,450円前後)今回レビューするのは無指向性のコンデンサー・マイク。ダイアフラムが大型1インチのN101と1/2インチのN201の2タイプという2機種です。完全な中国製のマイクとのことで、本誌で数多くのコスト・パフォーマンスが高いマイクを取り上げ、私自身も数多くのマイクをレビューしてきましたが、その多くは中国の工場で作られた物でした。つまり、技術的な下地はかなり前からできていた状況ですね。MIC Wは、1998年に設立。北京に工場を持ち、開発/設計/生産を行っています。各種の音響測定用のマイクとして開発が始まり、その高い精度を録音に転用したとのこと。早速試していきましょう。

どちらも自然な音像だがN101は若干低域が太い


両機種ともつや消しブラックのボディで、サイズはほぼ同じ大きさ。恐らく同じ部品を流用していると思われます。マイク・カプセルは丁寧にステンレスでハウジングされ、N201は最近の無指向性マイクによく似たデザイン。一方N101はボディ部分よりも太い"頭でっかち"な外見です。どちらもショックマウントの付いたマイク・ホルダーと、ウレタンのウィンド・スクリーンが付属し、周波数特性は20Hz〜20kHzで無指向性です。48Vのファンタム電源で駆動し、それぞれ単体での使用のほかにも、ペアリングでの使用のためにステレオのセットも用意されています(N101 Pair:オープン・プライス/市場予想価格216,300円前後、N201 Pair:オープン・プライス/市場予想価格155,400円前後)。それでは実際に録音してみましょう。まずはスタジオで、弦楽器/管楽器のアンサンブルのワン・ポイント収録や、オフマイクでのステレオ使用で試してみました。まずはカルテット編成のストリングスを録音。NEUMANN 87AIの近くにセッティングして比べてみたところ、音量は87AIとほぼ同出力です。最近の比較的出力の大きなコンデンサー・マイクと同等の音の大きさですが、通常のオフマイクでのセッティングでは、間接音が多いせいか、より遠い音像になってしまいました。逆に通常のオンマイクの距離では自然な響きです。同社は、脚色の無さやフラットさを求められる測定用マイクを生産していただけあり、生で聴いているイメージの延長線で、不自然に強調された帯域は感じられず、とてもリアルなサウンドでした。逆に87AIがいかにクセのあるキャラクターかを感じる程です。オフマイクではN101とN201では若干N201の方がすっきりした印象です。さらに音源に近づけていくと、中域から低域にかけての音像の差が若干出てきました。これはダイアフラムのサイズの差でしょうか。N101の方が少し低域に太さを感じました。

アコギ録音は原音に限りなく近い近接効果も少なくモヤつかずに収音


今度はドラムのオフマイクに挑戦。どちらも本当にスタジオの中で聴いているようなサウンドです。良くも悪くも、ドラマーのたたくバランスのまま。また繊細なライド・シンバルや細かなハイハットなどダイナミック・レンジの広い演奏が、本当に見事に再現されます。これもストリングス同様、オフ・マイクでは2機種の差は少なかったです。この対照的な2種の楽器での録音で気になったのは、床や天井、壁、特にガラスの窓やドアの反射の音が、収音したサウンドに大きく影響してしまう点。特にN101は前述の通り若干太めに録れるため、反射音も同様に太く、影響も大きく出ます。わずかですがその差が音の違いになったのでしょうか。最後にモノラルで、アコギをオンマイクで録ってみます。これも予想以上にナチュラルで、生の楽器のニュアンスに限りなく近い感じでした。かなりのオンマイクでも近接効果が少なく、モヤついた低域は感じられません。さらにボーカルでもチェック。これも本当に素直。ただし吹かれには弱いので、ウィンド・スクリーンは必要です。付属のマイク・アダプターはマイク・ケーブルの重みで簡単に外れてしまうので、扱いには注意ですかね。特にN101はカプセル部分が大きく重いため、マイクの重心がかなり前気味。マイク・ホルダーとの相性はいいとは言えませんので、セッティング時には特に注意が必要かもしれません。最後に注意しなければいけない点としては、単一指向の扱いに慣れているせいか、マイクの横/後の環境や時計、エアコン、ハード・ディスクや、建物、窓の外の各種ノイズ・生活音にも配慮が必要......と言っても、リアルな音場を立体的に切り取れるので、生々しい音以外にもバランスの悪い個性的な音や、あまり上手でない演奏などにも積極的に使うのも逆に面白いと思います。測定器として使えるレベルの高精度のマイクは、とても高価な物が多いです。無指向性のマイクで録音するアプローチも含めて、今回レビューしたMIC Wの2機種は、このようなコンセプトのマイクを使うには、とてもコスト・パフォーマンスが高いと思います。今後の中国製品にも注目!(『サウンド&レコーディング・マガジン』2010年11月号より)
MIC W
N101/N201
N101:オープン・プライス(市場予想価格/102,900円前後) N201:オープン・プライス(市場予想価格/72,450円前後)
N101 ▪周波数特性/20Hz〜20kHz ▪指向性/無指向 ▪外形寸法/23.8(φ)×157(H)mm  ▪重量/165gN201 ▪周波数特性/20Hz〜20kHz ▪指向性/無指向 ▪外形寸法/12.7(φ)×155(H)mm ▪重量/120g ▪付属品(N101、N201共通)/ウィンド・スクリーン、ハード・ケース、マイク・ホルダー