【製品レビュー】オールマイティかつ剛性に優れ、太い音が魅力のダイナミック・マイク

AUDIXI5

最近では、低価格で高性能なコンデンサー・マイクが数多く発売され、ダイナミック・マイクは注目されることが少なくなっているのが現状でしょう。しかし、コンデンサー・マイクでは録音する素材に合わないことも多く、特にバンドもののスタジオ・レコーディングでは、実はダイナミック・マイクの方が使う本数が多かったりします。さらに言えば、ダイナミック・マイクもその種類によって大きく音色が変わるものなのです。筆者はコンデンサー・マイクと同様に、ダイナミック・マイクも複数所有し、使い分けています。今回は、AUDIXから発売された低価格、かつ多目的に使えるダイナミック・マイクを、筆者所有のマイクと比べつつ早速チェックしてみましょう。

亜鉛合金製の丈夫なボディと
使いやすい広めの単一指向性


まず、外見の特徴は亜鉛合金製の丈夫なボディ。ドラムに使って、誤ってスティックでたたいてしまった際などにも、割れたりへこんだりしにくそうな作りです。サイズは、マイク・ホルダーの当たる部分の太さがSHURE SM57をほんのわずか太くしたくらい、長さはSM57より横に指1本分くらい短くなっています。SHURE SM58やSM57のマイク・ホルダーにもそのまま使えました。肝心な音の収録部分であるダイアフラムの大きさは、大体SM58と同じくらいのようです。マイクの仕様は単一指向性で、最近のマイクに多い指向性の狭いものとは違い、ある程度広いので使いやすい部類に入るでしょう。マイクのセッティングに慣れていない人でも位置決めがやりやすいと思います。最大SPLも140dBあり、ドラムからボーカルまでのダイナミクスに難なく対応できます。付属品はソフト・ケースとマイク・ホルダーで、各種スタンドに合うように変換アダプターもあるのがうれしいところです。1本1本にシリアル番号がレーザー・エッチング加工してあるなど、ちょっとしたこだわりもかいま見せてくれます。

音が太く中低域が充実
低域のレスポンスも良好


では実際に使ってみた感想をレポートしましょう。まず、マイクプリのゲインを適度に調整して固定し、マイク自体のゲインを筆者が所有しているほかのダイナミック・マイクと聴き比べてみたのですが、本機の方が明らかに大きい音量でした。S/N的にも稼ぎやすくなっています。肝心な音質の方は、まず第一印象で音が太いな〜という感じで、重低音は程よくロールオフされており、変な鳴りを拾うことはありませんでした。ただ、手で持って使った場合、感度が良いからかハンドリング・ノイズが意外にあるので、本機を使う場合は固定した方が良いでしょう。また、吹かれにも少々弱く、ボーカルを録る際はポップ・スクリーンなどを取り付けた方が良いと思います。具体的な音色の傾向ですが、中低域が充実している分中域が少々へこんだ感じで、高域はキンキンした感じも無くなだらかに出ています。あまり高域が良く抜けている印象は無いのですが、決して出ていないわけではないので、変に音が軽くないのが特徴でしょう。実際の楽器で音を聴いてみた感じですが、クリーン・トーンのエレキギターをアンプで鳴らした場合、ほかのダイナミック・マイクだと2kHz辺りのキンキンした部分をカットして低域を膨らませるようなEQが必要になったりするのですが、本機ではそのままEQせずに使えました。ガツンと前に出てくる感じではないのですが、どちらかと言えば扱いやすい音色と言えます。オケの中でのバッキングなどでは、逆に本機の方がなじんで良い感じでした。個人的な意見ですが、エレキギターのアンプに立てた場合にはコンデンサー・マイクとダイナミック・マイクの中間くらいの印象があり、音色による使い分けができると思います。ディストーション・ギターでも、中低域のレスポンスが良い分ローポジションのパワー・コードなどでは特に好印象でした。次にドラムで試してみたのですが、やはりDシリーズを出したメーカーの製品だけあって、タムの鳴りっぷりなど難なく聴かせてくれます。全体的に古くさく録音するのは少々苦手かもしれませんが、現代的なレンジ感のあるドラムでは威力を発揮しそうです。今回は1本のみでしたので、ぜひマルチマイクで試したいですね。ボーカルに関しては、今使っているマイクの変な中域の生々しさが嫌な人や、太い声で録りたい人なら試してみる価値があると思います。また、ベース・アンプに使ってみた感じでは、フレーズものだと変にモコらず音が見えやすい印象でした。筆者もAUDIXのDシリーズやVX、OMシリーズなどを所有しておりますが、本機も全体的な印象ではAUDIXらしい音色と言えそうです。さらに同メーカーの中でも万能マイクとして使える位置づけにあるというのは音を聴いて分かりました。音の傾向的に従来のダイナミック・マイクとは全く違う、どちらかと言えば新しい形の万能マイクに仕上がっていると思います。ダイナミック・マイクで、SM57と本機があればライブからレコーディングまで幅広く使えるでしょう。ちなみに、混ぜて使っても好印象です。私もマイクのバリエーションとして買い、使い込んでみようと思いました。
AUDIX
I5
11,550円

SPECIFICATIONS

■指向性/単一
■周波数特性/50Hz〜16kHz
■感度/1.9mV/Pa@1kHz
■インピーダンス/バランス150Ω
■最大SPL/>140dB
■軸外除去/>23dB
■外形寸法/37.5(φ)×141.5(H)mm
■重量/184g
■付属品/ソフト・ケース、マイク・ホルダー