40種類のコンプと20種類のEQをモデリングしたTDMプラグイン

FOCUSRITELiquid Mix HD
好評を博すDSPプラグインのFOCUSRITE Liquid Mixシリーズと同じく、同社独自のモデリング技術であるダイナミック・コンボリューション・テクノロジーによって、20種類のクラシックなEQと40種類のビンテージ・コンプレッサーのエミュレーション・プログラムを標準装備しているというDIGIDESIGN Pro Tools専用TDMプラグイン、Liquid Mix HDが登場。早速試してみよう。

実機には無いパラメーターで
より好みに近い音へ音作り可能


コンピューターに本ソフトをインストールしたら、オーサライズ方式は標準的なiLokでの登録と認証。最近のTDMプラグインは、DSP消費量が少ない傾向になっているので、そういった製品に比べると本機はDSP消費量が多めな印象を受けましたが、DSPの消費形式もDIGIDESIGNと同じ"Plug-In Sharing"を採用しているので、DSPチップをLiquid Mix HDが占有することもなく、効率的な利用ができるようになっています。モデリングされたコンプレッサー40種とEQ20種類が入っているということを考えると、多めのDSP消費量もうなずけます。また、エミュレーションのライブラリーは、同社のWebサイト(ページ右下のWebサイト参照)から無償でダウンロードして追加/変更することも可能です。早速立ち上げてみたところ、ユーザー・インターフェースはハードウェアのLiquid Mixシリーズと同じ系統のデザイン。1画面の左右がコンプ部とEQ部に分かれており、直感的に使用することができます。立ち上げた段階ではモデリング・プログラムはロードされておらず、コンプ/EQでそれぞれ個別に好みのモデルをロードして使用します。各プラグインには、"US Classic Solid State"などといった名称が使われているのですが、元となった機材名は同社のWebサイトで公開されていますので、覚えるまでにWebサイトのページを印刷して持ち歩く必要がありそうです。ちなみに"US Classic Solid State"はDBX 165をモデリングしたもの。それではまず、画面左側のコンプレッサー部から見ていきましょう。NEVEからSSLまでそろったコンプレッサーの中から好みのプログラムをロードすると、元の機材と同じパラメーターが表示されます。例えば、UREI 1176LNをモデリングした"STELLAR 1/ US CLASSIC SOLID STATE 1"では、スレッショルド、レシオ、アタック、リリースのほかゲイン・メイクアップが各ツマミに割り当てられ、数値や目盛りなども実機に則したものになっています。この場合、レシオであれば4:1、8:1、12:1、20:1、さらにすべてを押した"ALL"を選択できるようになり、実機と同じように使用することができるでしょう。そして便利な機能として、表示画面の左下の"Free"というボタンを押すことにより、コンプレッサーのタイプは選択時のままで、元ネタとなる実機には無い数値までも設定することが可能になります。またコンプ部の下にある"Sidechain Monitor"ボタンを押すことにより、サイドチェインの制御信号側に1バンドのEQを入れることができます。このEQでは、シェルビング、ピーク、フィルターとQを設定できるので、ドラムの低域の押し出しを強くしたり、ボーカルの高域を強調してディエッサー的に使用するなど、一般的に見られるハイパス・フィルター・タイプより幅広く自由な音作りが可能となるでしょう。

最大7バンドまで割り当て可能なEQ部
実機に近いサウンドの感触


続いては画面右側のEQ部について見ていきましょう。最大7バンドを割り当てることが可能で、コンプ部と同じようにプログラムをロードして元となった実機と同じようにも使える上、それぞれのバンドごとに好きなモデルの設定を割り当てて使うこともできます。そうやって作ったオリジナルのプログラムは保存することもでき、コンプとEQで別々に呼び出すこともできます。本ソフトの使い方としては、プリセットをロードして使うだけではなく、積極的に音作りをするのもお勧めです。個人的な印象としてはモデリングもよくできていると思いました。それでいてさまざまなEQを作ることができるので、DSP消費量が多めだということを差し引いても納得のいくものでした。また一番大切なサウンドの感触に関しては、コンプとEQともにLiquid Mixと同じプログラムとのことなのですが、サンプリング・レートによって印象が変わってきます。96/192kHzなどのハイサンプリングのときよりも、44.1/48kHzのときの方が音に密度があり、実機に近いニュアンスを感じました。この傾向はEQよりもコンプに顕著で、EQの場合はそれほどサンプリング周波数に影響されることが少ないと感じました。唯一気になる点があるとすれば、デザインのみ少し残念な印象を持ちました。モデリングしてある実機のデザインを画面上に踏襲してくれたら、それに慣れているプロのエンジニアはより直感的に使えるし、エンジニアとしては盛り上がるような気もするのですが......"見た目に左右されず、耳のみで音を決めましょう"ということなのかもしれませんね。
FOCUSRITE
Liquid Mix HD
オープン・プライス(市場予想価格/60,000円前後)

REQUIREMENTS

▪Windows/Windows XP SP2以上でPro Tools|HD 7.1以上がインストールされたマシン、Pro Tools|HD Accel推奨、1GB以上の空きメモリー
▪Mac/Mac OS X 10.4.1以上でPro Tools|HD 7.1以上がインストールされたマシン、Pro Tools|HD Accel推奨、1GB以上の空きメモリー