ULTRASONE Signature Master レビュー:最新の独自技術S-Logic 3で空間再現力を高めた密閉型ヘッドフォン

ULTRASONE Signature Master レビュー:最新の独自技術S-Logic 3で空間再現力を高めた密閉型ヘッドフォン

 ULTRASONEから、プロ向け密閉型ヘッドフォン3機種が登場。スタジオ用のSignature Master(139,980円)とSignature Natural(99,980円)、DJ用のSignature Pulse(79,980円)がラインナップされています。ここでレビューするSignature Masterは、Signature Proの後継機。ULTRASONEのヘッドフォンと言えば、専門学校時代に講師の方が愛用していると聞き興味を持っていましたが、当時の自分には手が出ず、音を聴く機会にも恵まれませんでした。なので今回、ワクワクしています。

40mmのチタン・プレイテッド・ドライバーを搭載。開放型のような空気感があり低域が立体的

 Signature Masterの心臓部は40mm径のチタン・プレイテッド・マイラー・ドライバーです。ヘッドフォンでナチュラルな音場を作るための独自技術“S-Logic 3”、それをサポートするテクノロジー“DDF”(Double Deflector Fin)なども採用し、音のディテールや明りょう感を保ちつつ耳への負担を抑え、空間の再現性をグレード・アップさせているそうです。ハウジングには純金メッキ加工の金属製プレートを配し、遮音性を確保。イア・パッドはシープ・スキン・レザーで作られ、しっかりとしたフィット感が得られるといいます。

ハウジングに配した純金メッキ加工の金属製プレートで、遮音性を高めている

ハウジングに配した純金メッキ加工の金属製プレートで、遮音性を高めている

 デモ機が手元に届いて、まずはしっかりとした作りの付属キャリング・ケースが良いと思いました。筆者は普段、別ブランドのヘッドフォンを持ち歩いているのですが、ソフト・ポーチや購入時の箱を使っていて、後者はかさばってしまうため億劫になることもあります。Signature Masterはもちろん、Signature NaturalやSignature Pulseも出先での使用を見越しているのか小さく折りたたむことができ、リュックなどで持ち運びしやすそうです。

ULTRASONE Signature Master付属の専用キャリング・ケース

付属の専用キャリング・ケースは、しっかりとした作り。ヘッドフォン本体をコンパクトに折りたたんで収納できるため、可搬性が高い

 それでは早速、Signature Masterの音を聴いてみましょう。まずは低音の立体感に大変驚きました。しっかりと調整されたスタジオでモニターしているようなサウンドで、“低音がよく出ている”というよりは空気感が伝わってきます。開放型ではなく密閉型という形式で、このようなフィーリングの音を出せているのはすごく良いですね。また、開放型のサウンドはスピーカーのような感じではあるものの、機種によっては少し遠く聴こえたりします。ですがSignature Masterのサウンドは、開放型に通じる空気感がありつつ密閉型ならではの芯も備える感じ。個人的には、開放型よりもモニター・スピーカーで聴いているイメージに近いと思います。これはS-Logic 3によるところが大きいようで、さまざまなプロ用ヘッドフォンと比較しても聴いたことがない新しい音だと感じます。

 

 周波数特性は8Hz〜42kHzで、かなりレンジが広いようです。実際、サブベースまでしっかりとらえることができ、リファレンス曲を幾つか聴いていると“ベースがこんな動きをしていたのか”と、気付かされることが多々ありました。また中低域以下にはやはり空気感があり、仕事で使用しても違和感なく作業できそうです。中高域以上に関しては、少し音が近いと感じます。密閉型ならではといったところですが、これまでに使ってきたヘッドフォンと同じような聴き方をしていると、ハイハットやシンバル、アコースティック・ギターのアタック成分を少しEQで削ってしまうかもしれません。ただ、そこについては長く付き合っていけば勘定しながら作業できそうです。

ワイドで踊り出したくなるようなサウンド。脚色された感は無くプロの仕事にも対応

 分離が良く、一つ一つの音がしっかりと見えるのも特徴です。例えばリバーブのテイルなども、きちんとモニターすることが可能。またステレオの左右幅が広いので、歌を飛ばすためのリバーブやギミック的なディレイの音量を一度で的確に設定できます。スピーカーだけで作業しているとつい上げ過ぎてしまったりするので、なるべくいろいろな環境で確かめるようにしていたのですが、一台で良い線に持っていけるのは良いですね。

 

 全体の印象としては、非常にワイドで踊り出したくなるようなサウンドです。ただ、そのワイドさは誇張された感じではなく、ミックスにやり過ぎた部分があれば“やり過ぎだ”と感じられるので、楽しく聴けて、なおかつ仕事にも使える仕上がりだと思います。

 

 ハードウェア的な面については側圧が少し強めに感じますが、イア・パッドのクオリティによるものか、着けていて疲れる感じは不思議とありません。ユーザーへの配慮が感じられ、素晴らしいと思います。また遮音性も優れていて、出先での作業にも集中できそうです。ただ、APPLE MacBook ProやMac Miniのヘッドフォン端子に直接つないで聴いてみたところ、少し腰高なサウンドに感じられたので、機材としてのポテンシャルを生かせる環境で鳴らしたいものですね。最近は小型でも良いDACがたくさん出ていますから、組み合わせて使うとよいかもしれません。

 

 決して安価ではないものの、仕事に使えるヘッドフォンを探している方、住環境によりスピーカーを鳴らせない方などにお勧めできる製品です。ぜひ店頭などで手に取って、音を聴いていただきたいと思います。

 

諏訪桂輔
【Profile】PLANET KINGDOM、studio MSRを経て、現在フリーランスのレコーディング・エンジニア。木梨憲武、anchorage、三月のパンタシアらのほか、アニメ系からネット・アーティストまで手掛ける。

 

ULTRASONE Signature Master

139,980円

ULTRASONE Signature Master

SPECIFICATIONS
▪形式:密閉ダイナミック型 ▪ドライバー:40mmチタン・プレイテッド・マイラー ▪マグネット:ネオジム磁石(NdFeB) ▪インピーダンス:32Ω ▪周波数特性:8Hz~42kHz ▪出力レベル:98dB ▪重量:約325g(ケーブル含まず) ▪付属品:1.5m着脱式ストレート・ケーブル(ステレオ・ミニ)、3m着脱式ストレート・ケーブル(フォーン)、1.2mリモコン・マイク付きケーブル(3.5mm径のTRRS端子)、プロテイン・レザーのスペア用イア・パッド、キャリング・ケース

製品情報

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