音響機器メーカーのSARAMONICが発売するコンパクトなオーディオI/O、SmartRig。同シリーズには接続方式や入出力数が異なるさまざまなモデルがラインナップされていますが、今回はLightning接続を採用した2イン/2アウトのiOSデバイス用オーディオI/O、SmartRig+ DIをレビューしていきます。
マイクとギター用のプリアンプを2ch備え
48Vファンタム電源の供給も可能
まず入出力から確認していきます。マイク&ギター入力を2系統(XLR/TRSフォーン・コンボ&モノラル・ミニ)装備し、出力はヘッドフォン端子(ステレオ・ミニ)を用意。ステレオ・ミニ端子の無いiOSデバイスとSmartRig+ DIを接続すると、必然的にSmartRig+ DIのヘッドフォン出力を使うことになります。XLR/TRSフォーン・コンボ端子は48Vファンタム電源の供給に対応しているので、コンデンサー・マイクを接続することも可能。録音時のビット/サンプリング・レートは24ビット/48kHzまで対応しています。
電源はペダル・エフェクトなどで使用する9Vの乾電池(別売り)から供給します。電池のふたはツメで止めるタイプなので、入れ替えが簡単です。プラスチックの筐体は130gで手の平に収まるサイズとなっており、電池を入れても重くありません。持ち運びにも適した設計だと言えます。
続いて操作子を見ていきましょう。本体のスイッチを左のON側にすると緑のLEDが点灯。右の48Vに設定するとファンタム電源が供給され、緑と赤のLEDがともる仕様です。入力端子の間に付いているスイッチでは、入力のモノラル/ステレオを切り替えることが可能。各チャンネルには、ゲインを調節する独立したノブが用意されています。さらにREC/PLAYスイッチで、ヘッドフォン端子から再生する音を選択可能です。REC側でSmartRig+ DIへの入力音、PLAY側にするとiOSデバイスからの音がモニターできます。
ボディと一体になっているLightningケーブルの長さはおよそ50cm。SmartRig+ DIとiOSデバイスを多少離して設置することもできます。底部には1/4インチのネジ穴が用意されているので、カメラ用アームやスタンドとの併用も可能。また、運搬時の傷を防げる専用ポーチも付属しています。
中域に密度があり前に張り出してくるマイクプリ
ヘッドフォンの音量はiOSデバイスで調節可能
それではSmartRig+ DIにマイクを接続して、使用感を確かめていきます。使用するのは筆者が普段からフィールド・レコーディングで使っているEARTHWORKS QTC40と、スロバキア製のマイク。どちらのマイクも48Vファンタム電源で動作し、チェック時はステレオで設置しました。SmartRig+ DIは各チャンネルで入力ゲインが独立しているため、ステレオ・マイキングの際には手動でL/Rのボリュームを合わせます。無段階のアナログ・ボリュームなので神経質にならず、ひずみに注意しながらざっくりと設定するとよいでしょう。
PADスイッチは付いていないので、入力が大きい場合はゲインで調節します。筆者の使用したマイクは入力値が大きかったため、ほんのわずかゲインを上げる程度で、十分な音量が得られました。録音レベルの監視はiOS側のサード・パーティ製アプリで行いましょう。
特筆すべきは簡単な操作方法。iOSデバイス(今回はAPPLE iPhone 11を使用)につないで電源をONにしたら、後はデバイス側でレコーディングを開始するだけです。煩わしい設定は一切ありません。執筆当時、日本語マニュアルは無かったのですが、問題無く扱えました。
普段使用しているレコーダーと同条件で録音し、音質を確かめていきます。マイクプリは中域にぐっと密度が寄っていて、前面に張り出してくる印象。ヘッドフォン出力は細かいニュアンスをモニタリングしたりミックスに使うというよりは、入力音に異常が無いかチェックするためのものと考えた方がよいでしょう。音量はREC/PLAYスイッチがRECの状態だとSmartRig+ DIに入力されたままの音量ですが、PLAY側だとiOSデバイスの音量調整が有効になるので、モニタリングしやすい音量に設定可能です。レコーディング中でもPLAY側にスイッチを入れる使い方をお勧めします。
iOS対応の音楽制作アプリが充実している昨今。簡単にレコーディングが行えるSmartRig+ Diと愛用のマイクと併用すれば、普段持ち歩いているiOSデバイスが高音質なレコーダーとして活躍しますよね。2系統の入力端子をフルに運用することによって、2人のセッションを別のマイクで録音することもできます。
また、映像制作にも一役買うポテンシャルを持った製品です。例えばちょっとした動画をSNSにアップしたいとき。筆者の場合、コンピューターで制作中の楽曲をSNSに動画でアップしたいときに、スピーカーからの音をiPhone 11の内蔵マイクで拾って録画すると、どうしても雰囲気が伝わらないと感じていました。DAWからの音をSmartRig+ DIでライン入力しつつiPhone純正のカメラ・アプリで映像を撮れば、高音質のムービーを即席で作成することもできます。
佐藤公俊
【Profile】電子音楽バンドMother Terecoのメンバー。ソロ名義ではミックス・エンジニアやDJとしての活動に加えて、パブリック・スペースやWebコンテンツのサウンド・デザインなども行っている。
SARAMONIC SmartRig+ DI
オープン・プライス
(市場予想価格:15,800円前後)
SPECIFICATIONS
▪周波数特性:20Hz~20kHz ▪サンプリング・レート:最高48kHz ▪SN比:78dB@1kHz、−30dBu ▪外形寸法:40(W)×40(H)×120(D)mm ▪重量:130g
REQUIREMENTS
▪対応機種:APPLE iPhone X、iPhone 8、iPhone 7 Plus、iPhone 6S Plus、iPhone 6S、iPhone 5C、iPad Mini 4、iPod Touch(第6世代)
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