鍵盤はアフタータッチに対応
パフォーマンス用機能も充実
NEKTAR TECHNOLOGYのWebサイトにOSやDAWなど制作環境に合わせた専用のドライバー/ソフトフェアが用意されています(筆者はSTEINBERG Cubaseを使用)。これらをインストール後、DAWで簡単な初期MIDI設定を行った上でPanorama T6を操作してみました。トランスポートに関するものは、Panorama T6から再生、停止はもちろん、メトロノームのオン/オフ、アンドゥまで6つのボタンとSHIFTボタンを併用することによって12の操作が可能。使用頻度の高いトランスポート機能は網羅しており、普段ならマウスやキーボードで行っていた操作もPanorama T6上のボタンで瞬時にできます。
鍵盤はアフタータッチにも対応。1つのキーの打鍵のみでコードを演奏できるコード機能をはじめ、鍵盤から指を離した状態でもノートが発音し続けるホールド機能などパフォーマンス用としても充実しています。また8つのパッドがあり、Pad Bankボタンでパッド1~8とパッド9~16を切り替えることにより合計16の設定が可能となっています。パッド・マップがあらかじめ用意されていますが、パッド・ラーン機能によってPanorama T6側でオリジナルの配置、変更を行い保存することも可能です。ビートとベースだけでなく、複数のノート(最大で6音まで)の和音登録も可能となっています。
そして注目したいのが8つのエンコーダー(ノブ)と9本のフェーダーです。エンコーダーはMixerモードではトラックのパンニング、Instrumentモードでは主にプラグインの操作に使用できます。フェーダーは、Mixerモードではその名の通りトラックのフェーダーになり、実際使ってみたところスカスカ感も無く、ある程度の重みで繊細な操作が可能な作りだと感じました。
特に関心したのは、ソフト・テイク・オーバー機能です。通常ミキサー・ボリュームを操作した場合、フェーダーの位置とソフトウェアのパラメーター値の違いにより設定値がジャンプしてしまいますが、ソフト・テイク・オーバー機能によりポジションとパラメーター値が一致するまで変更が適用されません。こういった誤操作はMIDIコントローラーを使用しているとありがちなトラブルなのでとても助かる機能だと思います。
それぞれフェーダーの下にはボタンが配置されており、フェーダー9のボタンを押しながら1~8のボタンを操作することで各トラックのソロ操作もできます。
AU/VST対応のプラグインNektarine
各パラメーターを自動マッピング
Panorama T6にはNEKTAR TECHNOLOGYが開発したAU/VST対応のプラグインNektarineが用意されています。Nektarineを介してAUまたはVST 2.4/3のインストゥルメントをコントロールすることが可能です。DAWでプラグインとしてNektarineを起動させ、Settingからコンピューターにインストールされているプラグインを検出/選択するれば事前にマッピングされた状態で即座に使用可能。主要なインストゥルメントに対応しており、設定することなくPanorama T6の各フェーダーにパラメーターが割り振られます。手動でのパラメーターの割り当てもドラッグ&ドロップで簡単に振り分けられ、ライブラリー管理としても便利。動作も軽快な上、パラメーターがPanorama T6のディスプレイに表示されるので抵抗無く使用できました。
私がPanorama T6を使用して特に使用頻度が高かったのが一番右のフェーダー9です。フェーダー9はInstrumentモードであってもDAW上で選択したトラックのボリューム操作ができます。制作する上で瞬時にトラック操作できる点が多用した理由の1つです。ボーカル・トラックのボリュームをオートメーションで再生しながらフェーダー9で書き込んでみたところ、とても滑らかに行えました。個人的には単体フィジカル・コントローラーの役目をPanorama T6だけで補えると思ってしまうほどです。特にアサインする手間も不要なので、スピード重視の制作では、操作したいトラックをDAW上で選択するのみです。
短期間使用しただけですがDAWとの互換性をはじめ機能面/操作性など、どこを取ってもPanorama T6は一歩先に進んでいます。DAW上の操作や制作スタイルが大きく変わっていくことを実感できました。
(サウンド&レコーディング・マガジン 2019年5月号より)