高域の抜けがよく個性的でまとまりあるサウンドのコンデンサー・マイク

MXLMXL-Gold35
アメリカのマイク・メーカーによるコンデンサー・マイク

MXL  MXL-Gold35  オープン・プライス(市場予想価格/99,800円前後) 今回レビューするのはアメリカのマイク・メーカー、MXLの新しいコンデンサー・マイク、MXL-Gold35です。低価格で優れた製品を多数リリースしてきた同社のラインナップの中でも上位のカテゴリーに属する本機ですが、市場的には近年非常に充実している価格帯だけに、コスト・パフォーマンスに定評のあるMXLの新製品には期待が高まります。強烈なアピアランスを持つこのMXL-Gold35、早速チェックしていきましょう。

35mmの大口径マイク・カプセルを採用潔いほどのシンプル設計


スペックよりも先に触れたいのがそのルックス。NEUMANN U47 Tubeよりも一回りほど大きなボディ(かなり大きめと言ってよい)は全身ゴールドのメッキが施されており、強烈な存在感を放っています。マイクはボディの大きさやその質量などエレクトロニクス以外の部分もサウンドに大きく影響するのですが、本機のボディの大きさやフィニッシュも見かけ倒しではない模様。ガッチリとしたボディに施された金メッキは制振効果を狙っており、ゴージャスな気分以外の効果もあるようです。スペック的に注目なのは新開発されたというマイク・カプセルで、35mmという大口径。指向性は単一のみに限定されていますが、デュアル・ダイアフラム構造になっており、サウンドへのこだわりが感じられます。PADやローカットなどの機能はすべて省略されています。潔いほどのシンプルさです。電源は外部48Vファンタム電源を使用します。まずはスティール弦のアコーステック・ギターでサウンド・チェック。比較対象としてAKG C41
4 B-XL Ⅱ、BLUE Mouseを用意しました。マイクプリはMILLENNIA HV-3Dです。ファースト・インプレッションはとにかく派手。高域に特徴があり中高域辺りからシェルビング的に伸びている印象です。かといって低域が物足りないわけではなく、しっかり存在感はありつつタイトに締まっている印象です。指向性はかなり広めで、音源が少々動いても音質の変化はあまりありません。で、C414 B-XL ⅡやMouseも高域は地味な方ではないと思うのですが、比べても断然ハイが出ていますね。かなりキャラの強いタイプのようです。出力ゲインも高く、S/Nも良好で弱音楽器の収録にも活躍しそうです。

構造からカプセル、エレクトロニクストータルでの方向性が一貫している


ガット弦のギターではピッキングのアタックがしっかり聴き取れ、ひずみ感も少ないせいか、とてもまとまりの良いサウンドです。オケ中でもしっかり立ってきます。コンプのノリも良くクリスピーでパキッといきたいときには良いですね。この抜けの良さとクリアさはトランスレスであることも関係しているでしょう。続いてボーカルでもテスト。男性のロック・ボーカルではそのハスキーな声質のざらついた成分がより強調され、ぐっと前に出てきます。音像は大きめですがやや上に位置します。中低域の粘りはやや物足りない感じはしますが、コンプレッションしていくとアタックの心地いい部分が出てきます。アップ・テンポの楽曲で音数の多いトラックでのボーカルに合いそうです。マイク自身のひずみ感がとても少なくクリア。耐圧も高くなかなかひずまないので声量のあるシンガーにも向いているでしょう。近接効果も適度にコントロールされた印象で、過剰になることはありません。最後にピアノでもテストしてみました。試聴機が一本ですのでモノラルでの収録になりますが、ダブつかない低域と抜けの良い高域がとてもピアノの収録にマッチしています。指向性が広く背面からの音も結構拾っているようですので、マイキングには若干コツが必要ですが、非常にまとまりの良いサウンドはロックやR&Bでのピアノ録音に向いている印象です。全体的にチューニングが成功しているマイクだなと感じます。構造部分からカプセル、エレクトロニクスの部分までトータルでの方向性が一貫しています。キャラクターの設定が明確な分、ソースを選ぶ傾向はありますが、はまるシチュエーションではほかのマイクでは得られないサウンドが録音できそうです。今回はテストできませんでしたが、ストリングス・セクションの収録にもぜひ使ってみたいと思わせるサウンド。本機でレコーディングすればストリングスの高域がオケ中で良いところに収まりそうです。ハイエンドまで抜けている印象なので、空気感も十分に表現してくれるでしょう。低域のタイトさもEQやフィルター処理とは違ったまとまり感が期待できます。キャラの立った印象のMXL-Gold35。そのルックスが気に入った方はぜひそのサウンドもチェックしてみてください。(『サウンド&レコーディング・マガジン』2010年6月号より)撮影/八島崇
MXL
MXL-Gold35
オープン・プライス(市場予想価格/99,800円前後)
▪周波数特性/20Hz〜20kHz ▪指向性/単一 ▪入力感度/18mv/Pa ▪出力インピーダンス/150Ω ▪S/N比/136dB以上 ▪最大入力許容音圧/130dB ▪電源/ファンタム48V(±4V) ▪消費電力/5.4mA ▪外形寸法/57(φ)×235(H)mm ▪重量/771g