Ghost直系のヘッド・アンプを搭載したコンパクト・コンソール

SOUNDCRAFTSpirit M8

高価なヘッド・アンプやデジタル/アナログ・ミキサー、多機能で安価なコンパクト・ミキサーが続々とリリースされている昨今、ミキサーのグレードを向上させたいと考えている読者の方も多いだろう。そこにコンソールのしにせブランドSOUNDCRAFTからアナログ・コンソールSpirit Mシリーズが登場した。4/8/12チャンネルのラインナップの中から今回は8チャンネル仕様のSpirit M8をチェックしてみよう。

Spiritシリーズを継承する
サイズと操作性


まず、デザインから見ていこう。一見するとSpiritの前シリーズLive-4などからの構成を受け継いだシンプルなデザイン。ボディは黒く重厚感にあふれていて、パネルの印字やつまみが見やすい配色になっている。端子類もすべて前面にあって瞬時のパッチ変更などが確認しやすい。サイズは決して小さいとは言えないが、操作性を無視して"とにかく小さく"といった最近の傾向の中、このSpirit Mシリーズはチャンネル・フェーダーに100mmフェーダーを採用していたり、つまみも十分な大きさで操作性/機能性に優れている。しかも、11Uラックにマウントできるので、十分コンパクトと言えるだろう。


入力チャンネルは、モノ×8ch、ステレオ×4、リターン(ステレオRCA仕様)×4chで、モノ・チャンネルにはマイク(XLR)、ライン(TRSフォーン)、インサート(TRS)、ダイレクト・アウトが装備されている。ダイレクト・アウトはEQ後の音をプリ/ポストフェーダーに切り替え可能で、MTRなどに送る際のレベル合わせにかなり便利である。出力はMIX L/R(XLR)、MONO SUM、AUX×4ch(プリ/ポスト各2系統)、MONITOR L/Rで、MIXにはインサートも装備。そして、S/P DIFデジタル出力(同軸16ビット/44.1kHz)も付いている! このクラスでは十分な機能であろう。


高音質のヘッド・アンプと
デジタル・アウトを装備


では、実際に音を出してチェックしてみよう。音はSOUNDCRAFTの伝統をしっかりと引き継いだ腰のある太いサウンドで、最初に音を聴いた印象は"作られた感じの無いストレートな音だな"という感じだ。同社のGhostコンソール直系の高性能ヘッド・アンプを搭載しており、抜けの良い腰のあるサウンドと言える。適正レベルから少し突っ込んでも歪みにくく、音が濁らない。このクラスのコンソールだと、ヘッド・アンプは歪む上にレンジが狭くなってしまうものが多いが、このSpirit Mシリーズのヘッド・アンプはレンジも広く、数倍の価格帯のデジタル・コンソールと比較しても勝っている感じがする。良質なヘッド・アンプは、ミックスしたときに、定位も良くなりバランスが取りやすくなる利点がある。ファンタム電源も装備されており、コンデンサー・マイクの使用も可能だ。EQはLOW/HIGHがシェルビング、MIDが240Hz〜6kHzまでのピーキングの3ポイント・タイプで、100Hzのハイパス・フィルターを装備している。このEQはハイパス・フィルターのブースト/カット時に発生するMIDへの周波数干渉を減少させる新設計を採用していて、効きが良いというより、素直に原音を変化させる良い感じのコントロールができた。MIDの周波数の上下幅がもう少し欲しいところだが、EQでいじらなくてもヘッド・アンプの音質特性で取りあえず申し分ない。またステレオ・チャンネルのゲイン・コントロールや、リターンの4チャンネルをまとめるリターン・マスター・ボリュームが付いているのも親切だ。さらにAUXも4系統搭載され、小規模なPAなどに問題なく対応できるだろう。そして、何よりSN比の良さにびっくり! 残留ノイズのストレスをほとんど感じなかった。


ボーカル&アコギ、ボーカル&打ち込み、そしてドラムのPAミックスを試してみたが、どのようなソースを立ち上げても、ヘッド・アンプの良さがミックスをやりやすくしていた。ピーク成分の多いドラムを少し突っ込んで入れたときも、歪んだり濁ったりすることなく、それぞれの音像がしっかりして腰のあるサウンドにミックスすることができた。


さらに、もう1つの注目すべき点は、デジタル・アウトの装備だ。MIXバス・シグナルをDATやMDにダイレクト接続できるように、S/P DIF(同軸16ビット/44.1kHz、AKM製AK5392)デジタル・アウトを装備していて、マスター・フェーダーによるフェード・イン/アウトが可能だ。実際にデジタル・アウトを使ってみたが、ミックスした音をそのままDATに録音できて、これは結構使える。チャンネルのダイレクト・アウトが付いている上に、このデジタル・アウトが装備されていることによって、MTRを使った自宅録音やライブ・レコーディングには重宝するだろう。デジタル・ミキサーなどでは当たり前になってきているのかもしれないが、アナログとデジタルが1つのコンソールに共存するのは、これからのコンソールの1つの形になっていくだろう。


Spirit M8に限らずSpirit Mシリーズは、小規模PAコンソールや自宅録音のレコーディング・コンソール、最近普及しつつあるライブのインターネット中継用コンソールなど、用途を選ばず使用でき、伝えたい音をそのまま届けてくれるだろう。自分のコンソールに不満を持っている人には、ぜひこの良質なアナログ・コンソールSpirit Mシリーズをお薦めしますよ。


SOUNDCRAFT
Spirit M8
オープン・プライス(市場予想価格115,000円前後)

SPECIFICATIONS

■周波数特性/ 20Hz 〜20kHz(±1dB)
■全高調波歪率/0.008% 以下 1kHz@ -30dBu(マイク)、 +20dBu (マイク以外)
■イコライザー/最大可変幅±15dB(HIGH:12kHz、MID:240Hz 〜 6kHz、LOW: 60Hz)
■フィルター/ハイパス・フィルター:100Hz(18dB/oct)
■最大入力/出力レベル/+12dBu(マイク)、 +38dBu(モノ)、+21dBu(8Ω/ステレオ)
■外形寸法/506(W)×119(H)×523(D)mm
■重量/8.25kg