盤石なサンプラー部に加えオーディオI/OにもなるSPシリーズ新鋭機

ROLANDSP-555

新製品はやっぱり大好きです! ということで、今回レビューするのはSPシリーズの新しいサンプラー、SP-555。同シリーズといえば、初代のBOSS SP-202という、当時大人気となった製品を思い出しますし、実際自分でもバリバリ使用しておりました。最近ではROLAND SP-404やSP-606があり、DJプレイやライブといったパフォーマンスをはじめ、効果音出しの場面にも威力を発揮するなど、サンプルを加工してプレイバックするという作業を簡単に可能にしてくれるシリーズです。今回のSP-555はさらにアップデートされており、多様な場所で活用されること間違い無しの機能を装備。その多機能ぶりには後ほど細かく触れていきますが、驚くことが多過ぎ......。というわけで、早速レビューしていきましょう。

シンプルなパネル配置と
SPシリーズならではの操作感


送られてきたSP-555を見てびっくり。本機はサンプラーでありながら、とにかく多機能です。まずは特長を簡単に挙げてみます。
●簡単操作で即サンプリング可能
●ソースを選ばない多彩な入力端子
●大容量コンパクト・フラッシュに対応
●ライブ・パフォーマンスを彩るリアルタイム・エフェクト
●Dビーム/V-LINKによるパフォーマンス
●USBオーディオI/O機能の装備
●DAWソフトのCAKEWALK Sonar LE付属(Windows XP/2000対応)フロント・パネルを見ると、大きく分けて左側上よりインプット、エフェクト、ループ・キャプチャー、右側がサンプリング、パッドの各セクションに分かれています。パッと見でもササッといじれるほどツマミやパッドの配置が分かりやすく、思い付いた作業を即座にボタンを押すことですぐに実行できそうですね。で、まずはサラッと取り扱い説明書を見つつ、電源を入れていろいろといじってみました。まずはプリセットで入っているサンプルを使って、全体のチェック。SPシリーズではご存じの通り、パッドをたたけばアサインされているサンプルが発音するので、難しいことを考えずにいろいろいじっていくだけで楽器的にプレイできちゃいます(写真①)。とにかく直感的な操作だけでひたすら遊ばせていただきました。これ、楽しいですね。▲写真① 打感の良いベロシティ付きサンプリング・パッド。内部メモリーで32(16×2バンク)、さらに外部のコンパクト・フラッシュで128(16×8バンク)のサンプルを追加スタンバイ可能 プリセット・サンプルはリズムのワンショットものはもちろん、ループものも各種入っています。音質は非常にクリアで伸びがあり、レンジも広いと思いました。後で自分が音を取り込むときの感じが見えるというか、素直にサンプリングされた音がそのままきちんと再生されるんだろうなという安心感を持てます。なお、入出力端子はリアにライン・イン&アウトを各ステレオ1系統(RCAピン)、MIDI IN/OUT、USBを装備。トップ・パネルにはXLR/フォーン兼用の入力端子が備えられています(写真②)。▲写真② 入力端子はリア・パネルのライン・イン(RCAピン)に加えトップ・パネルにも用意。XLR/フォーン兼用端子で、マイクからライン楽器、さらにはHi-Z切り替えによってギターやベースも直結可能。さらにマイク(写真左)も内蔵している

選べるサンプリング・モード
内蔵マイクでの取り込みにも対応


さて、特長を1つずつ詳しく見ていきたいと思います。まずはやはりサンプリング。本体メモリー使用でステレオ時は最長約5分。2GBのコンパクト・フラッシュを使用すれば何とステレオで最長約772分まで可能という驚きのサイズ。長めのステレオ・フレーズでも残り時間を気にすること無く取り込んでいけます。数秒しか取り込めなかったなんて大昔のことのようですね。すごくありがたいです。まずはガシガシいろいろな音をため込んでいくと良いと思います。サンプリング・モードは2種類が用意されており、スタンダード・モードでサンプリングした音質はとても良い印象。逆にローファイ・モードへ切り替えることによって粗めなサウンドでサンプリングできるのもうれしいところです。入力端子に関しては、先述したようにトップ・パネルのマイク/ライン(XLR/フォーン兼用)とリアのライン(RCAピン)に加え、内蔵マイクまで用意。CDプレーヤーからその場の声まで気になった音を即取り込めるのは便利です。サンプルは任意のパッドを選んで取り込んでいく方式で、ループ、リバース、ロール再生など多彩なプレイに対応。内蔵のパターン・シーケンサーによって、サンプルの演奏を記録することも可能です。また、サンプルは内蔵エフェクト(後述)で加工した後、リサンプリングもできますので、自分なりのサウンドを追求していく作り方もアリでしょう。さらに新機能のループ・キャプチャーでは、入力端子に接続した機器やパッド演奏から簡単にループ・フレーズを取り込むことが可能。オーバーダビングすることにより、ループをさらに重ねて構築していくこともできます。また、ペダル・スイッチを使っての操作にも対応しているので、リアルタイム・パフォーマンスも行えます。

特にフィルター系エフェクトが秀逸
Dビーム・コントローラーも面白い


サンプルの加工時はもちろん、ライブ・パフォーマンス時にも活躍するのが内蔵エフェクトです。37種類が用意され(同時使用は1種類)、SUPER FILTER/VOICE TRANS/DELAY/ISOLATOR/DJFX LOOPERの5種類は専用ボタンからワンタッチで選択可能。DISTORTION/RING MOD/FLANGERなど残りの32種類はMFXボタンからバンク/パッドで選択します(写真③)。▲写真③ エフェクトは37種類を用意。特に使用頻度が多いと思われるSUPER FILTER、VOICE TRANS、DELAY、ISOLATOR、DJFX LOOPER(ターンテーブルライクな効果が得られるエフェクト)は専用ボタンでアクセスすることができる 特にフィルター系のかかり具合には驚かされました。パラメーターを操作するEFFECTSツマミの動きからして滑らかで絶妙。スムーズにフィルターの開け閉めもできれば、微妙なポイントでうまくとどめておくこともでき、実際に本番で使うときにはかなりの威力を発揮するだろうという手応えを感じました。その他のエフェクトに関しても素晴らしく、3つのEFFECTS CTRLツマミを駆使してオリジナルなプレイをしてみるのも面白いですよね。ちなみにSP-555ではユーザーの好みのエフェクト・セッティングもメモリーでき、最大16種類のエフェクト設定を記憶させておいて素早く切り替えることが可能です。さらにDビーム・コントローラーでのプレイもでき、SYNTH/FILTER/TRIGGERのいずれかがコントロールできます。

オーディオI/O機能とSonar LE付属
一連の制作が本パッケージで完結


また、本製品はUSBオーディオI/Oとしての使用も可能となっています。ステレオ1系統の入出力ができ、16ビット/44.1kHz対応。オーディオ・ドライバーは、Windows XPはWDM/ASIO、Windows VistaはASIO、Mac OS XはCore Audioとなっています。ちなみに本機からパソコンへ送られる信号は、工場出荷時では入力ソース/パッド演奏/内蔵エフェクトなどすべてがミックスされた状態(ライン入力をそのまま送る設定なども可能)。逆にパソコンから送られてきたサウンドに内蔵エフェクトをかけることもできます。もうですね、こんなに機能満載で良いんですか! 太っ腹過ぎです。しかも本機にはSonar LEが付属していますので(画面①)、ドライバー/Sonar LEをインストールしてしまえば本機をUSBケーブルでパソコンに接続するだけで、そのまま制作に突入できちゃいます。例えば、Sonar LEでベーシックな形を作り込み、WAVやAIFFのオーディオ・ファイルに変換したものをコンパクト・フラッシュ経由でSP-555へインポート。そして本機のエフェクトなどでサンプルを加工し、さらにはそれをライブ・パフォーマンスで使うといった一連の作業がこのパッケージで完結するわけです。作業環境がシンプルな分、"音を作る"という行為に集中できるのはとてもうれしいことじゃないでしょうか。これだけ多機能であるにもかかわらず、1つ1つの機能がすごくしっかりしていると思います。▲画面① 本機に付属するDAWソフト、CAKEWALK Sonar LE(Windows XP/2000対応)。24ビット/192kHz対応、内部演算32ビット浮動小数点処理など高度なスペックを有する 本機は"音を作り込みたい人""ライブでガシガシにパフォーマンスしたい人"の両方にアピールできる機材。音楽に対してさまざまな思いを持つ方々が、何かを始めるための第一歩を確実に踏み出せる機材になると思います。

▲リア・パネル。左からDCイン、電源スイッチ、USB、MIDI OUT/IN、フット・ペダル入力(フォーン)、ライン・イン×ステレオ1系統(RCAピン)、ライン・アウト×ステレオ1系統(RCAピン)を装備

ROLAND
SP-555
オープン・プライス(市場予想価格/63,000円前後)

SPECIFICATIONS

■最大同時発音数/12
■サンプリング周波数/44.1kHz
■A/D&D/A/24ビット
■データ・フォーマット/SP-555オリジナル(WAV/AIFFインポート&エクスポート可能)
■サンプリング・モード/スタンダード、ローファイ
■本体メモリー/サンプル数:32(16サンプル×2バンク)、パターン数:32(16サンプル×2バンク)
■コンパクト・フラッシュ・メモリー/サンプル数:128(16サンプル×8バンク)、パターン数:128(16サンプル×8バンク)
■パターン・シーケンサー/最大記録音数:約8,000音(本体メモリー)、分解能:96ティック(4分音符)
■エフェクト/37種類
■インプット/ライン(RCAピン)、マイク(フォーン/XLR、Hi-Z対応、ファンタム電源付き)
■外形寸法/280(W)×73.7(H)×263.7(D)mm
■重量/1.8kg(ACアダプター除く)