リマスタリングした音源を新たに収録したMellotronのソフト音源

GFORCEM-Tron Pro

Mellotronをサンプリングした音だけに特化したソフト音源、GFORCEのM-TronがM-Tron Proへ強力にバージョン・アップしました。本製品のレビューを行う前に、まずはMellotronの説明から始めたいと思います。

スプリット/レイヤーやフィルターなど
実機には無い機能を新たに追加


Mellotronはご存じのように、ビートルズやイエス、レッド・ツェッペリンなどの有名アーティストが使用したテープ音源方式のキーボード。最近ではオアシス、レディオヘッドあたりも使用していて、私もサウンド・プロデュースするアーティスト、バンドに必ずといっても良いほど、ピアノ、オルガンに次いでの使用頻度でチョイスしています。私が思うにMellotronは、ギターのGIBSON Les Paul、FENDER Stratocasterに並ぶくらいのワン・アンド・オンリーの楽器。ストリングスはサイケデリック、フルートは温かくてストロベリー、クワイアーはひんやりとプログレッシブ。ところがこのMellotron、存在感が有りすぎてポップスなどでは逆にメインを食ってしまうほど目立ちます。私は復刻したMellotron Mark VIの実機を所有していますが、曲によってM-Tronと使い分けて録音しています。丁寧にサンプリングされた音色、使いやすさ、見た目の雰囲気、メンテフリー、そしてコスト・パフォーマンス。Mellotron Mark VIが楽曲に合わないときはM-Tronのご登場! オケに良い感じに混ざって、楽曲に花を添えてくれます。そんなM-Tronが渾身のバージョン・アップ! さて、どのように変身したでしょうか?早速、APPLE Mac G5にインストールし、DIGIDESIGN Pro Tools 8でRTASプラグインとして立ち上げてみました。ちなみに本製品はスタンドアローンのほか、Audio Units、VSTにも対応。見た目はフタの奥行きが以前より増えて実機な感じで、雰囲気もバッチリ。フタを開けてみると、ちょっとしたシンセのようなツマミ類が出てきました。前バージョンのM-Tronはアタック、リリース、トーン・コントロールだけでしたが、今度のM-Tron Proでは実機に無いA/Bレイヤーと各レイヤーのレンジ設定によるスプリット、スプリットやレイヤーの設定、ディレイ、カットオフ/レゾナンス付きのLP/HP/BPフィルター、テープの逆回転や半速(Mellotron Mark VIには付属)、LFO SPEED/AMOUNT/SYNC、FILTER ENVELOPE、AMPLITUDE ENVELOPEとシンセのさまざまなパラメーターも多数。さらにMIDIラーン機能でMIDIコントローラーでも操作可能です。フィルターのアフタータッチで音色も調整することもできるとのこと。今まではM-Tronの後にEQやフィルター、ディレイなどのプラグイン使っていましたが、M-Tron Proは曲中でフィルターを開いたり閉じたり、ディレイを増やせたり、簡単に外部のコントローラーでツマミを操作できるので直感型ミュージシャンには最適。きちんとMellotronにリスペクトしながら、現代の音楽制作にマッチした作りになっております。

楽器のジャンル別に分類された
700以上のプリセットを収録


実際に音を出してみましょう。う〜ん、素晴らしい! 前バージョンに比べてしなやかで、実に気持ちのいい音色。プリセットは700以上もありますが、きちんと楽器ごとのジャンルに分けられており、迷わず目的の音色を選ぶことができます。その中から印象的なパッチを幾つか紹介しましょう。まずはArtistバンクの“Rick Wakeman”はイエスですよね〜。非常に美しい“Elegant Church Choir”やプログレ・ストリングス“Wide Yes Strings”も収録。これだけず〜っと弾いていたい音です。Bassバンクでは、HÖFNERが入っていて、これはこれで使える音です。低域もしっかりあり、ウォームなのに立ち上がりも良く、普通にベースとしてバッチリ。Chamberlinバンク“Solo Female Voice”は女性が目の前にいるような音像です。S/Nも良く、本当に気持ち良い。Flutesバンクの“Flutes”はもちろんあの音です。欲を言いますと、再生ヘッドがテープに当たるときに、実機はカツッという音がアタックに少し混ざって聴こえますが、これもツマミで混ぜることができたらなお最高でした。Organバンクの“PipeOrgan”は最近のシンセなどと違ってクリアではないのですが、テープのひずみ感が哀愁を醸し出していて良いですね。GuitarsバンクではE-Bowが新鮮。和音で出ます。Optiganバンクのループも良い味出しています。これはぜひ何かで使ってみたいですね。Pianoバンクの“MK II Piano”はローファイで不思議な音像。ディレイをつければアンビエントでハマりそうです。アビイ・ロード・スタジオでリマスターされたバンク、Remasteredはつや、コク、しなやかさと三拍子そろってます。素晴らしい! これだけでもバージョン・アップする価値あると思います。さらにループされているRemastered Loopedバンクもあるので、テープの終わりを気にすることなく、弾くことができます。定番StringsはM300とMk II系がポップスで使いやすいでしょう。Vibesバンクも素敵です。1960年代のレコードの感じにぴったり。Effectsバンクには“ホワイト・アルバムのあの音!”が入っていたので、思わず笑ってしまいました。今回のバージョン・アップで素晴らしいのは、音色の向上もさることながら、やはりエディット機能とエフェクトだと思います。駆け足で見てきましたが、M-Tron Proは単なるプレイバック・サンプラーにとどまらず、Mellotronの未来がここにあるような気がします。
GFORCE
M-Tron Pro
オープン・プライス(市場予想価格/17,850円前後)

REQUIREMENTS

■Windows/Windows XP(SP2)/Vista、INTEL Pentium 4 1GHz以上のCPU、512MB以上のRAM、5GB以上のハード・ディスク容量
■Mac/Mac OS X 10.4以降、PowerPC G4 1.25GHz以上のCPU、5GB以上のハード・ディスク容量