SOFTUBE Model 80 Five Voice Synthesizer|2020年代生まれのソフト・シンセ12モデルを徹底レビュー

さまざまなメーカーから日々新しい製品が誕生しているソフト・シンセ。しかし数の多さから、まだ十分にその魅力を知られていない製品もしばしば。そこで本企画では、2020年代以降にリリースされたソフト・シンセ12モデルを、シンセに造詣が深い、毛蟹(LIVE LAB.)、Naive Super、林田涼太、深澤秀行の4名が紹介。ここでは、SOFTUBE Model 80 Five Voice Synthesizerを林田涼太がレビューします。

5ボイス・シンセの後期モデルをソフト化

SOFTUBE Model 80 Five Voice Synthesizer|価格:オープン・プライス(市場予想価格:20,190円前後)

SOFTUBE Model 80 Five Voice Synthesizer|価格:オープン・プライス(市場予想価格:20,190円前後)

Requirements
●Mac:macOS 11以降
●Windows:Windows 10/11
●共通項目:64ビット、iLokアカウント
●対応フォーマット:AAX/AU/VST/VST3

概要

 高品質なアウトボード系プラグインでも有名なSOFTUBEの新しいプラグインは、同社Webサイトの製品ページによると“伝説的5ボイス・シンセ”のモデリングです。前、中、後期でフィルターをはじめとする仕様変更されたバージョンがあり、当製品は後期をベースにモデリングされているとのこと。幅広い音色のバリエーション、フィルターのキレの良さを存分に感じます。

収録された音色のバリエーション

 オリジナル同様、中央部にあるBANKとPROGRAM SELECTボタンによってバンクごとに区分けされた音色を切り替えられます。プリセットは抽象的かつ重厚な音色が多いですが、製品サイトからキーボーディスト&プログラマーのNicholas T Semrad氏提供のプリセットも無償ダウンロードも可能。こちらは比較的実用的な音色がそろっていて、エレピに似た音色なども含まれています。

キャラクター

 時に妖艶、時にパンチの効いたファンキーなサウンドと守備範囲の広さはさすがです。Model 80はややダークな印象もあり、アナログ感の強いキャラクターと感じました。音色が吟味されて作られているので、多くの人が納得できるのではないでしょうか。和音の混ざり方もオリジナルに近いです。

操作性

 つまみにカーソルを合わせると、現在の数値を表示。オレンジのINITボタンを押すとセッティングがデフォルトに戻るので、一から音作りしたい人にはとても便利です。

▼パネル上でプリセットを切り替え可能

パネル上でプリセットを切り替え可能

パネル中央部。PROGRAMMERはプリセットの切り替えを行うセクションで、オレンジのINITボタンを押すと、設定がデフォルト状態になる。なお、プリセット・ブラウザーも用意されている

オシレーター

 1ボイスあたり2オシレーターの仕様。ピッチ(FREQUENCY)は半音ずつ上げ下げできる仕組みで、OSCILLATOR 2のみピッチをずらすことができるFINEつまみを実装しています。またOSCILLATOR 2をLFOとして使う場合のLO FREQスイッチ、鍵盤と切り離して常に同じピッチで鳴らすためのKEYBOARDスイッチもあります。波形は複数選択可能でオシレーター・シンクも搭載しています。

フィルター/エンベロープ/その他、モジュレーション

 フィルターは伝説の-24dB/Oct仕様のローパス・フィルターと発振可能なレゾナンス。エンベロープもボイスごとにADSRタイプを2基搭載しています。オリジナルのエンベロープはちょっとクセのあるカーブをしていますが、その感覚もそっくり。パネル左には、コード弾きをしてもボイスごとに独立した動作をするVOICE MOD、コード全体にまとめてかかるGLOBAL MODULATIONというモジュレーションもあります。LFOのスピードはDAWのテンポに同期できるようになっていて、これが意外と便利。ホワイト・ノイズとLFOをブレンドしてどこにかけるかをDESTINATIONで選ぶ仕組みです(かける量はモジュレーション・ホイールで調整)。

独自の機能/特徴

 画面右の木枠部分をクリックすると拡張パネルが開きます。ここではボイスの振る舞いを定義でき、例えばボイスごとに左右にパンニングする量やポリフォニック・グライド(コード弾きでもピッチがグライドする)の移動スケール量、フィルターのカットオフを鍵盤に追随させたときにクオンタイズするかどうか、モジュレーション信号の位相反転など、ややマニアックな調整ができます。UNISONセクションでは5つあるボイスを何個スタックさせるかで音の厚みを調整できるほか、DETUNEつまみでピッチのばらつき感もコントロールできます。またAGINGつまみを回すとオリジナルにあるボイスごとの不安定要素を増やすことができ、これはコードの混ざり方などに影響してきます。

▼より細かな調整を行う拡張パネル

より細かな調整を行う拡張パネル

画面右側の木枠の辺りをクリックすると拡張パネルが出現。VOICE MODの動作や演奏面に関する詳細の調整など、8つの追加パラメーターを備えている

総評

 オリジナルをエミュレートしたソフトは数多くの競合がありますが、後発であるModel 80はその中でも“非常に近い”という評判です。必要以上にキラキラせずにアナログ特有の重心の低さをうまく再現した製品と言えるでしょう。

 

林田涼太
いろはサウンドプロダクションズ代表。録音/ミックス・エンジニアとして、ロックやレゲエ、ヒップホップとさまざまな作品を手掛ける。シンセにも造詣が深く、9dwのサポート(syn)としても活動。

製品情報

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