MOTU M6 レビュー:出力120dBのダイナミック・レンジを誇る6イン/4アウトのオーディオ・インターフェース

MOTU M6 レビュー:出力120dBのダイナミック・レンジを誇る6イン/4アウトのオーディオI/O

 MOTUのオーディオ・インターフェース、Mシリーズに新たにM6が仲間入り。これまでにリリースされたM2、M4も筆者は所有しているが、M6では6イン/4アウトとなり、さらにヘッドフォン・アウトが2系統に進化している。

スタンドアローンのミキサーとしても活用

 Mシリーズは、最高192kHzまでのサンプリング・レートに対応し、ハイエンド・モデルに採用されるESS製Sabre32 Ultra DACを搭載。メイン出力が120dBのダイナミック・レンジというスペックを、入手しやすい価格で実現しているオーディオ・インターフェース・シリーズだ。

 箱を開けて最初に驚いたのが、本体の重さ。M4が750gなのに対し、M6は975gと重量が増しており、頑丈なメタル筐体で手触りは同じなのにかなり高級感があるように思った。

筆者が所有するMOTU Mシリーズの数々。上からM2、M4、M6の順で並んでいる。M6は入力端子がすべてリア・パネル搭載となり、フロント・パネルのヘッドフォン出力が2系統となっている

筆者が所有するMOTU Mシリーズの数々。上からM2、M4、M6の順で並んでいる。M6は入力端子がすべてリア・パネル搭載となり、フロント・パネルのヘッドフォン出力が2系統となっている

 電源については、M2、M4がUSB-C接続のバス・パワー駆動のみだったのに対して、M6ではDC15Vの電源アダプターを採用。電源を独立させたのが功を奏しているのか、M2、M4と出音を聴き比べてみると、音の上下や奥行きにかなり余裕があるのを感じて驚いた。この価格帯でこの音が実現するというのは、ただただ脱帽する。もちろん、USB-Cのバス・パワーでも使用可能だが、音質は電源アダプターを接続した際の方が良いように感じられた。

 コンピューターとの接続には、先述の通りUSB-Cを採用。MacやiOSデバイスとはつなぐだけですぐに使用できるが、専用ドライバーをインストールすれば、96kHz/サンプル・バッファー32の場合で最速2.5ms以下という低レイテンシーでの動作に対応する。さらに、動画配信者などにうれしいループバック機能を使用可能。例えば、4人で別々のマイクで話したり、楽器を演奏したり、コンピューターから音楽を流したりといった素材を、中央の入力モニター・ミックス・ノブを使ってステレオのループバック・チャンネルに送れば、ライブ配信プラットフォームにてリアルタイムでストリーミングすることも簡単に行える。

 電源アダプターが採用されたM6では、コンピューターを介さずにスタンドアローンのミキサーとしても使用可能になった。ムービー・カメラ側へのステレオ送りや、シンセなどの楽器をまとめるミキサーとして活用するなど使い方はさまざまだが、メインとは別のサブミキサーとしても使えるのは、とっさのときに非常に便利ではないだろうか。

抜けが良く透明感のある録り音

 入出力を見ていこう。M4まではフロント・パネルに2系統あった入力端子は、M6ではすべてリア・パネルに。4系統のXLR/TRSフォーン・コンボ入力(それぞれに48Vファンタム・スイッチを搭載し、Hi-Z入力にも対応)と、2系統のライン入力(TRSフォーン)となっている。フロントのMONスイッチでチャンネルごとのダイレクト・モニタリングにも対応する。

リア・パネル。左からUSB-C端子、MIDI入出力、ライン出力L/R(TRSフォーン)、モニター出力L/R(TRSフォーン)、ライン入力×2(TRSフォーン)、マイク/ライン/ギター(Hi-Z)入力×4(XLR/TRSフォーン・コンボ)を備える。モニター出力、ライン出力はそれぞれA/B出力として振り分けられており、フロント・パネルのA/Bスイッチを使えば出力を瞬時に切り替えられる

リア・パネル。左からUSB-C端子、MIDI入出力、ライン出力L/R(TRSフォーン)、モニター出力L/R(TRSフォーン)、ライン入力×2(TRSフォーン)、マイク/ライン/ギター(Hi-Z)入力×4(XLR/TRSフォーン・コンボ)を備える。モニター出力、ライン出力はそれぞれA/B出力として振り分けられており、フロント・パネルのA/Bスイッチを使えば出力を瞬時に切り替えられる

 Mシリーズは、出力だけでなく内蔵マイクプリの音も良い。抜けが良く、透明感もある。入力換算雑音(EIN)が−129dBuもあるというのも、すぐにひずんでしまうような安っぽい感じが全然しないことにつながっている。ここでも電源アダプターの恩恵ゆえか、M2、M4以上に解像度の高さがあるサウンドを録音できた。

 出力は、M4と同じ4系統だが、通常の4ch出力以外にも、フロント・パネルに搭載されたA/Bモニター・スイッチで、2種類のスピーカー出力を切り替えて使用できるように。普段、2台のスピーカーを切り替えながら音を整えていくことが多いので、モニター・コントローラー的な機能を1台で賄えるのは非常に便利だ。

 2系統のヘッドフォン出力には、メイン出力とは別に、独立したESSコンバーターが搭載され、単体のヘッドフォン・アンプに匹敵する音質だ。音量も大きく、さまざまなヘッドフォンで聴いてみても、音量が足りないと思うことがなく、やはり余裕のある音に聴こえた。また、2系統のうち1系統には、ライン出力ch3/4へ送っている信号に切り替えることもできるので、例えば、片方は自分、もう片方はボーカリストへと、それぞれ違うミックスを送れるようになったのも新しい。

 すべての入出力信号を詳細に示すフルカラーLCDのレベル・メーターは視認性も良く、安心感がある。さらに、マスター・ボリューム・ノブのトルクが、M2、M4よりも重く、より滑らかで高級感が増したのは地味にうれしい。こういうちょっとした部分にMOTUのこだわりが感じ取れる。

 1系統のMIDI入出力を付けるのもMOTUは忘れない。この価格帯の機種だとMIDI入出力が付いていない場合もあるのだが、MIDIを大切にしてくれているところは、老舗のMOTUらしいところだと思う。

 付属ソフトは、MOTUのDAW、Digital Performerの簡易版Performer LiteやABLETON Live Lite、100種類以上の楽器音色を含むバーチャル・インストゥルメント、また、BIG FISH AUDIO、LUCIDSAMPLES、LOOPMASTERSのループ素材など多数。買ったその日に音楽制作を始められるので、初心者にとってもうれしいセットだ。

 M6は、MOTUブランドの高級機をそのままコンパクトにした印象で、本当に音が良く、高級機と比べてもほとんど違和感なく作業できるのがポイント。メイン機としてもサブ機としても、1台持っておくのをお勧めしたい。

 

山木隆一郎
【Profile】安室奈美恵や鈴木愛理、東方神起など数多くのアーティストのプロデュース、作曲、アレンジ、リミックスを手掛ける。クラブ/ダンス系を得意とし、近年はジャンルを超えた作品も多数制作。

 

MOTU M6

オープン・プライス

(市場予想価格:69,300円前後)

MOTU M6

SPECIFICATIONS
▪接続タイプ:USB-C(USB 2.0、USB-A互換) ▪サンプリング・レート:44.1/48/88.2/96/176.4/192kHz ▪ダイナミック・レンジ:115dB(マイク入力、ライン入力、ヘッドフォン出力)、120dB(ライン出力) ▪全高調波ひずみ率:−129dBu EIN(マイク入力)、−107dB(ライン入力)、−110dB(ライン出力、ヘッドフォン出力) ▪付属品:USB-C to Cケーブル、USB C to Aケーブル、電源アダプター ▪外形寸法:234(W)×45(H)×120(D)mm ▪重量:975g

REQUIREMENTS
▪Mac:macOS 10.11以降(10.13以降でドライバー使用可能)、INTEL Core I3以上のプロセッサー(APPLE M1を含む)、4GB以上のRAM(8GB以上を推奨)
▪Windows:Windows 10/11(64ビット)、1GHzのINTEL PentiumベースのPC互換またはそれ以上の環境、2GB以上のRAM(4GB以上を推奨)
▪iOS:iOS 9以降

製品情報

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