デジタル入出力端子を装備した2chデジタル・エフェクト・プロセッサー

LEXICONMPX200

2chデジタル・エフェクト・プロセッサーであるLEXICON MPX200は好評だったMPX100の後継機で、AD/DA部がこれまでの20ビットから24ビットにスペック・アップし、エフェクト・プログラムに新デザインとなるデジタル・コンプレッサーが導入されたモデルだ。またフロント・パネルのレイアウトが一新され、ツマミの数が減りディスプレイ表示が多用されているのも特徴。早速、音色と操作性をチェックしてみた。

デジタル入出力端子を新装備し
さまざまなシステムに対応


1Uサイズで電源部を内蔵するにもかかわらず重量は1.41kgと非常に軽い。まず、フロント・パネルを見ると、MPX100では7つあったツマミが2つに減っている。1つはインプット・レベル用で、もう1つが汎用のアジャスト・ノブだ。その代わりにディスプレイが大幅に増強され、入力レベル、コンプの状態、エフェクトの種類、エフェクトのルーティング、エディットの内容、汎用ディスプレイと充実した表示内容になった。


リア・パネルを見ると、前モデルとの最大の違いはデジタル入力の装備で、これにより他の機器と入出力ともにデジタル接続することが可能になった(ただしワード・クロック入出力は無い)。テンポ設定およびフット・スイッチ端子やMIDI IN、OUT/THRU等はMPX100と同仕様。なおインプットはハイインピーダンス対応で、ギターやベースを直接入力することもできる。アウトプットはRだけを使うとモノラル、Lにはステレオ・ヘッドフォンを直接差し込むことも可能など、入出力がさまざまなシチュエーションに対応するように便利になっているのが印象的だ。


高品位な空間系エフェクトと
コンプが同時使用可能に


MPX200は基本的にデジタル・コンプ+マルチエフェクターで、コンプは常にエフェクトの前に位置し、Compボタンで独立してオン/オフできる。マルチエフェクターはシングルとデュアルの設定があり、デュアルの場合はルーティングがディスプレイに表示される。プログラムは1〜240までがプリセットで、さらにユーザーがエディットしたプログラムを64個メモリー可能だ。


まず、プリセット音をチェックしよう。せっかくの24ビットの機能をフル活用するため、アナログ接続だけでなく24ビット対応のサウンド・ボードとデジタル接続し、ソフトはMAGIX Samplitude Studio5.9で再生ビット数を確認しながらのチェックも行った。再生音は、オーディオにアナログ/デジタルで接続するとともに、直接MPX200にヘッドフォンも接続して聴いてみた。


プリセット1〜59まではリバーブ系プログラムで、音色はさすがLEXICON。アンビエンス、プレート、チェンバー、インバースといった各種リバーブ・サウンドはしっとりと落ち着いていて高級感がある。特に24ビットでデジタル入力したときの音場の素晴らしさは、数十万円の高級機に比べてもひけをとらないものだ。後述のようにエディットできるパラメーターの数は少ないものの、通常の用途でハイグレードなリバーブ専用機の導入を考えているユーザーには推奨できる。


プリセット60〜69のトレモロやロータリーも面白い。トレモロはサイン波だけでなく正弦波、三角波で強力にかけることができるし、レートをタップ・ボタンやフット・スイッチで調節することも可能だ。また、ロータリーもLESLIEスピーカーを丁寧にシミュレートしていて音色に適度のざらつきがあるし、レートを切り替えたときの時間変化もリアル。さらにコーラス、フランジ、デチューン、ピッチといったエフェクトもそれほど個性的ではないが堅実でハイファイ。ディレイはモノで最長5.5秒まで設定できる。


プリセット105〜109はコンプで、105/106はコンプをオン、ディレイ・タイムを0に設定したものだ。コンプのパラメーターはレシオ(2:1/3:1/5:1/10:1)、スレッショルド(−32dBから0dBまで1dB単位)、アタック(4/8/16/30/60/125msec)、リリース(4/8/16/30/60/125/250msec)と非常にシンプル。効き方は非常に正確で、音質劣化がほとんど感じられない。


プリセットの120〜240はデュアルのプログラムで、それぞれエフェクト内容とルーティングが表示される。2種類のエフェクトで複雑な音場を作ったり、LRで別のエフェクトを独立で使ったりすることもできる。かなり極端な設定にしても感触がハイファイなので、キーボードやギターでは音色作りの一部として大きな武器になるだろう。


シンプルながら必要十分な
パラメーター・エディット機能


さてMPX200では、プログラムのエディットのパラメーターが非常にシンプルになっている。マルチエフェクトの方のパラメーターはMix(ドライ/ウェットのバランス)、Adjust(エフェクトによって有効なパラメーターが割り振られている)、EQ(ハイカット)、Lvl/Bal(シングルではレベル、デュアルではエフェクト間のバランス)の4種類と、タップ・ボタンによるコントロールのみである。ルーティングやエフェクトの種類は変更できず、プリセットの中から適したものを選び簡単にエディットしていくことになるのだが、これが逆にエフェクトの選択やエディットをしやすくしており、いったん操作を覚えればアクセスは非常に速い。豊富なプリセットをチェックし、MPX200で何ができるかを把握しておけば、徹底的に使いこなすことのできる愛機になるだろう。基本的な用途ではこのくらいのパラメーターで十分なはずだ。また、外部MIDI機器によってパラメーターを操作することもできるので、ライブ用のエフェクトとして使うことも容易だ。


MPX200は、コンピューターを中心としたデジタル・システム、アナログ・ミキサーを中心としたシステム、ライブ用のエフェクトなどのいずれのシチュエーションでも、高品位のデジタル・エフェクター(特にリバーブ)の定番としてお薦めできる。まずは信頼できるヘッドフォンで艶のある音色を確かめてみると良いと思う。



LEXICON
MPX200
59,800円

SPECIFICATIONS

■入出力端子/アナログ・インL、R/MONO(フォーン/アンバランス)、アナログ・アウトL/Phones、R/MONO(フォーン/アンバランス)、デジタル・イン/アウト(S/P DIF、コアキシャル)、MIDI IN、MIDI OUT/THRU、フット・スイッチ(TRSフォーン)
■AD/DAコンバート/24ビット/44.1kHz
■周波数特性/20Hz〜20kHz(±1dB)
■全高調波歪率/<0.05%(20Hz〜20kHz)
■ダイナミック・レンジ/A/A:<95dB、A/D:<100dB、D/A:<100dB
■クロストーク/>55dB
■ファクトリー・プリセット数/240
■ユーザー・プリセット数/64
■外形寸法/483(W)×140(D)×45(H)mm
■重量/1.41kg