「SARAMONIC SR-Q2」製品レビュー:16ビット/96kHzのWAVで録音可能なポータブルPCMレコーダー

SARAMONICからPCMレコーダー「SR-Q2」が発売

撮影:川村容一

スマートフォンや一眼レフカメラ用のワイアレス・マイクなどを発売する中国のメーカーSARAMONICから、リニアPCMレコーダーのSR-Q2が発売されました。16ビット/96kHzのWAVで録音できるSR-Q2は、映像収録時の音響録音用として開発されたとのこと。昨今盛り上がりを見せているYouTubeやライブ配信で重宝するため、この分野の製品の充実ぶりは目覚ましいです。企業情報も要チェックですね。では、早速見ていきましょう。

16ビット/96kHzで13.5時間録音可能
32ビットで信号処理を行う

 手に取ると、非常に軽いというのが第一印象です。駆動するための単3アルカリ乾電池2本を含めた重量は、なんと165gでした。ちなみに電源は、本体側面にあるUSB Type-C端子(電源供給専用)からも供給可能で、スマートフォンの充電などに使うモバイル・バッテリーから給電することもできます。記録媒体はmicroSDカードで、最高16ビット/96kHz(もしくは24ビット/48kHz)のWAVで録音可能。単3アルカリ乾電池2本での録音可能時間は、16ビット/96kHzで13.5時間、16ビット/44.1kHzで19.5時間です。

 

 SR-Q2は、24ビット/128倍オーバーサンプリングでのAD/DA変換を行う点や、32ビットで信号処理を行うなど、録音に関するスペックは十分に高いと感じます。

 

 フロント・パネルには、限られた操作子と液晶ディスプレイを設置。シンプルが故に、インプットの設定さえ決まれば戸惑いなく録音できるという印象です。基本的には、HOMEボタンを押して、メニューからインプットの設定でローカットの周波数をオフ/80/120/160Hzから選び、リミッターのオン/オフを設定し、録音時のビット/サンプリング・レートは16ビット/44.1/48/88.2/96kHz、24ビット/44.1/48kHzの組み合わせから選びます。以上3点の項目を決定したら、あとはフロント・パネルのRECボタンを押すのみです。録音時に点灯する赤いLEDにより、視覚性も良好ですね。

 

 入力端子は、リア・パネルにマイク・イン(ステレオ・ミニ)を1系統、本体左側面にライン入力(ミニ・フォーン)を装備。インプット・レベルは左側面にあるボタンで上げ下げ可能です。また、同社のRC-Xなどリモコンで操作を行う際に使用するREMOTE入力(TRRSミニ)も用意しています。出力端子は、ライン出力(ステレオ・ミニ)、ヘッドフォン出力(ステレオ・ミニ)を装備。

本体左側面にライン入力(ミニ・フォーン)、REMOTE入力(TRRSミニ)を装備。右にはインプット・レベルを調整するボタンとホールド機能を備えた電源スイッチを用意している。さらに右には電源供給用のUSB Type-C端子を備える

本体左側面にライン入力(ミニ・フォーン)、REMOTE入力(TRRSミニ)を装備。右にはインプット・レベルを調整するボタンとホールド機能を備えた電源スイッチを用意している。さらに右には電源供給用のUSB Type-C端子を備える

本体右側面には、microSDカード・スロット、ヘッドフォンのモニター・ボリューム・ボタン、ヘッドフォン・アウト(ステレオ・ミニ)、ライン・アウト(ステレオ・ミニ)を装備している

本体右側面には、microSDカード・スロット、ヘッドフォンのモニター・ボリューム・ボタン、ヘッドフォン・アウト(ステレオ・ミニ)、ライン・アウト(ステレオ・ミニ)を装備している

 ヘッドフォンでのモニター・レベルは、右側面にあるボタンで調整できます。この辺りは、現場での使い勝手が良さそうだと感じました。

広がりのあるステレオ録音が可能な内蔵マイク
ウィンド・ジャマーなど付属品も豊富

 では、実際に使ってみた所感を書きます。SR-Q2に装備された単一指向性コンデンサーのXYマイク(90°)は、広がりのあるステレオ録音が得意です。右にあるものは右に、左のものは左、センターのものは真ん中から聴こえます。つまり、録音したい音にちゃんとフォーカスしないとイメージ通りの音には録れないということ。これは、録音の基本です。フォーカスを定める際にやってほしいことが、ヘッドフォンによるモニタリング。マイクを向ける角度による音の違いを確認しましょう。

 

 さらに、モニタリングで注意すべき点は、デジタル・レコーダー特有のAD/DA変換時に発生するレイテンシーです。16ビット/96kHzに設定すればかなり軽減されますが、16ビット/44.1kHzを選択した場合は、はっきりとレイテンシーが感じられます。初めはヘッドフォンからのモニターと外音の時間差で生じる位相差に惑わされるでしょう。そのため、テスト録音と再生を繰り返して慣れる必要があります。もちろん、これはモニタリング時における現象のため、録音されたWAVに位相差はありません。SR-Q2を使う場合は、迷うこと無くレイテンシーの少ない16ビット/96kHzを選択して録音することをお勧めします。良い音で録っておけば、後から煮ても焼いても問題無しです!

 

 SR-Q2には、USB Type-Cケーブル、専用ソフト・ケース、スポンジ・タイプのウィンド・スクリーンとファー・タイプのウィンド・ジャマーといったアクセサリーも付属します。このウィンド・アイテムはフィールド・レコーディング時にはとても重要で、風のある野外では絶対に必要です。さらに、手持ちノイズの話もしなくてはなりません。レコーダーが小型化されるのはうれしいことですが、手で握るとどうしてもカサカサ音が入ってしまいます。これも録音開始前のモニター・チェックにおける大事な項目ですね。超尺の環境音を録音するときには、カメラ・スタンドに固定すると良いです。SR-Q2にはカメラ三脚用のねじ穴も装備されていますので活用しましょう。

本体底部のマイク・イン(ステレオ・ミニ)。その下には内蔵スピーカーとカメラ三脚用のねじ穴も付いている

本体底部のマイク・イン(ステレオ・ミニ)。その下には内蔵スピーカーとカメラ三脚用のねじ穴も付いている

 フィールド・レコーディングは、例えると狩りや釣りに似ていて、魅力に取りつかれたらハマる人も多いと思います。また、録音データはさまざまなシーンで活用も可能。私はシンセのレコーディングのために呼ばれた現場で、既に轟音ギターで埋まっていたサビを“盛り上げて”とリクエストされて、ジェットコースターの走行音を入れたことがありました。SR-Q2はフィールド・レコーディングに興味が湧いてきた方に、リーズナブルな価格とシンプルな操作性の2つのポイントでお薦めできる気がします。何事も経験……Let’s Do Record!

 

中山信彦
【Profile】シンセサイザー・プログラマー/アレンジャー/プロデューサー/マニピュレーター。宇多田ヒカル、椎名林檎などの作品を手掛けている。実験的音楽ユニット=電子海面やGeschninでも活動

 

SARAMONIC SR-Q2

オープン・プライス(市場予想価格:9,980円前後)

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SPECIFICATIONS ▪入力レベル:−45〜0dB ▪出力インピーダンス:2kΩ ▪録音方式:WAV(最高16ビット/96kHz) ▪AD/DA:24ビット/128倍オーバーサンプリング ▪信号処理:32ビット ▪電源:単3アルカリ乾電池×2、USBバス・パワー ▪記録媒体:microSDHC/SDXCカード ▪外形寸法:60mm(W)×30mm(H)×167mm(D) ▪重量:116g ▪付属品:USB Type-Cケーブル、ソフト・ケース、ウィンド・スクリーン(スポンジ)、ウィンド・ジャマー(ファー)

 

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