新プラグイン10種の追加でより強化された音楽制作ソフトの最新版

IMAGE-LINEFL Studio 8

ベルギー生まれのFL Studioは、グルーブ・マシン・ライクなドラム入力機能などループ・ベースの音楽を強く意識した構成で、ヨーロッパを中心に人気が高いWindows用音楽制作ソフト。日本でも熱心なユーザーを中心に独自のシーンを形成している。そしてこのたび、バージョン8のフラッグ・シップ・モデルXXL Editionとエントリー・モデルのFrutity Editionが発売された。今回はXXL Editionをチェックしていこう。

プラグイン“Edison”が進化
波形編集がより効率アップ


FL Studioシリーズは、プラグイン音源の集合体のような構成を備えているのが特徴。通常のDAWソフトのトラックにあたるのが“チャンネル”で、それらがプラグイン音源と一体になっている。トラックを作成してそこへ音源を挿入するのではなく、グルーブ・マシンを並べていくようにチャンネルを追加していく仕組みなのだ。もちろんMIDIやオーディオも扱うことができ、その場合にはMIDI入出力やオーディオ入出力、プラグインなどを備えた“チャンネル”を追加する。さて、FL Studio 8では、オーディオ録音/波形編集プラグイン、“Edison”の機能強化が目覚ましい。“Edison”上の波形データが、任意の場所のオーディオ・トラックに一発で変換可能となった。また、ドラムをスライスしテンポを変えるときなどに生じる“すき間”を賢く補完してくれる。さらにオーディオからMIDIへの変換機能で、プラグイン音源を鳴らすこともできる。新搭載のプラグインも多い。10種類が追加され、トータル26種類の音源と38種類のエフェクトが付属する。なかでもユニークなのは、シンセやエフェクターを自作できる“SynthMaker”。オシレーター/フィルター/ディレイなどのモジュールを自由に組み合わせ、オリジナルのプラグインを作成できる。またエフェクト系では、新搭載の“Fruity Limiter”が目を引く。コンプ/リミッター/サチュレーター/ノイズ・ゲートの複合機で、FLシリーズらしくガッツリ効く。面白いのはユーザー・インターフェースで、演奏中の波形が表示され、どのように効いているかが刻々と表示され、初心者が戸惑いがちなアタックやリリース・タイムの設定も簡単に行えるだろう。

遊び心や機能面で変貌を遂げた
ユーザー・インターフェース


バージョン8のビジュアルは背景部分に大きく描かれたマスコット・キャラの“FL-Chan”が特徴的。もちろんプレーンで地味なウィンドウ・デザインにも変更可能だが、この辺りのアキバっぽいノリがこのソフトの個性だ。また、プラグインの“Fruity Dance”では、曲に合わせて踊るFL-Chanを出現させることも可能。もちろん趣味的な要素だけでなく、操作性に直結する強化も多い。FLシリーズはグルーブ・マシンのようにパターンを組み合わせて曲を作るのは冒頭で述べたが、そのパターンを選択するパターン・セレクターを右クリックすると、使用中のパターンが一括表示される。さらにプラグインの“Wave Candy:”で波形表示やスペクトル表示も行える。この辺り、視覚的にモニターできる利便性と共に、ライブでディスプレイに映したりすると盛り上がりそうだ。FLシリーズは、やはりフットワークの良さが魅力。バージョン・アップで機能が増えたにもかかわらず、軽さは健在。また、これほどの多機能ソフトでありながら価格も抑えられている。しかも、ほとんどのオーディオI/Oに対応したASIOドライバー、ASIO for Allも付属。コンピューター+FL Studio 8の組み合わせは、現在最もコスト・パフォーマンスの良い音楽制作システムだろう。DXiやVSTのプラグインとしても動作するのでサブシステムにしてもいいし、もちろんメインになり得るポテンシャルも持っている。とにかく百聞は一見にしかず、強力な体験版も無料ダウンロード可能なので、ぜひ触ってみてほしい。20080801-12-002

▲コンプ/リミッターのプラグイン、Fruity Limiter。ゲインの変化など効果をリアル・タイムにビジュアル化し、演奏中も効きを確認することができる


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▲こちらもバージョン8から追加になったプラグインSynthMaker。画面右側のモジュールを自由に組み合わせ、シンセサイザーやエフェクターを自分で作ることが可能

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FL Studio 8
XXL Edition/42,000円
Fruity Edition/16,800円

REQUIRMENTS

▪Windows2000、XP、Vista(XP以降を強く推奨)、1GHz以上のCPU(Dual CoreCPUを推奨)、512MB以上のRAM(1GB以上を推奨)、ASIO対応オーディオ・インターフェース、DVD-ROMドライブ、200MB以上のハード・ディスク空き容量