UJAM Virtual Drummer Bruteレビュー:1990年代グランジを再現するドラム音源

UJAM Virtual Drummer Bruteレビュー:1990年代グランジを再現するドラム音源

 今回紹介するUJAMのVirtual Drummer Bruteは、ニルヴァーナやアリス・イン・チェインズのような1990年代初頭に登場した“グランジ”の荒々しく攻撃的なサウンドを再現したドラム音源です。第一印象は、操作画面の設計から使いやすそうに見えますが、実際の内容はどういったものになっているのか、紹介していきます!

5種類のドラム・キットで713種類のドラム・パターン

 Virtual Drummer Bruteには、5種類のドラム・キットと6種類のサウンド加工を施せるミックス・プリセット、31種類の演奏スタイル、713種類のドラム・パターンが収録されています。まず5つのドラム・キットはそれぞれ全く違うキャラクター。DiRTY、TiGHT、NOBLEはリリースが短いため、音数の多いフィル・インでも粒立ちが良いです。PRIME、DARKはリリースが長く、ダイナミックな演奏にもフィットします。

 

 6つのミックス・プリセットは、ナチュラルなGENTLEからSLAM、CRUSHなどかなり激しいコンプレッションとひずみが強調された音色まで収録されています。BiTEとBOUNCEでは明るく抜けの良いひずみが追加されるイメージで、WiDEはその名の通りステレオ感が強くなります。これらドラム・キットとミックス・プリセットを選択し中央のAmountというパラメーターを調節すると、かなりのバリエーションの音色を出せます。テンポの速さやギターの音色との相性など細かいことは気にせずに、グランジ以外にもメタルやハード・ロックなど、激しい生ドラムが欲しいときに立ち上げると良さそうです。

 

 画面右上部STYLEタブでは演奏スタイルを31種類から選択して、その右のプリセット名をクリックすると、713種類ものドラム・パターンを鍵盤で演奏可能。Micro Timingでは、演奏スピードと発音タイミングを調整して人間味のあるグルーブに変更できます。こういった自動演奏機能が備わったドラム音源は数多く存在しますが、1画面に集約されて使いやすい点が好印象です。

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STYLEタブでは31種類の演奏スタイルと713種類のドラム・パターンを選択し、鍵盤で演奏することができる

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STYLEタブ内のMicro Timingを選択すると出てくるタブ。人間味のあるグルーブに変更するために、Speedで演奏スピードを、Feel、Swing、Humanizeで発音タイミングを調整

 下部ミキサー・セクションにあるINSTRUMENT MICSタブではDecay、Tune、Reverbを調節して音色を変化させることが可能。Typeではキック/スネアはA〜Eの5種類、タム/ハイハット/ライド/クラッシュは3種類から音色タイプを選べます。AMBIENCE MICSタブではCompressor、Low Pass、High Passが調整可能です。

3つの異なるマイクのブレンド量をSmackとGritで操作

 Virtual Drummer Bruteのサンプル収録には3つの異なるマイクが使用されています。そして、それらのブレンド量をコントロールできる2つのパラメーターが特徴的。一つは画面中央左側にあるSmackで、明るい音色のビンテージ・マイクをブレンドし、オケの中で埋もれないような明りょう感をプラスできます。もう一つはMASTERタブ内のGritで、温かみのある音色と原音忠実な音色のマイクの2種類をブレンド可能。この3つのマイクのブレンド量を調整するだけで、DAW上でEQなどをしなくとも曲に合うサウンドに近付けることができます。一般的に生ドラム音源はパラメーターが複雑なものになりがちですが、Virtual Drummer Bruteはマイクのブレンドを手軽にできて新感覚でした。

 

 MASTERタブ内にはほかにもReverb、Maximizeのパラメーターを用意しています。Reverbでもミックス・プリセットを6つ選択可能です。

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MASTERタブではドラム全体に対してかけられるエフェクトReverb、Grit、Maximizeを調整可能。Reverbは6種類のプリセットを用意

 画面下部のOutputをIndividualに切り替えるとワンクリックでパラアウトできます。Amountをゼロにしておけばナチュラルなサウンドも得られるため、お好みのエフェクトでミックスすることも可能です。

 

 DTM初心者で“プロのような迫力のある音にならない”“どんなフレーズにするべきか、引き出しが少ない”などの悩みを持っている方が居るのではないかと思います。Virtual Drummer Bruteは、シンプルな操作画面で豊富なミックス・バリエーションと自動演奏機能を搭載し、そういった悩みを解決するデザインだと実感しました。プロ・ユースにおいても、タイトな制作期間の中でクオリティの高いサウンドに仕上げることができるでしょう。ほかのソフト音源と比べて、どのパラメーターも極端なセッティング時に音が破たんしたりせず、余計な帯域やノイズが無くて音の粒立ちが良いので、Virtual Drummer Bruteでなければならないアレンジもできることでしょう。

 

 シンプルな8ビートのドラムとパワー・コードのギターだけで“良いアレンジ”と感じさせるためには良い音色でなければいけないと常々気を付けているので、素材そのものの完成度が高いことは好印象です。1990年代“グランジ”を再現しているとは言え、古臭さは感じないので、生ドラム音源を何か探しているのであればぜひ試してみてはいかがでしょうか!

 

要田健
【Profile】BABYMETALへの楽曲提供をきっかけに作曲家になる。これまでに、いとうかなこ、浦田直也、小野大輔、林原めぐみなどを手掛け、ギタリストとして数多くのレコーディングにも参加する。

 

UJAM Virtual Drummer Brute

11,440円

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REQUIREMENTS
▪Mac:OS X 10.11以降、AAX/AU 2/VST対応のDAW(64ビットのみ動作)
▪Windows:Windows 7以降、AAX/VST対応のDAW(64ビットのみ動作)
▪共通項目:4GB以上のRAM、4.7GB以上の空き容量、1,280×768px以上の解像度

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