RELAB LX480 レビュー:LEXICON 480Lをモデリングしたリバーブ・プラグインの最新バージョン

RELAB LX480 レビュー:LEXICON 480Lをモデリングしたリバーブ・プラグインの最新バージョン

 RELAB DEVELOPMENTは、究極のエミュレーション・プラグイン開発を目指すソフトウェア・ブランド。音楽制作者だけでなく、映画制作におけるサウンド・クリエイターやエンジニアからも支持されています。今回ご紹介するのは、そんな同社のリバーブ・プラグインLX480 Dual-Engine Reverbです。筆者は、初代版であるLX480 Completeと出会ったとき、“やっとこのデザインのLEXICON 480Lモデリング・プラグインが出た!”と喜んだのを覚えています。それ以来アップデートを繰り返し、現在はバージョン4に。この時、製品名がLX480 CompleteからLX480 Dual-Engine Reverb(以下LX480)へ変更されました。そして今年3月、満を持して国内代理店のディリゲントが取り扱いを開始したのです。

デュアル・エンジンのルーティング機能やアナログ出力時のレンダー・モードを再現

 まずはLX480のモデルとなった実機480Lについて、簡単に説明します。1986年に発売された480Lは、高品質なデジタル・リバーブ・プロセッサーとして、プロフェッショナルなレコーディング・スタジオやライブ・サウンドの現場で導入されました。それからというもの、音響空間を細かくコントロールできるためエンジニアやプロデューサーに長年愛用されています。480Lは2つの要素から構成されており、1つ目はラック・マウント可能な3Uサイズの本体。そして2つ目は専用リモート・コントローラーです。なお、このコントローラーにおけるパネル・デザインの大部分が、今回ご紹介するLX480の画面デザインに採用されています。

 また480Lは、2系統のエフェクト・エンジンを搭載している点が特徴。つまり、エフェクトを並列または連結できるように設計されているのです。これによって、リバーブの立体感や深みをより表現することが可能となります。このように480Lは、その高いパフォーマンスとサウンド・クオリティから伝説的なデジタル・リバーブの一つと言われているのです。

 それでは、本題のLX480を立ち上げてみましょう。画面中段左側にあるSETUPボタンを押すと、同上部にあるディスプレイがI/Oタブにスイッチ(メイン画像)。ここではMODE選択、入出力レベルの調整、ノイズのオン/オフが行えます。MODEはアナログ出力時のレンダー・モードによる音色の違いを再現しており、デフォルトはDIGITALですが、MAINにすると輪郭がぼやけて若干奥に引っ込む印象です。

 画面中段左側にあるE1ボタン/E2ボタンでは、これら2つのエンジンの切り替えが行え、CONFIGタブでは実機同様にルーティング設定が可能です。リバーブにディレイをフィードバックさせるなど、より複雑な響きを生成したい場合はCONFIGURATIONセクションの左から2つ目、CASCADEモードを使うとよいでしょう。

CONFIGタブではE1/E2エンジンのルーティングを設定可能。左から2つ目はCASCADEモードと呼ばれ、直列つなぎとなっている。同タブの下段にあるEMULATIONセクションでは、実機LEXICON 480Lに関連するアナログの特性を設定できる

CONFIGタブではE1/E2エンジンのルーティングを設定可能。左から2つ目はCASCADEモードと呼ばれ、直列つなぎとなっている。同タブの下段にあるEMULATIONセクションでは、実機LEXICON 480Lに関連するアナログの特性を設定できる

 CONFIGタブの最下段には、EMULATIONセクションがあります。ここでは実機のサウンドにより近づけるための設定が行え、18ビット仕様にしたり、サチュレーションを加えたり、リバーブの質感を変化させたりすることが可能です。

 次はMAPPINGタブ。ここでは画面下部に配置された6本のフェーダーに、さまざまなパラメーターの割り当てが行えます。最後のDISPLAYタブでは、プラグイン画面のサイズをSMALL/MEDIUMから選択可能です。

 画面中段に備わるHDW/ADVスイッチにも注目。通常はADV(アドバンスド)モードになっていますが、HDW(ハードウェア)モードにすると、より実機に近い画面デザインに切り替わります。LX480の操作に慣れているユーザーにとって、親しみやすいモードだと言えるでしょう。

HDWモードにしたときのLX480の画面。最上段にコネクターが出現し、ディスプレイは入出力メーターやE1/E2エンジンのアルゴリズムを表示する

HDWモードにしたときのLX480の画面。最上段にコネクターが出現し、ディスプレイは入出力メーターやE1/E2エンジンのアルゴリズムを表示する

世界的エンジニアによるシグネチャー・プリセットや往年のプリセットなど100種類以上を収録

 100種類以上収録されているというプリセットもチェック。“Jazz Hall”“Thin Plate”“Small Room”といった往年のプリセットはもちろん、世界的エンジニアのリチャード・フルチ氏やジョー・キャレル氏などが作成したシグネチャー・プリセットもあり、幅広い楽器や音楽ジャンルに対応可能です。ここではボーカル・リバーブの定番“A Plate”を選択。ノイズがないためクリアに聴こえます。実機を使ったことがある人にとっては、聴き覚えのある音でしょう。

 画面中段に備わるQUICKボタンを押すとディスプレイがQUICKページに切り替わり、リバーブのディケイ、プリディレイ、ハイカットなど一般的なパラメーターにすばやくアクセスできるのが素晴らしすぎます。メニューからはHALL、PLATE/ROOM、TWIN DELAYS、PANORAMAなど、計7種類のアルゴリズムが選べるので微調整も可能です。

 TIMEボタンでTIMEページを表示させると、リバーブ・タイムに関する詳細設定が行えます。より豊かな響きを追求するなら、低域のタイムを長めにするのがお勧めです。

 もしリバーブのアタック感が気になる場合は、SHAPEボタンを押してSHAPEページを確認。SHPをいじることで、残響成分の立ち上がりを制御可能です。この部分の変化具合は、実機のそれとよく似ていると感じました。

 LX480のリバーブは総じてその効果がはっきりと聴き取れ、クリアでリアルなリバーブとは異なる“演出された響き”が特徴です。高域の解像度はほかと比べると若干粗いものの、濃密な残響成分は心地よいの一言。“なんか温かい感じ”というような抽象的なリクエストを受けても、LX480ならサッとイメージする方向に導くことができるため、筆者は重宝しています。大手映画制作会社のスタジオに導入されているのもうなずけますね。LX480は、これからリバーブを学ぼうとする方にもお薦めです。廉価版のLX480 Essentials(16,500円)も発売されているので、まずはそちらを試すのもよいでしょう。また、同社はLEXICON 224XLやEMT 250といったリバーブにインスパイアを受けたリバーブ・プラグイン、Sonsig Rev-A(24,750円)も発売しています。興味のある方は、ぜひ試してみてください。

 

星野誠
【Profile】ビクタースタジオを経てフリーで活動するエンジニア。クラムボンの曲を多数手掛けたことで知られ、近年はsumika[camp session]、Cody・Lee(李)、MIMiNARIなどのアーティストに携わる。

 

RELAB DEVELOPMENT LX480 Dual-Engine Reverb

64,350円

RELAB DEVELOPMENT LX480 Dual-Engine Reverb

REQUIREMENTS
▪Mac:macOS 10.12以降(64ビットのみ)、INTEL/Apple Siliconプロセッサー、AAX/AU/VST/VST3対応のホスト・アプリケーション
▪Windows:Windows 10以降(64ビットのみ)、INTEL Core I5以上のプロセッサー、AAX/VST/VST3対応のホスト・アプリケーション
▪共通項目:2GB以上のRAM、iLokアカウント

製品情報

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