オンのセッティングにより大音量の楽器に最適なコンデンサー・マイク

MOJAVE AUDIOMA-101Fet
マイク・メーカーの老舗ROYERを設立しらデヴィット・ロイヤー氏が設立していたブランドの新製品

MOJAVE AUDIO MA-101Fet 72,450円今回レビューするコンデンサー・マイク、MA-101Fetは、近代的なリボン・マイクを開発し、デジタル・レコーディングにおけるリボン・マイクの有効性を知らしめたROYERの設立者デヴィッド・ロイヤー氏が、ROYER以前に設立していたMOJAVE AUDIOからの新製品です。1995年にカリフォルニアでスタートしたMOJAVE AUDIOは、当時一部のエンジニアの間で評判になっていたメーカーで、真空管コンデンサー・マイクやマイクプリなどを、ごく限られたエンジニアのためにすべてハンドメイドで製作していたようです。

素晴らしいギター・サウンドを得られる無指向性のオンマイク・セッティング


デヴィッド・ロイヤー氏がリボン・マイクの製作のためにROYERを立ち上げてからはそちらに注力していたようですが、近年MOJAVE AUDIOは幾つかの興味深い製品をリリースしています。このMA-101Fetは、以前レビューしたMA-201Fetの回路にMA-100(スモール・ダイアフラムの真空管コンデンサー・マイク)のカプセルを組み合わせたもの。カプセルは単一指向性のほかに無指向性も付属しており、付け替えて使用可能です。増幅回路にはミリタリー・グレードのFETを使用し、出力トランスはJENSEN製。MA-201Fetと同じ回路ですが、新たに−15dBのPADが増設されています。より高SPLのソースに対応ということでしょうか。ローカット・スイッチは無く、48Vファンタム電源にて駆動します。SHURE SM57よりやや太い程度のボディはとても頑丈にできており、重量感、質感も良好です。測定用マイクのような地味なルックスですが、質実剛健という言葉がぴったりかもしれません。今回はまずエレキギターでテストします。マイクプリはNEVE 1073です。いつものようにコンプは無しで。比較対象としてAKG C414 XLⅡと、ダイナミックですが定番SHURE SM57を立てました。マイキングはキャビネットから3cmほどにオンセットしました。ギター・アンプのDIEZEL Herbertをかなりハイゲインにしたセッティングで単一指向で録りましたが、かなりの好印象です。ジャンルによってはエレキギターの低域は重要な要素ですが、200Hz〜100Hz辺りの低域のゴツさがEQ無しでとても自然に出ています。中域の押し出し感も十分。高域はフラットですが、中高域のアタックの部分がやや強調されている印象です。アンプからはかなり音量が出ていますが、全体的に飽和感がなく音楽的にまとまって聴こえます。出力レベルは近年のコンデンサー・マイクと比較すると控えめです。とはいえS/Nは良好なので弱音楽器の録音でも問題はありません。PADをオンにすると、ほぼSHURE SM57と同じぐらいの出力レベルになります。エレキギターやドラムの録音ではこれぐらいが扱いやすいでしょう。ここでマイキングはそのまま、無指向性のカプセルに替えて聴いてみます。これが素晴らしいサウンド。無指向性のオンマイクは個人的に好きでよく使うセッティングですが、これは良いです。ファットでつやのある音質で、キャビネットの鳴りも自然に入ってきています。少しエッジが欲しい場合はEQで補正した方が良いかもしれませんが、今回はバッチリでした。

ズドッ!というスネアの低域も拾い存在感のある録音ができる


続いてドラムでも試してみました。単一指向性でのスネアのトップはやはり良かったですね。ここではPADはオンにしています。出力も適正なのでマイクプリも最適なゲイン・セッティングに設定でき、コンプレッションなど後段の処理もやりやすいですね。ダイナミック的な中域のパンチはありつつレンジは広いので、定番SHURE SM57とはまた違った魅力あるサウンド。ズドッ!というスネアの低域もしっかり拾っています。輪郭もしっかりしているので非常に存在感のあるスネアが録音できるでしょう。スネアのマイクへのハイハットのカブリも思ったほど多くありません。ここで再び無指向性のカプセルに替えてドラムのルーム・マイクに立ててみましたが、やはりこのマイクはオンセットで本領を発揮するようです。ステレオだとまた印象が違うかもしれませんが......今回も例によって試聴機が一本でしたのでステレオ・ソースは無理でしたが、オーバーヘッドも良さそうです。位相が整っている印象なのでマルチマイクでの収音も良い結果が期待できます。そのほかにアコギやボーカルなどのソースも試しましたが、圧倒的に良かったのがエレキギターとドラムでした。これは予想ですが、SHURE SM57が得意とするソースは、本機でも好結果が出ると思います。レコーディング現場で、スモール・ダイアフラム・コンデンサーで無指向性も音の良いマイクとなると選択肢が少ないのですが、中でも大音量のソースに対して使いやすいマイクとなるとかなり限られてきます。そういった意味でも、存在感のあるモデルです。現場での使い勝手も良くサウンドも素晴らしいMA-101Fet、レコーディングの即戦力となってくれそうな一本です。(『サウンド&レコーディング・マガジン』2010年7月号より)撮影/川村容一
MOJAVE AUDIO
MA-101Fet
72,450円
▪カプセル/単一、無指向 ▪ダイアフラム/20.5mm、3ミクロン ▪周波数特性/30Hz〜18kHz(±2.5dB) ▪インピーダンス/550Ω▪歪み率/1%@120dB(PADオフ)、1%@135dB(PADオン) ▪外形寸法/20.5(φ)×171(H)mm ▪重量/226g ▪付属品/ハード・ケース、マウント・クリップす