内蔵マイクは2つのポジションを選択可能
音の細部までしっかりと収録
DR-40Xはステレオ収録、内蔵マイクと外部入力合わせての4ch同時録音、そして4tr MTRとしても使えるモデルです。TASCAMのフラッグシップ・モデルDR-100MKIIIのような業務機的黒ベースのボディに、マイクを保護するワイアーもシルバーから黒に変更。マイク本体には赤いラインが入っていてどことなくカメラの高級レンズを思わせるデザインです。バック・ライトもオレンジから薄い水色になり、見やすくなりました。本体重量は213g(電池含まず)で、電池を入れて手に持つと重過ぎず軽過ぎず、しっかりした作りで安っぽさがありません。
電源を入れてみましょう。筆者はサブの収録機としてTASCAM DR-100使っています。そのため本体側面にボタンを探してしまいましたが、本体正面の停止ボタンが電源ボタンを兼ねています。ちゃんと電源アイコンのプリントがあるので、すぐに分かりました。SDカードを入れてフォーマットし、ヘッドフォンを本体に挿して、録音ボタンをオン。適当に室内の音などを録ってみました。これも筆者の癖で、本体横にモニター・レベルがあると勘違いしてインプット・レベル・ボタンを押してしまいましたが、画面に日本語で“内蔵マイクLVL”と表示されたので、すぐに間違いだと分かりました。操作に対する表示が分かりやすく、初心者の方も安心ですね。本体正面の十字に配置されているボタンの上下がモニター・レベル・ボタンです。
肝心の音質を検証するために近所の公園に行き、環境音を録ってみました。マイクが内向きに90°で配置されているX-Yポジションでは、センターに芯がありつつステレオ感もある音で録音できました。内蔵マイクの音質はとてもクリアで、あいまいなところは一切無いパキッとした音質。TASCAMらしいサウンドといった印象です。次にマイクの角度を外側に調整して、A-Bポジションにセッティング。
マイクを動かすと自動的に本体ディスプレイに“マイクの向きを変更します”と表示され、ENTERボタンを押すと収録されるチャンネル・アサインが反転します。この表示はとても親切です。L/Rが逆に録音されてしまう事故も防げます。A-Bポジションの音は、センターに芯が無いものの広がりがあるので、ミックス時の背景として使うような環境音の収録にもってこいかなと思いました。X-Yポジションは比較的マイクに近い音源がある場合に有効だと思います。この使い分けが一台で手軽にできるのがとても良いですね。気になる点としては、マイクが本体から露出しているため仕方が無いことではありますが、風の吹かれ音をかなり拾ってしまいます。別売りのウィンド・ジャマーが屋外での収録には必須ではないかと思います。
内蔵マイクのSN比は実用上十分といったところ。収録時のビット・デプスとサンプル・レートは最高24ビット/96kHzまで選択可能。96kHzを選択してモニターしていると、音の違いは明らか。非常に細かい部分まで録れ、ヘッドフォンをしていないかのような錯覚さえありました。
クリアで高品位なサウンド
内蔵リミッターが音割れを防止
DR-40XはオーディオI/Oの機能も付いています。WindowsではASIOドライバーをインストールする必要がありますが、MacとiOSはドライバー不要ですぐに認識しました。今回はiOSデバイスでの使用に着目しましょう。まず、iOSに対応したということは、イヤホン端子がなくなってしまったAPPLE iPhoneでもヘッドホンが使えます。試しにミュージック・アプリから音楽を聴いてみましたが、かなりクリアな音質でした。昨今盛り上がりを見せているポータブル・アンプとしても使えるということになります。そして、iPhoneやAPPLE iPadでの動画撮影時には、本体マイクや外部入力マイクを使った高音質な動画の収録が可能になります。
外部XLR入力も業務用機器と同程度の基準入力レベル+4dBuなので、コンソールからの入力をそのままライブ配信するということも手軽にできますね。ライブ配信となると音楽とMCの音量差が気になるところですが、内蔵リミッターに加えて自動レベル調整機能もあり(本体での録音時ももちろん使用可能)、大きな入力があった場合は適切なレベルまで下げてくれるので、音割れも防止してくれそうです。さらにリバーブを搭載しているので、ドライすぎて味気ない場合にも活用できます。
見た目は小型でプロ仕様機材的なデザインですが、ほかにもパンチ・イン機能やミキサー機能など、低価格レコーダーとは思えない気の利いた機能が詰め込まれています。パソコンの操作は苦手だけれど世界に向けて発信したいミュージシャンの方に特におすすめしたい機種です。
(サウンド&レコーディング・マガジン 2019年5月号より)