SOFTUBE Bus Processor レビュー:名コンソールのバス・コンプを再現しつつ付加機能を充実させたプラグイン

SOFTUBE Bus Processor レビュー:名コンソールのバス・コンプを再現しつつ付加機能を充実させたプラグイン

 アナログ機器の高品質なモデリングに定評のあるプラグイン・ブランド、SOFTUBE。同社のBus Processorは、クラシックなバス・コンプを再現しつつ、先進的なアルゴリズム・コンプレッション、サチュレーション、空間調整、サイドチェインなどの機能を統合したものです。単なるモデリングではなく、現代のエンジニア/ミュージシャンにとってプラスαをもたらすにはどうあるべきか、というのも重視して開発。Mac/Windows対応でAAX/AU/VST/VST3に準拠していますが、どのようなサウンドをしているのでしょうか?

SSL SL4000Gシリーズを思わせるコンプ部

 Bus Processorは主に3つのセクションで構成されています。中央にコンプ(左側にサイドチェイン機能搭載)、右側にサチュレーター、下部には空間調整を行うスペーシャル・セクションがあります。

 コンプ部は、ATTACKやRELEASEの数値から、SSL SL4000 Gシリーズのバス・コンプを基に設計されていると思われます。TEMPO SYNCボタンを押すとRELEASEが1/16〜1/1の音価表示に替わり、DAWのテンポに合わせて設定できるようになります。

TEMPO SYNCボタンをオンにすると、RELEASEが1/16〜1/1の音価表示に切り替わり、DAWのテンポに同期したリリース・タイムの設定が可能になる

TEMPO SYNCボタンをオンにすると、RELEASEが1/16〜1/1の音価表示に切り替わり、DAWのテンポに同期したリリース・タイムの設定が可能になる

 各ノブは連続可変で、細かい設定が可能ですが、ATTACK、RELEASE、RATIOは数字をクリックすると瞬時にその値になるので、ステップ式のように使うこともできます。

 画面左上には、今や必須のWET/DRYノブを搭載。その下はサイドチェイン部で、LOW CUTでは何Hzから下をコンプ・スルーにするか、TONE SHIFTではティルト・フィルターを通じて音色を調整できます。このTONE SHIFTノブは、時計回りにひねるとコンプ前の高周波を強調でき、反時計回りの場合はコンプ前の低周波を強調可能。つまり、どの帯域にコンプを反応させたいか設定できるのです。その下のEXT S/Cは、オンにすると外部からの信号をトリガーとして、コンプが反応するようになります。

2タイプのひずみとステレオ・イメージ機能

 右側のサチュレーション部では、テープ・ディストーションのような奇数次倍音を中心に、偶数次倍音も加えることができます。サチュレーションのタイプは、ENHANCE部分のTONEとHRMC.(ハーモニック)の2つのボタンで選択。前者は原音の整合性を保ったまま音の密度を高めるのに最適で、後者は滑らかなサチュレーションになります。後述しますが、両押しで使うことも可能です。また、サチュレーションの深さはメーター上段のDRIVEバーで確認できます。

 ENHANCE下のTONE SHIFTは、ティルト・フィルターを通してサチュレーションの音色を変化させます。サチュレーションには重要なパラメーターなので、これがあるのは大変助かります。下部のスペーシャル・セクションにはAIR、WIDTH、MONO BASSといったノブがあり、高周波の付加やステレオ・イメージングなど、最後の微調整に大きな効果を発揮しそうです。

透明感があってかかりの良いコンプ

 では、実際に音を出してみます。打ち込みトラックの曲、バンドの曲、速い曲や遅い曲、さまざまな曲のバス、ステム、単音に使ってみました(遅延やCPU負荷も少ないので、一度にたくさん挿せました)。

 まずは2ミックス。Bus Processorをマスターに立ち上げて、少しだけコンプをかけてみると、クリアで奥行きがあるというのが第一印象。音に速さがあり鈍くならず、かといって細くならないのが好感触です。“太さや重さ<透明感”という感じで、同系モデリングの既存製品とも使い分けができそうです。また、さまざまな設定を試したところ、かかり具合が良く確かな音をしています。面白いのは、サイドチェインのTONE SHIFTをBASSに振ると、低域にコンプがかかって高域への効果は控えめになるので、歌がつぶれることなくスーッと抜ける、心地よいボーカル・ミックスを作ることができました。どこにコンプレッションをフォーカスさせるかで、さらに踏み込んだ音作りが行えそうです。

サチュレーターも原音のクリアさを維持

 サチュレーションも同じ印象で、透明感を保ったまま音が変わる感じ。ローファイまたはファット系のサチュレーターが多い中、この種の濁らないサチュレーターはうれしいところです。TONEを押すと、音像がくっきりとして鋭いパンチが加わりつつ、ややワイドになる印象。エグさは少なめです。HRMC.は対照的に、音がにじんで面になり、ステレオ感も若干減る感じです。どちらかと言えばステムや単音処理で活躍しそうに思いましたが、WET/DRYで原音を混ぜて使っても良い感じでした。

 そしてTONE+HRMC.の両押しは、双方の特徴がそのまま生かされ、TONEで前に出てきた音の裏側にリバーブを添えるような感覚で、HRMC.の“面”が良い具合に音像をなじませます。下部のAIR、WIDTH、MONO BASSは、補正程度に少しノブをいじるくらいで良い効果が得られました。

 各種ステムに使った感じは“ちょいがけ”が効果大。ソロで聴くとあまり変わりない微細な処理でも、ミックス内で聴けば良い混ざり具合に。ドラムにはコンプとサチュレーションの合わせ技がとても良く、キックやスネアなどの単音に対しても型崩れしないクリアなかかりが好印象です。

 シンセ・ベースとの相性も抜群で、処理後のクリアな音がミックスの中で濁らず出すぎずの存在感を出してくれました。特にこれは合わない、というソースは見受けられません。そして、思った以上に良かったのが歌。UREI 1176風にATTACKを0.1〜1ms、RELEASEを最速にすると、クリアで今っぽい1176的な効果がありました。

 Bus Processorは、コンプレッション・プラスαで、もう一歩踏み込んだサウンド・メイク、グルーブ調整を可能にしてくれる、名前通りのプラグインでした。筆者もこれから大いに活用していきたいところです。

 

福田聡
【Profile】フリーランスのレコーディング/ミキシング・エンジニア。ファンクやR&Bなどグルーブ重視のサウンドをメインに、最近ではENDRECHERI、Purple Drip、佐藤竹善、賽などの楽曲を手掛ける。

 

 

 

SOFTUBE Bus Processor

オープン・プライス

(市場予想価格:18,920円前後)

SOFTUBE Bus Processor

REQUIREMENTS
▪Mac:macOS 11〜13、INTEL Core I3/I5/I7またはAPPLE Silicon M1以降のCPU
▪Windows:Windows 10(64ビット)/11、INTEL Core I3/I5/I7またはAMDクアッド・コアCPU(SSE 4.2サポート)
▪共通項目:SOFTUBEアカウント、iLokアカウント、AAX/AU/VST/VST3に対応したDAW、インターネット接続(インストーラーのダウンロードとライセンス管理)

製品情報

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