単一/無指向性をネジ式カプセルで切り替える2本組みコンデンサー・マイク

STUDIO PROJECTSC4

STUDIO PROJECTSは、米国カリフォルニア州の新興マイクロフォン・メーカーで、製品設計や部品のチョイスなどを完全に自社で行い、製造を40年以上の歴史と実績を誇る中国の797AUDIOで行っています。同社から初となるスモール・ダイアフラムのスティック・タイプFETコンデンサー・マイクロフォンの2本組セットC4が発売されました。以前、コンデンサー・マイクTB1をレビューしたときに価格から予想される以上のサウンドで非常に驚かされた記憶があります。では、C4をいろいろとチェックしてみましょう。

PADやフィルターを備えた堅牢な設計
プリアンプ部はディスクリート回路を採用


STUDIO PROJECTSをはじめ、新規参入のマイクロフォン・メーカーが送り出す製品のコスト・パフォーマンスには目を見張るものがあり、本機もそのカテゴリーの製品と言えるでしょう。2本のマイクは工場出荷時にマッチングが行われ、標準で単一指向性カプセルが装着されています。加えて無指向性カプセル、サスペンション・ホルダー、スポンジ・タイプのウインド・スクリーンが各2個ずつ用意されたセットです。なお、これらは輸送時にダメージが与えられないよう硬めのスポンジで保護され、非常に軽く携帯性に優れたハード・ケースに収納されています。外観はNEUMANN KM84、AKG C60などに似ており、本体に−6dB/octカーブ(リニア、250Hz)のハイパス・フィルター、−10dB PADの出力3タイプ切替スイッチを装備。プリアンプ部にはディスクリート回路を採用し、増幅およびバランス変換され出力されます。PAD使用時で150dBの耐圧を持っていますので、かなりの大音量に対しても確実な収音が可能でしょう。また、金メッキが施されたXLR端子を採用しているのは細かいことですが、うれしいところです。電源供給はファンタム電源方式を採用しており44〜52Vに対応。そして、マイク・カプセルはネジ式構造を採用し簡単に脱着が可能で、単一指向性、無指向性のものが用意されています。なお、これらのカプセルには指向性の表記がありません。レコーディングのときに付け間違ったりもしますから、何か目印となるものがほしいところです。

ノイズが低く十分な出力ゲイン
単一指向性では中域にガッツを感じる


今回、キューン・レコード・スタジオにて桜井秀俊氏の協力のもと、アコースティック・ギターなどをソースにサウンド・チェックを敢行。マイクプリにMASTERING LAB MicPreampを使用し、UREI 1176も併用しました。なお、比較試聴用マイクにはDPA 4003、4012、AKG C451を用いています。まず、セッティング時に感じたのはサスペンション・ホルダーのホールド感がよく、安心感を与えてくれるものだったことです。さらに可動幅が広くマイク・アレンジにおける制約感が少ないなとも感じました。音を聴いて最初に感じたのは、出力ゲインが高いこと。4012と比べほぼ同等、C451とは聴感上で約6dBほど高いくらいです。残留ノイズも少なく、4012に比べ約3dBほど低いくらいで、ゲインをかなり上げても気にならず、よく作られているマイクだと思いました。肝心のサウンドですが、単一指向性では4〜8kHzに緩やかなピークを持ち、100Hzくらいから下に自然なロールオフ・カーブがあります。特に中域にガッツがあり、C 451とは全く逆方向のサウンド・キャラクターで、濃い感じの音です。指向性は一般的な単一指向性よりシェイプされており、心なしか鋭いため、恐らくマルチマイク収音時の“かぶり”も少ないでしょう。また、無指向性のカプセルについては、100Hzくらいからのロール・オフ感が無く、全方向に対し周波数特性がフラットになっているのは見事でした。ダンピング感は、両指向性共に4003、4012に比べ若干劣りますが、C451と比べて大差は感じられません。マッチド・ペアであるため、ステレオ・イメージを優先すべき楽器に使用することが賢明だと思います。例えば単一指向性ではドラムやパーカッションのオーバーヘッド、ピアノなど、無指向性では各楽器のオフマイクやルーム・アンビエンスが向いているでしょう。ちなみに、本製品は指向性の切り替えをカプセルで行っているため、回路で行う製品に比べ部品点数も少なく、故障が少ないと思います。また、2本のマイク間による指向性特性も良好で、信頼性が高い製品と言えるでしょう。C4はマッチド・ペアであることが最大の売りと言えるでしょう。さらにこの価格帯でこれだけのサウンドを持っていることに驚かされます。確かに高級マイクやビンテージ真空管マイクに比べ、表現力、情報量、説得力が劣ってしまうのは否めません。しかし、現場で十分耐えうるサウンド・キャラクターや高い信頼性を大いに秘めていると思います。
STUDIO PROJECTS
C4
95,000円(ペア)

SPECIFICATIONS

■タイプ/シングル・ダイアフラム、モジュラーFETコンデンサー
■周波数特性/40Hz〜20kHz
■感度/12mV/Pa. (1Pa=94dB SPL)
■SN比/78dB
■ノイズ/16dB SPL(A-weighted per IEC268-15)
■外形寸法/20(φ)×124.5(H)mm
■重量/92g(1本)