ステレオ/モノ/ブリッジの動作モード
ブリッジ出力で2,800W×2(4Ω)を実現
DCP4450は1Uサイズの4chパワー・アンプ。クラスDアンプを搭載していて、450W×4(8Ω)の出力はとても使いやすく一般的な用途では十分と言えます。高効率なパワー・サプライを使用しつつ、重量は11.1kgに抑えた設計です。小さくて軽量な同じDCPシリーズのDCP400やDCP800、DCP1100などの2chモデルと比べると、DCP4450の方が奥行きがあり、大きく重厚感のあるしっかりとした作りになっています。フロント・パネルにはチャンネルごとにボリューム・アッテネーターとLEDインジケーターが配置されて、使用状況が簡単に確認できます。
次にリア・パネルを確認してみましょう。出力はスピコン端子がch1〜4まで1つずつ付いています。モード切替スイッチはch1/2とch3/4の2chごとにあり、ステレオ/モノ/ブリッジに切り替え可能です。ブリッジ出力に設定すると、最大2,800W×2(4Ω)、1,600W×2(8Ω)のパワー・アンプに変身。巨大サブウーファーもドライブできそうです。また、入力はch1〜4までXLR端子が1つずつ付いています。XLRで接続する現場がほとんどでしょうから問題ありませんね。強制空冷ファンも3つ備わっていますが、アイドリング時の動作音はうるさく感じませんでした。
入力感度は、モード・スイッチと同じく2chごとに切り替えスイッチ(1Vrms/32dB/24dB)が付いています。接続機器に合わせて入力感度を変えられるのでとても便利です。
電源のケーブルは1.2mと十分な長さ。消費電力は343W(1/8Power、8Ω)となっています。ケーブルは本体に直接付いていて取り外しはできません。脱着可能なタイプだとケーブルが抜けたり、接触不良による動作不安定などが心配になるので、パワー・アンプの場合はこういった仕様の方が安心できますね。
さて、ここからは実際に音を出してみましょう。まずは倉庫でスペックや使用設定の方法などを確認。チェック後に持ち込む現場を想定して、普段使用している機材とも比べてみました。最初に、コンソールやスピーカーなどをセットアップしてピンク・ノイズを流してみます。他社製パワー・アンプとDCP4450をつなぎ替えてチェックしましたが、全く問題無く動作しました。続けて、マイクをつないで声も出してみます。入力感度を調整する必要がありますが、設定が決まればばっちり鳴ってくれました。特に気になるような音のピークは感じられず、とてもレンジが広く良い印象です。これで現場に持ち込んでの音のイメージができました。
素直な音でレンジ感も広い
中域の膨らみもしっかりと表現
倉庫でのチェックも終わりましたので、次は現場に持ち込んでフィールド・テストをします。会場は120人を収容できるコンクリート打ちっぱなしのイベント・スペースです。こちらでアコースティック4人編成のライブを行いました。残念ながら会場には常設のウェッジが無かったので、モニター・スピーカーを持ち込み、パワー・アンプにDCP4450を使用。本体裏のスピコン出力から直接接続してセットアップしました。4chアンプなので1台で4人分のモニター・スピーカーをドライブ可能です。消費電力も低いので、壁のコンセントから電源供給して安心して使用できました。
設置に関しては特に問題ありませんが、バック・パネルの切り替えスイッチが簡単に動いてしまうので注意が必要です。スライド・スイッチの頭が飛び出しているので、スピコンを差し込んだりすると手が当たって動いてしまいました。もう少しスイッチ頭が引っ込んでいて動きにくい構造に改良されるとより良くなるでしょう。
セッティングも終わったので、早速音を出してモニター・チェックをしてみます。今回の会場は一般的なライブ・ハウスとは違い、ステージ上や客席に吸音が無く、定在波も多い場所。残響がとても長く、調整に手間取るかなと心配していました。しかし、スピーカーからの出音はとても素直な音で、レンジ感も広くて好印象。低域が薄く感じたり、少し高域が持ち上がったようなクラスDアンプにありがちな音色ではありません。中域からの膨らみもしっかりと表現されていて聴きやすい音が出せました。また、パワー感もとても良いです。1Vrmsの入力感度で使用したところ、音圧感もすごくあり、モニターもよく聴こえて演奏しやすいとミュージシャンからも好評。動作も安定していて、問題無くライブを終えることができました。
現場で使用するパワー・アンプは、基本的なスペックが良くて素直な出音であれば使い勝手が良いと言えます。必要なスペックを満し、しかも価格も魅力的なDCP4450はお薦めできるモデルです。
(サウンド&レコーディング・マガジン 2019年5月号より)