MAKEMUSIC Finale 27 レビュー:国際基準の音楽記号フォントSMuFLに準拠した楽譜作成ソフト最新版

MAKEMUSIC Finale 27 レビュー:国際基準の音楽記号フォントSMuFLに準拠した楽譜作成ソフト最新版

 音楽出版社やプロの制作現場で圧倒的なシェアを誇る楽譜制作ソフト、MAKEMUSIC Finaleが誕生して約32年になります。64ビットに対応したり、ReWire機能を搭載したり、AU/VSTプラグインや大容量の音源ライブラリーが使用可能となったりと、バージョン・アップを重ねるごとに進化。近年は楽譜制作だけにとどまらず、サウンド構築を含めた楽曲制作までもFinaleで行う音楽家も増えています。今回は最新版のFinale 27を紹介しましょう。

高品位の音源ライブラリーGarritan Instruments for Finaleが付属

 まずはFinale 27の主要機能から。起動すると“起動パネル”が現れるので、“新規ファイル作成→セットアップ・ウィザード”から楽器編成を決めるか、後述する譜面テンプレートから作業をスタートするかなど、目的に合った最適な方法を選ぶことができます。

 

 音符の入力には幾つか方法がありますが、最近はDAWで作成した楽曲のMIDIデータをFinale 27に読み込ませる使い方も増えてきました。ここで便利なのが、MIDIノートの長さのばらつきにより意図しない音符として採譜されたときの処理方法などを設定できる“クオンタイズ設定”や、小節ごとに違ったクオンタイズ設定が適用可能な“採譜の再実行”といった機能。部分的に異なるクオンタイズ設定を適用できるので、DAW側でグリッドにキッチリと合わせたMIDIデータを作る必要がありません。

 

 そのほかの音符入力方法ですが、音価を指定し1音ずつ打ち込む“ステップ入力”と、MIDIキーボードとコンピューターのキーボードを併用する“高速ステップ入力”、そしてMIDIキーボード/パッドを使用した“リアルタイム入力”があります。音価や休符の入力においてショート・カットキーを活用すれば、入力の修正作業もはかどるでしょう。

 

 音符入力時に助かるのが、楽器別演奏不可能音域のアラート機能。例えばDAWでストリングスを打ち込んでいると、気付かないうちに演奏不可能な音域にMIDIノートを入力してしまいがち。これを生のストリングスに差し替えることになり、そのまま譜面にして現場に持って行ったら大変です。Finale 27ではこういった場合に対処すべく、演奏不可能な音域に音符を入力すると、符頭をオレンジ色に変えて教えてくれます。

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選択楽器の演奏不可能音域に音符を入力した場合、符頭をオレンジ色に変えてアラートしてくれる。楽譜制作時におけるミス防止に役立つ機能

 Finale 27はプレイバック機能も充実。各楽器にはGARRITANの高品位な音源ライブラリー、Garritan Instruments for Finaleが自動で読み込まれます。もちろんアーティキュレーションを付けた音符では、その設定がしっかり適用されますし、サード・パーティ製のソフト音源やプラグイン・エフェクトも使用可能です。

ジャンル別の譜面テンプレートを100種類以上用意

 新機能も見ていきましょう。今回のバージョン・アップでは、国際基準の音楽記号フォントSMuFLに準拠する約3,000個もの音楽記号が追加されました(メイン画像の画面右下)。これにより、従来よりもはるかにエモーショナルな譜面を作成可能です。

 

 またSMuFL記号を取り入れた、ジャンル別譜面テンプレートを100種類以上も用意。前述した“起動パネル”より“Version 27用テンプレート集”をクリックすると、ダウンロード可能な特設サイトにアクセスできます。

 

 例えばクラシック系には室内楽、吹奏楽に加えてフレックス編成などがあり、さらにフレックス編成の中にはフレキシブル吹奏楽(楽器ごと)と、フレキシブル吹奏楽(移調楽器ごと)など細かく用意されています。

 

 また、管弦楽系の中には一般用のA4サイズとレコーディンング用A3サイズの譜面テンプレートがあり、用途や現場によってテンプレートを選択できるためとても助かります! ポピュラー系も豊富で、ジャズではトリオから17人編成ビッグバンドの譜面テンプレートが用意されていたりもします。

 

 あと便利そうだと感じたのが、ギター用TAB譜のテンプレート。弾き語りやギター・ソロ用のメロディ譜などがあり、作曲時のちょっとしたスケッチで使用できそうです。ちなみに三味線や琴、和太鼓の譜面テンプレートまでも用意されているのには驚きました。

 

 そのほかの新機能として、さまざまな楽譜データの記録/交換を目的とするファイル・フォーマットMusicXML 4.0に対応となり、これまで以上に多くの演奏情報をMusicXMLファイル形式でやり取り可能となります。

 

 ここまで駆け足で紹介してきましたが、譜面サイズの調整やDAWとの同期ができるReWire機能など、Finale 27でできることはまだたくさんあります。近年は一般の音楽愛好家や学生など、プロ以外の幅広い層にも利用されるようになって来たFinale 27。強力な編集機能と特殊な記譜法を使ったスコアも作成可能となっており、“Finaleで書けない楽譜は無い”とも言われています。

 

 DAWでの制作がスタンダードとなっている現代ですが、楽曲を譜面に置き換えてみると、新たなアイディアを思い付いたりするかもしれません。あらゆる制作の場面でFinale 27が手元にあると心強いことでしょう。

 

阿瀬さとし
【Profile】作曲家/マニピュレーター/ギタリスト。岸利至と酒井愁からなるユニットTWO TRIBESとCojokのコラボレーションによる最新EP『MeteM』がOTOTOYよりリリース中。

 

MAKEMUSIC Finale 27

オープン・プライス

(市場予想価格:55,000円前後/通常版、35,200円前後/アカデミック版、15,000円前後/バージョン・アップ版)

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REQUIREMENTS
▪Mac:macOS 10.14〜Big Sur 12.x、INTELベースのプロセッサー、Apple Silicon(M1)ではRosetta 2との併用により対応、CoreAudioまたはASIO対応のオーディオ・サポート
▪Windows:Windows 8/10(64ビットINTELまたはAMDプロセッサー専用、ASIO/DirectSound/WASAPI対応のオーディオ・サポート
▪共通項目:4GB以上のRAM、1GB以上のディスク空き容量(Garritan Instruments for Finale使用時はさらに8GB以上の空き容量が必要)、インターネット環境(ダウンロードやライセンス認証、ユーザー登録など)

製品情報