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WESAUDIO _Rhea レビュー:プラグインで操作やリコールが可能なAPI 500互換ステレオ・コンプ

WESAUDIO _Rhea レビュー:プラグインで操作やリコールが可能なAPI 500互換ステレオ・コンプ

 今回レビューするのはWESAUDIOの_Rhea。API 500互換モジュール・ラック、または同社NGシリーズ専用ラック_Titanで動作するステレオ・チューブ・コンプです。_Rheaはマスタリング用途やバス・コンプとして好まれているVari-Mu方式を採用し、信号経路はアナログ回路でありながら、Mac/Windows対応の専用プラグイン(AAX/AU/VST2&3)でDAW上からオートメーションの設定やデジタル・リコールが行えるようになっています。

2種類の倍音を付加できるTHDボタン、CARNHILL製の入力トランスを搭載

 まずは外観。最上段にゲイン・リダクション量を表示するGRメーター、中段にはINPUTノブとOUTPUTノブ(いずれも−15〜15dBで調整可能)、THRESHOLDノブ、その下段にはATTACKノブとRELEASEノブ、MIXノブを搭載があります。

 

 最下段には独自の倍音付加機能かつ2モードから選択可能なTHDボタン、サイド・チェイン用ハイパス・フィルター周波数を60/90/150Hzで切り替えるSC FILTERボタン、2つの設定の比較試聴用A/BボタンとBYPASSボタン、そしてモジュール制御用のUSBポート(Mini USB Type-B)があります。

 

 _Rheaの内部を見ると、Vari-Mu式真空管としてロシア製のREFLECTOR OTK 6Н3П-EB、その前段にはCARNHILL製の入力トランスを搭載。WÜRTH ELEKTRONIK製のアルミ電解コンデンサーが使用されています。なお、_Rheaは完全なステレオ仕様なのでデュアル・モノとして使用することはできませんが、片側のチャンネルのみを用いたモノラル・コンプとして使用することは可能です。

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モジュール内部には2本の真空管が見える

 それでは実際に_RheaとコンピューターをUSB接続し、DAWにインストールしたコントロール用プラグインから_Rheaを操作してみます。ハードウェアで操作するよりも、プラグイン上で操作した方が細かな数値を確認できるため扱いやすい印象。一方、_Rheaにある4つのノブ(INPUT/OUTPUT/THRESHOLD/MIX)はタッチ・センシティブ・エンコーダーになっているため、これらを使用してDAW上へオートメーションを描き込むことができるようになっています。

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DAWに立ち上げた_Rheaのコントロール用プラグイン。_RheaとコンピューターをUSB接続して使用する

 今回はミックスやマスタリングを想定して、ドラム・バスやストリングス・バス、トータルのミックス・バスなどに_Rheaをハードウェア・インサートしてサウンド・チェック。まずはゲイン・リダクションやTHDなどの機能をオンにせず、_Rheaを通しただけの音を聴いてみると、クリーンでありつつも独特の色気や深みあるふくよかなサウンドが好印象です。ほかのVari-Mu式ハードウェア・コンプに見られる“わずかな高域のロールオフ感”もあまり無く、中域には適度な倍音が付加され、メインとなるボーカルや楽器が浮かび上がります。

 

 ローエンドは若干引き締まりつつ、押し出しが強くなる印象。気に入ったのは、先述した内蔵トランスとVari-Mu式真空管が持つ特徴的なサウンドが過度に味付けされ過ぎず、きちんと原音のサウンドが生かされているところでした。簡易測定上のSN比は−90〜−100dB前後と良好なので、これならマスタリング用途にも安心して使用できるでしょう。

 

 THDボタンを試すと、主に偶数次倍音が全帯域にわたって付加され、各楽器の輪郭が強調されます。この機能は、オンにすると誰でも認識できるくらい分かりやすいのですが、嫌味なところは無く、積極的に使用したいと思いました。ドラム・バスに用いた際は、INPUTを上げると真空管独特のひずみが加わります。かなり大胆にひずませても、MIXノブで調整することで、アグレッシブかつ太いサウンドを作ることができるでしょう。

倍音付加具合を調整するツールとしても優秀。マスタリング・ハードウェアに匹敵するほどの性能

 ここからはミックスでのトータル・コンプやマスタリング用途における、筆者なりの使い方をお伝えしましょう。まずはTHRESHOLDノブをMAXにして、リダクションが極力かからないようにしておきます。次にINPUTノブで入力レベルを調整して、倍音付加の度合いを決定。ここでは、取り扱う2ミックスのレベルによってマイナス方向へ調整する可能性もあるでしょう。

 

 そして、THRESHOLDノブでリダクション量が数dB(筆者の場合、大抵は0〜2dBの範囲)になるように設定し、ATTACK/RELEASEノブでトランジェントを調節します。このとき、Vari-Mu式コンプの特徴として、リダクションが深くなればなるほど奇数次倍音が増えていくため、ここでも倍音付加の度合いを調整可能です。

 

 リズム主体である現代的なバランスの2ミックスだとSC FILTERは必須になるかと思うので、曲に応じてハイパス・フィルターの周波数を選択しましょう。ここでTHDボタンをオンにして、曲が引き立つかどうかを確認。非常に分かりやすく変化するので、一聴してオン/オフを決めればよいと思います。最後にOUTPUTノブで最終レベルを決定。原音のトランジェントを生かしたい場合は、MIXノブでのパラレル・コンプ処理も効果的です。

 

 _Rheaはコンプとしてはもちろん、倍音付加の度合いを調整するツールとしても大変優秀です。API 500モジュール製品としては高価格帯ですが、高いヘッドルーム(+24dBu)とSN比を持ち、ステレオ・マッチングもしっかり取れているため、ほかの単体マスタリング・ハードウェアに匹敵するほどの性能を持っていると言えるでしょう。

 

 そして何よりVari-Mu式コンプとしては、トランスペアレントからアグレッシブなサウンドまで、幅広い音作りが可能です。この柔軟性が_Rhea最大の魅力だと感じます。プラグイン・コントロール機能もあるため、ミックス/マスタリングからライブ現場までさまざまなユーザーが_Rheaの恩恵を受けることができるでしょう。

 

中村フミト
【Profile】Endhits Studioを拠点に録音からミックス、マスタリングまでを手掛けるエンジニア。直近では、にしな、GOOD BYE APRIL、Little Parade、ヤングスキニー、風男塾らの作品に携わっている

 

WESAUDIO _Rhea

198,000円

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SPECIFICATIONS
▪周波数特性:10Hz〜150kHz(−3dB) ▪全高調波ひずみ率:0.03%未満(1kHz,0dBu)No Compression、1%以上(1kHz、0dBu)@Maximum Compression Level ▪入力インピーダンス:20kΩ ▪出力インピーダンス:100Ω未満 ▪クロストーク:–80dBu未満 ▪最大入力レベル:+24dBu ▪消費電力:380mA(2スロットあたり) ▪外形寸法:76(W)×133(H)×158(D)mm ▪重量:1,145g

製品情報

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