リボン・マイクでおなじみのROYERの創始者、デヴィッド・ロイヤー氏。彼が1985年にカリフォルニアのフラートンにある自宅ガレージで、各種プロ用機材の完全受注というワンマン工房としてスタートさせたのが、このMOJAVE AUDIOです。
1990年ころからそのクオリティの高さが評判になり、ボブ・クリアマウンテンなど、世界に名だたる名エンジニアたちが認めたという質実剛健な機器メーカーの日本上陸。ROYERの設立が1998年ということなので、その10年以上前からガレージでがさごそと何やら研究開発を行っていたわけで、エンジニアからの依頼を受けてはマイク以外にもマイクプリやコンプレッサーなども製作しているそうです。そんなMOJAVE AUDIOからラインナップ第一弾として届けられたのは、MA-200なる真空管コンデンサー・マイク。では、調査開始！
手作業で選別したカプセルを搭載し
シンプルな回路設計で高音質を追求
基本的なスペックにざっと目を通していきますと、直径約2.5cm、厚さ３μのゴールド・ダイアフラム、ミリタリー・グレードのJAN5840真空管（ROYER R-122Vに使用されているものと同じ）、JENSENトランスの採用など、高品質なパーツを厳選して作っていることをアピールしています。カプセルは１つ１つ手作業で選別し、回路自体をシンプルに構成することで高音質を目指しているそうで、PADや指向性切り替えなどのオプション機能は何も付いていないという潔さ。本機に対する期待は膨らむばかりです。また、本体およびパワー・サプライ、ケーブルに至るまで、出荷前には24時間の通電テストを経て世に送り出されるという徹底ぶり。その上で生産ラインのコストを抑え、非常にお求めやすい価格になっています。と、はるかモハビ（MOJAVE）の砂漠から、やる気がヒシヒシと伝わってくるではないですか。ちなみに付属品として、専用ショック・マウント、パワー・サプライ、ケーブルがハード・ケースに美しく収納。こういうものが標準装備というのは、実にありがたいことです。
高域と低域のヌケの良さで
楽器の特徴をリアルに表現
早速試してみましょう。今回はNEUMANN U87AIと比較しながら音を拾ってみました。まずは、ハワイアン・スラック・キー・ギターの収録があったので、MA-200とU87AIを２本並べてアコースティック・ギターの録音です。楽器はつややかで透き通った美しい音色が特徴的なSHIMO製のギター。サウンド・ホールとネックのセット部分の間を狙う定番のマイク・セッティングにしてみました。まずはU87AI。生音ではあまり気にならなかったローミッドが膨らんで聴こえてしまい、何となくEQで調整したくなる部分を感じます。続くMA-200はそうした印象はなく、楽器の特徴をよくとらえていると思いました。高域はU87AIと似た印象ですが、ハイエンドはわずかに高く感じます。それ故かパーカッションやベースなど、ほかの楽器が混ざったときのヌケが心地良く感じました。また、低い弦を弾いたときの低域の抜けもいい具合。スペック的にはU87AIの方が広い周波数特性を表示しているのに不思議なものです。次にウクレレを録ってみました。ストロークでは高域のヌケの良さが効いて、程よくオケになじんでいると思っていたMA-200でしたが、単音でのソロ・フレーズになると、U87AIの腰の強さに一票投じたくなりました。MA-200の真空管らしい中高域の温かさも捨てがたいと思ったものの、ここはU87AIを採用。U87AIのフラットな特性が有利に働いた良い例でしょうか。さらに、高音圧への対応も売りの１つとのことなので、ドラムのオーバーヘッドにも試してみました。今回レビュー用に届いたのは１本だったので、セット中央付近をタムから1mくらい上の位置から狙ってみることに。すると、どのパーツもぼやけることなくリアルな鳴りを拾っています。軽くキックのマイクを追加するくらいで、かなりしっかりした全体像を得ることができました。デヴィッド・ロイヤー氏の20年以上にわたる研究で、彼のノートはマイクのデザインであふれているとのこと。ラインナップには、PADや指向性パターンの切り替えなども装備したマイクの準備もあるようで、今後の展開にもかなり期待の持てるメーカーではないでしょうか。
SPECIFICATIONS
■指向性／単一指向
■周波数特性／30Hz〜18kHz（±2.5dB）
■インピーダンス／200Ω
■最大音圧入力／132dB@20Hz、135dB@32Hz、136dB@100Hz、1kHz、10kHz
■セルフ・ノイズ／14dB
■歪率／１％以下@117dB、３％以下@125dB
■付属品／ハード・ケース、パワー・サプライ、ショック・マウント、ケーブル
■外形寸法／50（φ）×193（H）mm
■重量／630g
