UNIVERSAL AUDIO SP-1 レビュー:スタンダードを追求したステレオ・ペアのペンシル型コンデンサー・マイク

UNIVERSAL AUDIO SP-1 レビュー:スタンダードを追求したステレオ・ペアのペンシル型コンデンサー・マイク

 UNIVERSAL AUDIOから新たに登場したステレオ・ペア・コンデンサー・マイクSP-1(Standard Pencil Microphones)をいち早く試させてもらいました。オーディオ・インターフェースは同社のApollo X4を使用。箱を開け姿を見せたナチュラルな白塗りの外観は、UNIVERSAL AUDIOらしいビンテージ志向な雰囲気を漂わせ、手に取ると程良い重厚感があります。

レンジが広く素直に楽器の音色を再現 スネアの胴鳴り不足を解消する自然で太い音

 まずはドラムのトップにステレオで立ててみました。第一印象は“何も違和感がない!”。ドラマーにとってトップ・マイクは、シンバルやタイコの音色を含めた目の前の景色をより自然に収めてくれることが一番大切だと思うのですが、SP-1の音には透き通るような透明度ではなく、何かが強調されたものでもない非常にナチュラルなイメージを持ちました。いわゆるペンシル型のステレオ・マイクは今まで幾つか使ってきましたが、ナチュラルという定義が非常に多岐にわたることを知っている上でSP-1の印象を強いて言うならば、レンジの広さがあるスタンダード感や、どこまでも素直に楽器の音色を表現できる安心感がありました。特にシンバルのレガート音は秀逸で、ありのままの音色が表現できます。

ドラムのトップ・マイクとしてステレオでセッティングした様子

ドラムのトップ・マイクとしてステレオでセッティングした様子

 そのままの勢いでスネアにも試したところ、その感覚は合っていたよう。普段、スネアを布でミュートして録音することが多い自分としては、音の太さだけでなく、それに加味される胴鳴りが足りずにいつも苦労していましたが、SP-1を使用するとそれがかなり解決でき、ナチュラルで太い音、かつ強調されることのない胴鳴りを録音できました。今回は試していませんが、コンガなどの皮物やパーカッションの録音に間違いなく活躍してくれるであろう感触を持ちました。

スネアは布でミュートして録音することが多い筆者。ナチュラルで太さのある胴鳴りを収音できたという

スネアは布でミュートして録音することが多い筆者。ナチュラルで太さのある胴鳴りを収音できたという

 トップ・マイクとスネアで試して言えるSP-1の特徴は“ありそうでなかったスタンダード感”だと思います。表現性に特化したマイクも多く存在しますが、表現性は奏者自身に必要なのだと立ち返りながら、SP-1は自然な音を録れるという点で安心して使うことができるマイクだと感じました。

 付属のマイク・ホルダーはステレオ・ペアとしてスタンド・マウントできるので、1本のマイク・スタンドにステレオ・マイクとして設置も可能。ピアノ収録や、少し離れた場所からアンビエンスの録音をする際に役立ちそうです。

アコギのアタック感をそのままキャッチ Apollo ユーザー向けプリセットを無償で提供

 次に試したのはアコースティック・ギター。鉄弦のコリっとした部分、アタック感をそのままキャッチしてくれる感覚はシンバル・レガートで感じたそれに近く、高音は強調されず全体的にフラットな特性があるように感じます。センシティブでありながらもナチュラルでやや明るめな印象。マイキング・ポイントを見つけることも容易です。宅録初心者や宅録のクオリティ・アップをしたい方にとてもお薦めです。

アコースティック・ギターの録音をする筆者。無償でダウンロード可能なSP-1用プリセットにはアコースティック・ギター用のプリセットも用意される

アコースティック・ギターの録音をする筆者。無償でダウンロード可能なSP-1用プリセットにはアコースティック・ギター用のプリセットも用意される

 また、Apolloユーザー向けにはSP-1用プリセットが用意され、無償でダウンロード可能です。インストールも簡単。アコースティック・ギター用プリセットを試したところ、こちらも秀逸でした。UA 610 Tube Preamp & EQ CollectionやPultec Passive EQ Collection、UA 1176 Classic Limiter Collectionという王道とも言える組み合わせのUADプラグインがアサインされ、自然なレコーディング環境を再現できました。UNIVERSAL AUDIOによる宅録ミュージシャンへの行き届いたサービス精神に毎度感謝をしたいところです。

 最後にボーカルにも試してみました。こちらは僕としては、ボーカル・レコーディングに使用するよりは、小編成のライブ録音などにとても良いような気がしました。スモール・ダイアフラムということもあり、吹かれに敏感なので、付属のウィンド・スクリーンを使用し、ある程度の距離感を取れば空気感のあるクリーンなボーカルを集音することができると思います。その際にもSP-1用のボーカル・プリセットが非常に良く、好みのリバーブ感になるような調整をすれば、そのままライブ収録に使用できると思います。

 今回UNIVERSAL AUDIOのマイクを初めて使用して感じたことは、総じてUNIVERSAL AUDIOらしい考え方がマイクにも行き届いているという点でした。楽器奏者として“新しさとは何か”と常々考えることが多い中、製品名にもあるようにUNIVERSAL AUDIOが考える“スタンダード”に関する哲学がきちんと練り込まれていて、ペンシル型コンデンサー・マイクに何が必要なのかという今の答えがここにあるように感じます。素直に、ナチュラルに、色付けのないマイク。これぞ必要とされるもの。そんなメッセージを、買い求めやすい価格からも感じました。

 今回は試せませんでしたが、妖艶さや深みのあるアップライト・ピアノや、部屋鳴りが影響するような楽器の録音にもきっと合うのだろうなどと想像しました。これからのUNIVERSAL AUDIO製品もますます楽しみになりました。

 

神谷洵平
【Profile】ドラマー/作編曲家/プロデューサー。東川亜希子とのユニット=赤い靴での活動や劇伴、CM音楽の制作も行う。大橋トリオ、aiko、ずっと真夜中でいいのに。、優河らの作品やライブにも参加。

 

UNIVERSAL AUDIO SP-1

オープン・プライス

(市場予想価格:59,400円前後/ペア)

UNIVERSAL AUDIO SP-1

SPECIFICATIONS
▪タイプ:スモール・ダイアフラム・コンデンサー ▪指向性:カーディオイド ▪周波数特性:20Hz〜20kHz ▪感度:12.6mV ▪最大SPL:142dB ▪外形寸法:128(H)×23.5(φ)mm ▪重量:125g(1本) ▪付属品:マイク・スタンド・マウント×2、ステレオTバー、フォーム製ウィンド・スクリーン、5/8インチ-3/8インチ・スレッド・アダプター×2

製品情報

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