クリアな音像と余裕の低域を実現したPA用ポータブル・スピーカー

ELECTRO-VOICEZX1

サウンドの入口と出口に一貫してこだわり続けているメーカーELECTRO-VOICEから、PA用ポータブル・スピーカーZXシリーズの末っ子となるニュー・フェース、ZX1がこの度発売されました。モニター・スピーカーFMX1502や屋外でも高音質な出音を再現できるSXシリーズなどの人気モデルを有する、PA業界でもよく知られたメーカーだけに期待が持てます。今回はZX1単体のほか、同社のサブウーファーSB122(71,400円)を組み合わせて使用した2通りのパターンから、ZX1の持つ実力をレビューしていきたいと思います。

くっきりと際立つ低域と定位感
音ヤセを抑える高域のホーン形状


同社は前述したPA用ポータブル・スピーカーSXシリーズを発表したことで、軽量&コンパクトながら高音質&高出力という両要素を実現。PA現場におけるそれまでの常識を覆しましたが、本機もその長所をしっかりと踏襲し、コスト・パフォーマンスに優れたモデルとなっています。本機は203mmの防滴型ウーファーと、上位モデルにも搭載されている25mmコンプレッション・ドライバーを装備した2ウェイ・パッシブ・タイプで、クロスオーバー周波数は1.7kHzに設定されています。ボディ素材は、現在多くのポータブル・スピーカーで主流となっている成形ポリマーを採用。これにより軽くて頑丈で、耐水性も良いのが特長です。また側面はアングルを付けた非対称なデザインとなっており、横向きにして床置きすると、フット・タイプのモニター・スピーカーとしても使用することができます。またセッティング環境に応じてプラス・ドライバー1本で高域のホーンを90度回転させることができ、指向パターンを変化させることが可能。より幅広い用途に合わせることができそうです。なお、入力はリア・パネルにあるスピコン端子へスピーカー・ケーブルを接続するだけです。それでは、まずZX1単体での音をチェックしていきましょう。本機はパッシブ・タイプなのでもちろんパワー・アンプが必要です。今回はAMCRON MA-602でドライブさせてみたいと思います。 同社の汎用スピーカー・スタンドTSP-1(19,950円/2本)にセットしたら、サウンド・チェック用のCDを再生してみます。すると、このクラスのウーファーでは考えられないほど低域の音像がはっきりとしていて、無理に出力している窮屈な印象も、飽和した様子も無いのは驚きです。全体的にもクリアで素直な音。高域のホーン形状もかなり計算して設計されているためか、スピーカーから離れて聴いても定位感が崩れることなく、音ヤセも極力抑えられています。さらに、ウーファーとコンプレッション・ドライバーのつながりも非常にスムーズ。違和感が無いのが好印象です。

サブウーファーを組み合わせることで
より広いレンジと分離のよい出音に


ここで偶然にも、新規オープン前のライブ・ハウスで使用できる機会があったので、実際にバンドに演奏してもらい、その出音をチェックすることにします。バンドはアルト・サックス、ピアノ、ボーカルを含む6人編成。ダイナミック・レンジや周波数帯域が広く、スピーカーの実力を知るにはうってつけだと考えたのです。早速演奏してもらうと、編成の多いバンドの生音にも負けずに、このクラスからは想像できない音量を再生できることに思わずびっくり。しかし、キックやベースに加えピアノも入っていることで、さすがにこのサイズのウーファーでは低域〜中低域のバランスが変わり、少し物足りない印象です。そこでサブウーファーSB122を組み合わせて低域を補強してみることにします。サブウーファーのセッティングを済ませ、再度バンドに演奏してもらいます。するとZX1単体では分からなかったベースの重量感が見事に再現され、キックの重心もどっしりと下がったことで、ピアノやベースとも奇麗に分離しました。単体では低域にたまっていた低音の塊が、ローエンドへ広がったことで中域の抜けも良くなり、再現されている周波数帯域がより広くなっているのが分かります。今回のような、音域の広い編成のバンドなどにまさにうってつけなのではないでしょうか。ライブ・ハウスはもとより、パーティ会場、屋外イベント、ジャズ・バーなど、省スペース、軽量を生かせるシチュエーションはさまざまあります。もちろん本機のサイズなら自宅でモニター・スピーカーとして使用することも可能でしょう。ZX1単体でもよし、サブウーファーと組み合わせた本格的なPAシステムを構築してもよし。"軽量、コンパクト"と"高音質、高出力、低価格"はもはや相反するものではない感のある昨今。同社の技術力の高さにあらためて脱帽する注目の1台です。
ELECTRO-VOICE
ZX1
45,150円/1本

SPECIFICATIONS

■形式/2ウェイ・パッシブ方式
■周波数特性/60Hz〜20kHz(−3dB)
■クロスオーバー周波数/1.7kHz
■連続許容入力/200W(800Wピーク)
■出力音圧レベル/94dB
■公称インピーダンス/8Ω
■外形寸法/282(W)×457(H)×264(D)mm
■重量/8.4kg